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エピローグ DARKNESS LEGEND

前回のあらすじ

全てを終わらせたレイビとリュテス。彼らは倒れてしまった。

 ライトが消え、一週間が過ぎた。二人は未だに眠っている。


「このまま、起きないことなんてないよね……」


 ナハトは心配そうにレイビの顔を見ている。カイトは彼女の肩に手を置き、大丈夫だって。あの王様なんだからよ、と励ました。


「でもなんで二人して玉座の前で倒れていたんだろう。本当ならあの発生源に倒れていそうなんだけど」


 地下に篭っていた彼らはライトがいたことを知らない。太陽の光がなくなっても、地下の温度は変わらなかったため、気付く暇すらなかったのだ。


「んなこと言われても俺もわかんねえ。疲れて帰ってきたら安心して倒れたんじゃないか?」


「だと良いんだけどね。それにしてもこれでしばらくは平和なんだよね? 肆大邪神は数百年間来なかったから次来るのも数百年だろうし、帝国軍も壊滅的だから次の数十年は大丈夫なはず……」


「さあ、わかんねえな。異常な嫉妬を起こすと邪神が発現するんだろ? そん時には王様がいねえとどうしようもできねえよ。俺はあの小さな邪神らを相手にしたが手に負えなかった。今じゃ光の勇者の守りの術も効果が切れてるから、俺でも即死レベルだ。だから早いところ目覚めてほしいものだが」


 カイトは悔しかった。自分が弱いことに。本当はレイビに頼らずとも自分だけで邪神を討伐したいと考えている。だが、それはできない。


「あれ、もしかして今俺嫉妬している……?」


 無念は嫉妬に変わっていた。一番気をつけていたことが起きる寸前だった。


「悪い、外いってくる」


 気を鎮めようと、外に出たが収まる気配はなかった。


「やばい、これがもしかして……邪神が生まれる瞬間……?」


 体が抑えきれない衝動に駆られ、壁に頭をぶつける。それだけでは冷静になれず、どんどん体は暑くなってくる。


「やめろ……今出てくるな……やめろォォォ‼︎」


 邪神は誰しもが抱えている。発露のタイミングは個人によって違うが、嫉妬が強くなれば必ず顕れる。それは天地の勇者も例外ではない。


 額を出血するほどに頭を打ち付けたカイトは倒れた。そして、邪神が顕現する。


「我、邪精神由生邪神。汝我仕我許請。然世界我手中。勇者亡者也」


 邪神はデグラストル上空に飛ぶと、宮殿を破壊するため、エネルギーを集中させた。


 その時である。レイビ、リュテスの二人は目を覚ました。敵意が、彼らを覚醒させたのだ。


「起きた!」


「リュテス」


「ああ、急ごう」


 安心したナハトをそっちのけで二人は外に走って行った。


「ちょ、どこに行くの⁉︎」


 ナハトも彼らの後を追う。


 外に出ると、二人は既に空に飛ぼうとしていた。


「やば、剣忘れてきちゃった」


「何、必要ないだろ。さっきまでの話し合いでどこまで強くなったのかわかっているし」


「そりゃそうか。じゃ、早速やろう」


 実は、二人が一週間も寝込んでいたのは疲労などではなかったのだ。彼らは同じ夢を見ていた。そして共有し、イメージトレーニングのようなことを一週間続けていたのだ。今後どうすることも、全て。




 時は遡り、一週間前。二人がベッドに運ばれたときだ。


「俺は……死んだのか? いや、ここは……夢の世界か。なんか、夢を認識してるって変な感じだな」


 真っ白な何もない世界。ふわふわとして、地面がない。彼は奇妙な気分になった。そこにリュテスも現れる。


「リュテス、お前は夢の世界の住民だよな? 俺が写しているもう一人の君」


「それはこちらの台詞のつもりなんだが……もしかして、私たちは今同じ夢を見ているのかな? ともかく、二人きりで話し合いができるね。これからどうするか、決めようよ」


「ああ、光の国をどうするのかが気になる。リュテスはどうしたいんだ?」


「うん、それは最初から考えてたけど私が王になる。ライトとして名乗ってね。それで国を豊かにする。まだ何にも具体的な事は決まってないけど……でもどうにかなりそうな未来は見えてるよ」


