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第十五説 光の支配者ライト

前回のあらすじ

レイビ、リュテスは合体した。二人は困惑したものの、すぐに力を使いこなし、阿軍隊を圧倒し、殺した。姿が元に戻った時、レイビはリュテスからライトを殺して欲しいと言われる。

「ライトを殺す……? お前が、か」


 リュテスから手伝ってほしいことを告げられたレイビは、おかしすぎるその内容に背筋が凍った。


「そうだよ。答えに辿り着いたんだ。光の国をこの先どうすれば良いのかを」


「それで、殺すというのか」


「ええ、何度も言わせないで。勘違いしないでほしいのは何も闇に染まったからだとか、そういうことじゃない。ライトは……、あの女は光の象徴のように見えるが、本当は光を利用した悪だ。罪なき民を陥れ、光が全て、闇は滅ぼさねばならないと言い、少しでも異端者を見つけたら抹殺をしていた」


「……だが、それで殺せばライトと同じ位置に立ってしまうぞ」


「何言ってるの? もう、私は、いや、私だけじゃない貴方も、もう既に人を沢山殺めてしまっている。そういう理屈だったら、ライトと同じ位置にいるのはずっと前からよ。でも、さっきも言ったとおり死んでしまった人への善行を積むのであれば、ライトを殺さないといけない。これ以上犠牲を出すわけにはいかない。殺す対象が人になるだけで、やることは邪神を殺すことと何ら変わりはないわ」


 彼は迷った。何度も自分の命を狙い、沢山の人を傷付けたライトを許すわけにはいかない。だからといって、ライトを殺せば今度は自分に火の粉が降りかかる。そう考えると、決断できなかった。


「……もっと決定的な理由がない限り、俺はリュテスに協力できないよ」


「綺麗事でも考えてたかしら。まあ貴方の考えを尊重するわ。けどね、私の見える未来では貴方は必ず協力してくれる。決定的な理由が欲しいなら教えてあげるわ」


「なんだ」


「ライトは裏で」


 レイビはこの時、嫌な予感がした。この理由を聞いた時、もしかしたら自分は自分でいられなくなるかもしれない。そう思っていた。


「帝国と手を組んでたわ。二十年前のあの時もそうだと聞いた。帝国と手を組むということは後ろ盾には邪神がいるのよ。つまり最初から仕組まれていたのよこれは」


「……嘘、だろ?」


 二十年前、母を失ったのは帝国との戦争があったせいだ。その手を引いていたのはライトだったということになる。


「いいえ、ずっと黙っていたけど本当のことよ。もし私が思考停止していなければきっと惨事は防げていたかもしれない。力がないせいで、私が確信を持てなかったせいで……ごめんなさい」


「リュテスが謝ることはないだろ……まだ二歳なんだろその時は。そうか、良く分かったよ。全部あの女の掌の上で踊らされていたというわけか。まさか、ライトは邪神ではないだろうな?」


