「勉める」そんな言葉は存在しなかった
「学校に行く、だと?」
「ああ」
神様は魔王を倒した男の願いが
そんなありふれたものだったことにただ言葉を失った。
「何故、それにしようと思った?」
「いや~、学校って行ったことないからな。
学生生活って一度やってみたかったんだよ」
その気になれば自分が全能の存在になれたかもしれない機会だったのに
彼はあっけらかんとそう言った。
「おお。おお、勇者よ!」
神様は勇者の両肩に手を置き感涙を流した。
「よくぞ言った。今まで窃盗、恐喝、不法侵入など。
数々の罪にもういっそ地獄に落としてやろうか、と考えた時期もあったが
まさか自分から改心するようになるとは。
私はただ、そなたの英断に胸を打たれるばかりだ」
「ちょっ!? 男が顔を押し付けんな。気持ち悪いんだよジジイ!」
「分かった!」
神様は右腕を点に大きくかがけた。
「そなたの願い、しかと聞き入れた!
では勇者よ、健やかに過ごすがよい」
「っと、ちょっと待て!」
「うむ? なんじゃ」
右手から零れる光が強まっていくところで勇者は呼びとめた。
「まだ設定を言ってねえよ」
「設定?」
神様は勇者の言葉に小首をかしげた。
「そうだ。まさか、いきなりどこかの学校へ転入させるつもりじゃねえだろうな。
俺がどういう学校に行きたいのかまだ言ってないし
それにこっちにだって色々準備が必要だろ」
勇者の言葉に一度は疑問に持ったが、一応の納得はできた。
「確かに一理ある。して、その設定とやらを言うがよい」
「まずは俺の体だ。年齢は18、いや17だな。
見た目は別にカッコ良くなくていい。中の上くらいで満足だ」
「見た目は必要なことなのか?」
「必要だろ? 女子ばかりの教室におっさんが一人だけって
絵面的に不味いだろ」
「ふむ。まぁ、落ち着きはできんか。学業に差支えがあってはいかんな」
「次に俺の能力だ」
「能力!?」
神様は学校とまったく縁のない言葉につい素っ頓狂な声をあげてしまった
「日常生活では使わないが何かあったとき困るからな。
いつもは平均並みの身体能力だけど
こっちの意思でチート能力が使えるようになれば十分だ」
「う……む。なるほど。そうじゃな、いざと言う時、学友を助けられる
ようになっておきたいうわけだな」
「で、学校だが行事がたくさんある方がいいな。その方が楽しい」
「うん。確かにその通りじゃ」
「ときどきハプニングがあってもいいな。俺のチート能力だけで
解決できるレベルなら多少グロくてもかまわない」
「ほう。そこで友情を深めるのじゃな。うむ。良いのではないか?
ともに脅威へ立ち向かい、乙女とのラブロマンス、男同士の熱い絆。
定番中の学園生活だな」
「は? 男とかいらねーし。つか、行くところ女子校だし」
「…………へ?」
女子校? 女子高とは女子が通う学校の事である。
しかし、勇者の性別はどう見ても男。どういうことだ?
まさか性転換を望んでいるのか?
「俺はそれなりに伝統のある女子校に通う初めての男子学生っていうポジションだ。
入学する理由はそうだな。男慣れしていない女たちに本物を見せてやる。
うん! それがいい。そうしよう!」
「…………」
「あ? どうした? 何で黙ってんだ?」
目をパチクリさせる神様は何かを確かめるように聞いてくる。
「そなた、学校とはどういう場所か知っておるか」
「はぁ? そんなもん」
呆れた勇者は大きく息を吸い込みありったけの声で叫んだ。
「女とイチャイチャするところに決まってんだろうが!!」