「そうか……光の国のことはあっさりと終わってしまったが、俺と君の関係はどうなるんだ。合体をして、光闇の勇者になった。これは断ち切ろうにも断ち切れないものだ。もし光の国に帰るのであれば、あまり会う機会もなくなってしまう……折角、分かり合えたというのに」


「淋しいの?」


「そりゃ、そうだろ。……俺は失いすぎたんだ。リュテスとは離れたくはない」


「可愛いやつだな〜」


 彼女は彼の髪をわしゃわしゃと撫でる。


「う、うるさい……」


「じゃ、どうするの? 私を光の国に返さないってことで良いのかしら」


「それは、そのだな。何も帰るなとは言ってないんだ。でもできれば時々は会いたいものだから。俺たちは二人で一つなんだからさ」


「ふ〜ん、それで?」


 彼女はずっと次の言葉を待っていた。


「ここまで言わせるか」


「言わないと帰っちゃうよ?」


 完全に彼は手玉に取られていた。


「あーもう! わかった! 俺と結婚してくれ!」


「はい、喜んで」


 実際に言われると少しはにかんでしまったリュテスだったが、ここは真面目に返した。


「良いのか?」


「勿論。というか、私の未来に外れはないからね。ライトを倒して私の未来予知は大幅に成長した。それで見えた未来は私の子ども。子孫。二十八代目デグラストルがね」


「そ、そうなのか」


「彼が全部片付けてくれるからそのための未来に進むために私は貴方と結婚します……ていうのは嘘。それじゃまるで愛がないからね。君に対する愛があるといえば、それもまた嘘になるけどね……これから育んでいけたらいいかな」


「俺は多分好きだからこう言った。特定の人に対して思うと胸が苦しいとか、そういうのは愛なんだろ? だったらそういうことになる。……あ、今提案が思いついた」


「何? 良案?」


「デグラストルは基本的に十五歳で王冠を被る事になる。だから俺の子どもが十五になれば俺は王ではなくなり、ある程度は自由になる。そこで俺は光の国に行ってリュテスと暮らすよ」


