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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン三つ目 波際の精霊編
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精霊のお話

【精霊】

1 万物の根源を成している、とされる不思議な気のこと、もしくは精気

2 動植物、無生物などに宿っている、とされる超自然的な存在

3 死亡等で肉体から解放された自由な霊

ゲーム、小説などのフィクションに用いられることが多く、

その最たるものとして地水火風を司る四体が挙げられる。


「――とまぁ、君らの辞書には載ってるだろうけど―ー」

「君『ら』って誰だ。『ら』って」

「根源を成しているだとか、難しく考えなくていい。

繁殖能力を持つ個体を『生き物』、

繁殖能力を持たない個体を精霊、いや『霊』。

たったこれだけの差だよ」

「へ~~ぇえ? そうなるとおかしくねえか?」

ラヴから受けた言葉を考えると、ある矛盾が浮かび上がった。

「繁殖しないのを霊って言うならよ。もうこの世に存在してねえんじゃねえか」

「いいところに気が付いた」

その疑問を待ってたと言わんばかりに得意げな顔で返す。

「生き物しか知らない君には、繁殖できない種を存続させるのは無理だと思ったんだろうけど、

問題はない。ボウリングのピンを思い浮かべてごらん。

1ターンごとに残ったものを全部失くして、新しい10本を立てる。

霊の在り方はそれと同じ。だからこの世(ゲーム)自体が無くならない限り、

絶滅はありえないんだよ。一定以上の個体数になることもないけど」

「その1ゲームってのはだいたいどれくらいだ?」

「20年。世代の交代に合わせたぐらいの間隔だからね」

「そうか。20年か。じゃあもしソフィアを俺の{ものにしても

長持ちしねえのか」

ユーシャは海の家でジュースを注文しているソフィアの成熟した肢体を見て残念に思った。

女性らしさの塊がぼんと強調されたわがままボディと

母性溢れるオーラが20年未満で構築されたことには嬉しい驚きを感じたが、

それを楽しむための時間がそう長くは残されてはいないことに気付いたからだ。

「およそ18年持つよ? 生後1年ちょいしか経ってないし」

「1歳!? え? 1歳であんなダイナマイトボディになるの!?

発育良すぎだな!」

「違う違う。成長してああなったんじゃない。

もとからああいう体なんだよ。

生まれるときの瘴気とか稀性とか色々あるけど、

分かりやすく言うならその場のノリでどんな体で生まれるかが変わるのさ」

「その場のノリって……

(そんないい加減もので作られた体に負けたあいつの立場って一体……)」

視線の先には友達と水の掛け合いをして楽しく遊んでいるシャルロットがいた。

かわいらしくフリルをあてがったビキニ

(いや? よく見りゃビミョーーにだけど前よりデカくなってるな。

決闘騒ぎの後に見た裸と比べて1カップぐらいデカい。

成長期だからか?……あっ!

……涙ぐましいな)


「あ゛ん?」

「ひっ」

突然、クラスメイトから殺意のこもった視線を向けられて

石油王の令嬢・兼定は小さい悲鳴を上げた。

「いやっ、ごめん。兼定(カネ)に向かってやったわけじゃなくて。

なぜか向こうの方からすごく失礼なことを言われた気がしたから」

「あっ、そうなの」

兼定はこの数カ月でこの友達が悪い意味で

大きく変わってしまった気がしていた。

「シャルちゃん。何か悩みがあったらいつでも言ってね。

私じゃ何も解決できないかもしれないけど、

誰かに話を聞いてもらうだけでも少し楽になるよ」

「ええ。そうね」

優しい友達になぜか励まされて照れた彼女は視線の先を少し落としてしまった。

「……」

かわいらしく腕で胸を抱えているせいで強調されるI字を見てぼそりと呟いた。

「言いたくなったら言うわ」

「ん? うん」


「怖っ。あいつ、まさか心読めてんじゃねえよな?」

高いはずの気温でぞくっとする寒さを感じて震えたユーシャに

戻ってきたソフィアがジュースを持ってきた。

「それにしてもこう直接見てもいまいち分かんねえな。

精霊と人間の差ってやつが」

会釈と一緒に手を伸ばした先のソフィアを見て思ったことを口にした。

手足も二本ずつある。目と耳が二つで鼻と口が一つずつ付いた顔が一つ。

何もかもが自分と同じ人間だ。

黒人と白人を見分ける方が百倍簡単に思える。

「分からない人の方が多いと思いますよ?」

「うん。精霊なんて人間と同じくらいいるし、

普通に街を歩いてるからね」

「マジか!」

「かなり高い知能を持った状態で生まれるから、

学校に通う必要はないし、学内で見かけることはないけど、

外じゃ当たり前のように近くを歩いてるからね。

ちょうどほら、あそこの岩場にも」

と、指差した方を見た。

そこは自分たちが遊ぶ浜辺から1キロほど離れていて

草の緑色がわずかに着いた崖だった。

その先に空色の長い髪をなびかせる城のワンピースを着た女性が一人、立っていた。

(結構な美人だな)

遠くて細かな部分までは分からないが、整った顔つきをしているように思った。

プロポーションもソフィアほどではないが出るとこが出て、引っ込むところが引っ込んだ

メリハリのある曲線を描いている。

耳にかかる髪を輪ゴムのようなものでくくる仕草をした彼女は

さらに崖の縁に近づいていく。

岩壁に激突する波の荒々しさが彼女に危うさを魅せる。

それはもう、今にも死んでしまうような危うさが。

「あ」

と、思った時には彼女は動いていた。

崖の縁にそろえた両足を支点に体全体が真っ直ぐのまま傾いた。

水平線と平行になると同時に両足が跳ね上がり体は180度、

頭が30メートル下の白いしぶきの山を向いた。

上半身からひねりが加わり、膝を抱えてすばやく二回転。

5秒にも満たない時間を華麗な絶技がユーシャにそれ以上の時間を感じさせた。

抱えた両手足をピンと伸ばして、着水の構え。そして、

バッチーン!

回転の速度を殺しきれず、最も抵抗を受けにくい姿勢から一転、

最も抵抗を受けやすい姿勢で着水した。

盛大なしぶきが上がるのを遠くのこちらからでも目視できた。

「あの高さからの着水を腹からもろにいったぞ」

「あれは痛いよ~。死んでないと良いんだけど」

「二人ともそんな悠長にしていないで、

早く助けに行きましょう!」

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