表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

第一説 仮面舞踏会

無間輪廻のゼロ、これまでのあらすじ

LIVING LEGEND:全ての因縁を終わらせる。

ORIGIN LEGEND:全ての因縁の始まり。

これは、三つ目の伝説。

 一通りの事を成し終えると、舞踏会が始まった。先代が各国との連携を図り、同盟国を大幅に増やすことが出来た。その同盟国との交流を、この舞踏会でするのだ。ただ仮面を付けているため、誰がどこの国の出身かどうかはわからない。レイビもまた、仮面をつけて会に出席する。


「レイビ〜準備できたぁ?」


 従者であるナハトは大声で彼を呼んだ。ナハトも十五であり、彼と親しい。あのリヒト・エニシの子孫である。


「とっくに終わっているよ……そう急かすなよ」


 彼は呆れていた。彼女は何かと引っ付いてくるのだ。紫の髪を掻きながら自室を出る。彼女は彼の姿を見て「わぁお」などと言いながら「私も可愛いでしょ」とくるりと一回転し、スカートの裾をつまみ、カーテシーをする。


「はぁ……お前は従者という立場を理解していないのか」


 カーテシー自体は従者が主人に対しする場合もあるが、彼女の場合、過剰だ。


「理解してるも〜ん。さ、仮面つけていきましょ」


「だが、会場に着いたら別行動だがな」


 踊ってくれないのか、と彼女は落ち込んだが仕方ないと切り替え会場に向かった。




 辿り着くと既に会は始まっており、皆それぞれ色んな行動を取っていた。レイビは馬鹿馬鹿しいと思いながらも父が重要だと言っているため、やらざるを得なくなっている。ちなみに父はあの巨躯のせいで一目でわかってしまうため、出ていない。魔王とは面倒なものだな、と彼は頭のどこかで考えていた。


「……特に踊るつもりもないしそこらへんの食べ物でも漁っていよう」


 豪華な食事が並んでいる。だが、彼は野菜だけ取りムシャムシャと食べていた。別に菜食主義ではない。緊張のためか胸がつっかえて重いものが食べられないのだ。


「虚しい……」


 十分くらい経ち、良い加減食べるのも飽きてきた頃だ。


 表情を伺うことは出来ないが、皆楽しそうに踊っているように見える。身分を関係なしにできるのもこの時くらいなものだ。当たり前のことかもしれない。


 ナハトの事が気になった。どこかで踊っているのだろうか。いざ一人で行動するとなると心寂しいものだ。こんな事になるくらいなら初めから彼女と踊れば良かったのかもな。などと思うものだから彼は割と寂しがり屋だ。


「帰りたい……」


 項垂れていると声を掛けられた。


「踊りませんか?」


 顔を上げるとそこには顔全てを覆っていた仮面があった。


「っっっ⁉︎」


 思わず驚き、硬直してしまう。


「あ、あの」


 声は優しめで柔らかい感じだ。髪も隠しているため全然予想できないが、声からして女である。それに良い匂いがする。この国のものではない。


「えっと……良いよ。ただ踊りは苦手なんだ」


「それなら、教えますから。さあ立って」


 流されるまま彼は彼女の手を取り踊り出した。慣れぬ動きに転けそうになるが上手く女性側がフォローする。格好が悪いなぁと今すぐ頭を掻き毟りたくなってしまった。それを堪え、どうにか踊り切った。




「疲れた……」


 妙に良い匂いがするものだから頭がクラクラする。


「楽しめました。ありがとう」


 そう言って彼女は去って行った。


「なんだか、悪いことしてしまった気がする」


 もう一度席に着くと溜息を付いた。するとナハトが口を曲げてやってきた。


「何、あの人」


「え? どうしたんだ」


「今の人よ! 馴れ馴れしいわね……何か裏があるに違いないわ」


 彼女は何故か怒っていた。彼に一気に近づき、残り香を嗅ぐ。


「この匂い……光の国にしかない花ね。一体何考えているのかしら」


「そんな怒らなくてもいいだろ」


「うっさい! 私を差し置いてあんな女と踊るなんてね! おかげできもいのと踊らされたわ!」


「悪かったな……俺も後悔してたんだ。お前と踊れば良かったって」


「そういう問題じゃない! ……っ、もういい」


 女性の考える事は良く分からない。彼女は駆け出し、会場から出て行った。


「おい! 待てよ!」


 彼もまた彼女を追った。




「なんで逃げるんだよ……そんなことしても無駄だろうが」


「来ないで……私の気を知らないでよくそんなことが言えるね」


「知るわけがないだろう。知ってどうする。どの道俺はお前に対しての接し方は変わらない」


「そう、あくまでもそういうことなのね」


「……」


 二人は沈黙した。重く、苦しい沈黙であった。その時間はいつもよりも長いものだった。


 謝ってもどうせ突き放される。それなら言葉ではなく行動で示せばいい。思いついた彼は彼女を抱き締めた。


「何……」


 面倒な女にはこれが有効的だ、なんて父から教えられたものだからこれを実行したまでだ。不器用なんだよ。と頭で話したが、実際に出た言葉はこれだった。


「なんでもない……」


「じゃあ離して。こんなことしても嬉しくない」


「ならどうすればいい」


「何もしなくて良いよ」


 いつまで経っても事は収まりそうではなかった。


 収めるにはきっかけが必要だ。何か衝撃的な事態が発生してそちらを優先せざるを得なくなるくらいの。それもこの程度のことが忘れるくらいの事態。若い彼には考えつかなかったが、都合良くそれは発現した。いや、起こるべくして起きた。人は最大限の負の意識を起こすと、あるモノが誕生する。


 そう、邪神である。


 突然彼女は真っ黒なモノに包まれる。咄嗟に彼は離れ、一体何が起きているのだと睨みつけた。黒いそれは形を成し、口を開ける。


「我、邪神成リ、我名無シ。我ハ有リ、我ハ無シ」


「なんだよ……こいつ……」


 ふらりと彼女は倒れ、「ナハト!」と彼は叫んだ。


「お前……ナハトに何したんだ……‼︎」


 眉間に皺を寄せ、とても十五歳とは見えない顔を見せた。


「故ハ汝ニ有リ。故ニ我有リ」


 邪神の言っていることを、彼は理解できなかった。


 邪神が近付くと、彼は身構えた。


「何するつもりだ……まさか、戦わないといけないのか」


 かつて初代が戦ったように。


「やってやるよ……やるしかねえんだろ!」


 服を破り捨て、天地の衣と剣を召喚する。衣は初代の時とはまた違った服装になっていた。使用者に合わせて変えるためだ。


 斯くして、天地の勇者は再び邪神との戦いに身を投じられたのであった。

予告

突如として俺の目の前に顕れた存在。奴は邪神とほざく。ナハトに一体何をした! そして何故俺と対峙する!

戸惑う俺は剣を不器用に扱う。その戦闘能力は低く、あっさりと敗れてしまう。そんな無様な俺の目の前に一人立っていた。


次回、第二説 光の勇者


お前は、お前らは一体何なんだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