「なるほど、そう来たか。でも十五年は耐えないといけないよ?」


「十五年くらい問題ない。九年共に君と生きられるなら俺は幸せだ」


 十五年後は三十六歳なので寿命は残り九年になる。これはあくまで一年で子どもができるという計算であり、本当はもっと短い。


「なら、ひとまず結婚して子どもを作って私は光の国とデグラストルと行き来しつつ、貴方を待つことになるわけね。良いわ、それで行こうじゃないの」


「まあ、隙を見たら転移術でいくらでも会えるしな」


「面白いわね。これでこれからのことは決まったけど、他になんか今この場所でやれそうなことはない? どうせなんだし」


「それならあの光闇の勇者を自由自在になれるようにしてみないか? 光の宝玉を使わずに」


「それは良いね。戦いはひとまず終わったとはいえ、小さな邪神は顕れるかもしれない。悪事を働く者もいるかもしれないからね。それじゃ早速やりましょうか」


「しかしどうやったら成れるのかは思いつかない」


「詠唱で決めるのよ。まず、私の部分は『我、守護たる光の存在。汝を認め』、だよ。で、次言うことを復唱して。『我、進撃せし闇の存在。汝を我とせん』、はいどうぞ」


「我、進撃せし闇の存在。汝を我とせん。これでいいのか?」


「うん、じゃ次は成れるように施すね」


 リュテスは魔法陣を描いていた。円を描いて、少しだけ模様を足したシンプルなものだった。


「貴方のおかげで苦労せずに済むわ。詠唱不要って本当に便利ね。まあ、今回はやらなきゃいけないんだけど。それじゃ、これでできるようになったから練習しようか」


ーー


 そう、二人はこの光闇の勇者を操るための修行を一週間かけていたのだ。そして今、再び現実世界へと戻る。


「行くぞリュテス! 光闇の勇者だ!」


「イメージ通りに行くわよ」


 彼女は魔法陣を描き、詠唱を始める。


「我、守護たる光の存在。汝を認め」


「我、進撃せし闇の存在。汝を我とせん」


 光と闇を渦巻いた風が彼らを纏い、一つの姿へと変貌させる。


「「今ここに降臨! 世界を引導する光闇の勇者‼︎」」


 風を引き裂き、レイビを基調とした光闇の勇者が降臨した。


 その光景を目の当たりにしたナハトは仰天して白目を向いて仰向けに倒れた。


「「こんな雑魚邪神なんて一撃だぜ‼︎」」


 この邪神は五年前、そして修行が終わった後に戦った邪神とほぼ同格であるが、今の彼らにとってはもはや雑魚同然だった。


「「技なんか使う必要もねえ!」」


 右手に光を、左手に闇を付け、指を組み、ゆっくりと引き離すとこれらが混ざった球ができる。その球を放つと、邪神はそれに吸い込まれ、消え去った。


 自らの意思で合体を解除すると、レイビは腕を伸ばしながらこう言った。


「この姿になる必要もなかったかもな」


 ニヒヒと笑いながら彼は言ったが、リュテスは溜息混じりに話した。


「いや、油断大敵だ。それに全力で倒したからこその達成感もある」


「ああ、そうか。なるほどな」


 こうして、事件は解決し、カイトは頭を包帯で巻かれ、寝かされ、ナハトもそのまま眠ったままなので、二人の立ち位置が逆転してしまったのである。


「やれやれ、困った奴らだ。ナハトに至っては俺たちが結婚するってことを知ったらまた卒倒しそうだしな」


「仕方ないさ。人間同士が合体することは普通はあり得んのだからな」


 その後、どちらも起きたのは半日程度だった。夕食後のことだ。


「合体ってどういうことなの⁉︎ 結婚⁉︎」


 彼は夢の中での話をナハトらに一気に話すと、混乱していた。


「ああ、俺たちは結婚することにした。これでデグラストルと光の国の問題は解決する」


「……そっか。うん、わかった。おめでとう、レイビ」


 踏ん切りがついたナハトは、祝福した。五年前からずっと彼女は手の届かないと諦めかけていて、そして今完全にさっぱりと諦めたのだった。


「なあ、王様。俺は結局認められたのか?」


 カイトは邪神を出してしまったことを後ろめたく思っていた。


「俺がいないときに国を守ったのはお前だ。命懸けでナハトも守った。だから認めるさ。後はナハトの意思次第だ。好きにしたら良い」


「本当か⁉︎」


 彼は思わずガッツポーズを取っていた。そのままナハトにプロポーズしたのは言うまでもない。この時は拒絶されたものの、レイビらが結婚した数ヶ月後、承諾した。




 年月はあっという間に過ぎ去った。平和すぎる世界は、時間の感覚を忘れさせたのだ。今、あれから二十四年が過ぎた。娘のレイナは既に子持ちであった。レイビは光の国に隠居し、静かに息を引き取ろうとしていた。


「デグラストルの未来は明るいな。孫も既に五歳だ。あと十年すれば後を継いでくれる。それが見れないのは少し悔しいがな。だが、後十八代守れば、リュテスの言った通り俺たち一族は報われるのだろう?」


 ほとんど力が入らない状態の彼は、リュテスの膝元で寝込んでいた。

「ええ……何としても守り抜いて見せるわ。そしてその時を見届けてみせる。貴方の、デグラストルの意志は私が引き継ぐから」


「安心した……これで、眠れる」


「おやすみなさい、レイビ。私の中で眠っていて」


「おやすみ……」


 そのまま彼は二度と起き上がることはなかった。


 彼女は一人寂しく、光闇の勇者になるための詠唱を始めた。


「……我、守護たる光の存在。汝を認め」


 当たり前のことだが、帰ってくる言葉はない。だから、彼女は自分で続けた。


「我、進撃せし闇の存在。汝を我とせん」


 レイビの体は彼女に吸収されていった。そして、レインの時代の時と全く同じ姿となり、彼女はライトとして名を改め、デグラストルを密かに見守っていた。


 それは二百年以上も続いた。全てを知っているリュテス、もといライトはレインに情報を小出ししていき、彼の最期の直前に全てを話した。


 だが、まだレインに至るまでには足りない物語が存在する。伝説は、語られるだけではない。表には存在しない、もう一つの伝説がある。


DARKNESS LEGEND 完


VAGRANT LEGEND 続

これにてDARKNESS LEGEND本編はおしまいです。番外編がありますが、これはかなり先になるのではないでしょうかね。まだ前作の番外編も投稿できていませんし、ひとまず次の投稿はVAGRANT LEGENDのプロローグになります。

今作はバトルよりも話をメインとしました。この作品が前作、次作よりも一作目に続く話として一番重要ですから、それを焦点に当ててます。

次作は今作より更に短い予定です。これは年内には終わるはずです。その時に前作、今作の番外編を投稿します。

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