 邪神は例えば光線のように、光属性の魔術も使うのでライトも邪神ではないかと勘繰った。


「それは……わからない。でも、話した通り、ライトは悪なのよ。光、闇以前の問題としてね」


「俺が優柔不断だったらまだ決まらなかっただろうな。でも違う。今ので俺は私怨を持った。奴を殺そう」


「共に最期まで悪と戦おう。勇者の務めとしてもな」


「なら今すぐにでも行こう。勘付かれる前にな」


 体力が回復した彼は動こうとした。しかし、彼女が静止した。


「いや、もう気付かれたみたい。ちょっと待ってて」


「ん? ああ、わかった」


 彼女は離れて、詠唱を始めた。


「我の行く先を、汝の行く先にならん。追い求めるは幸、追わずは災。我求むるは汝。……展開せよ、スペルズフィーズ」


 世界地図が現れ、そこに赤い点がある。


「ライトの居場所はここ」


「! デグラストル宮殿⁉︎」


「不味い、直接手を下しに来たようね……卑劣な女だ」


「急ごう、手を掴め」


「わかった!」


 彼女が彼の手を握ると、彼は時空間転移術で真っ先にデグラストル宮殿の前に飛んだ。


 事態は大きくなっていなかった。皆地下に避難しているため、宮殿には誰もいないのだ。そこの玉座に一人、ライトが足を組んで座っていた。


「ライト‼︎」


「来たか、この裏切り者め……私に気付かれないとでも思ったか?」


「わかっていたさ。あんたは私の支配者なのだからな」


「そうだ、私は支配者。貴様ら虫けらのな」


「虫けらはお前だ」


 レイビが前に出た。


「下賤め。そこは俺の席だ。頭が高いぞ」


「ほぅ……どの口が言うか。我が最大にして一生に一度しか使えぬこの究極奥義を持って跪くがいい! 全ての光よ! 善よ! 我が体に宿り、世界を支配せよ‼︎ 暗黒世界(ダークネス・ワールド)‼︎‼︎」


 ぐわん、と空間が歪み、世界中の光を根こそぎ奪い、ライトの体に吸収されていく。光の勇者であるリュテスもまた効果の対象範囲内であり、彼女の体から光が奪われる。この光は気力でもあり、それが空っぽになると彼女は倒れた。


「リュテス! 貴様ァ‼︎」


 世界から光が奪われたということは、世界が暗闇に包まれる。太陽すらも奪い取っている。つまり、一気に温度が下がって来たのだ。


「これで私は光そのものとなった。闇の攻撃は一切通じない。お前のその剣も、打撃も、何もかも全てが無意味だ! 私に敵うものはいなくなった! これこそ支配者! 邪神すら凌ぐ圧倒的な力! 我が真名ライト・ルーラー・ワールドに相応しい!」


「……」


 あまりの寒さに身体が震え出す。だが、彼は立っていた。


「話す気力すらなくなったか。当然だ。この寒さならばな」


「クッ……ククッ」


 震えていたのは寒さのせいではなかった。彼は笑っているのだ。


「何が可笑しい」


「何、滑稽だと思ってな‼︎ 全ての光を奪っただと‼︎ 支配者になったただと‼︎ どこがだ? ここに光はある……希望の光がな‼︎」


 レイビは光の宝玉を取り出し、見せつける。


「そ、それは光の宝玉⁉︎ 馬鹿な、どうやって出現させた! 闇である貴様にどうやって‼︎」


 ライトは光の宝玉を手に入れたことまでは予測できてなかったようだった。


「彼女が俺を認めた時だ。……確かに、俺一人ではお前に勝てないかもな。俺には闇の力しかない。でもな、戦うのは俺だけじゃない。共に最期まで戦うと約束してくれた奴がいる!」


「まさか、馬鹿な……やめろ!」


「立ち上がれ、リュテス!」


 光の宝玉を嵌め、リュテスを立ち上がらせた。


「見せてやる……俺達は二人で一つだということをな」


 光の宝玉が輝き出し、二人を合体させた。


「合体した……だと……」


「「我が名、光闇の勇者。世界を支配するものを裁くため、ここに降臨」」


「って光闇の勇者ってなんだよ!」


 心の中でレイビが叫ぶ。リュテスは戸惑いながら答えた。


「だ、だって名前決めないと締まらないじゃん!」


「まあ、悪くはないからこれで良いか。ていうか、今度の体はお前主体なんだな。さっきやったときは俺の体に近かったが」


「その時によって変わるのかもね。邪神に対しては貴方の方が敵意は上だったから貴方が主体になっていた。今度は私の方が敵意だから私が主体になっている、ということかしらね」


「なるほどな」


 この時の光闇の勇者は、後のレインの時代のライトとそっくりである。


「だが、そんなものは見掛け倒しだ! 我に抵抗するのであれば、始末してくれる!」


「「その言葉、そのまま返してもらうよ! 紛い物の光に私達は負けない! 全ての光よ! 闇よ! 本来あるべき姿に戻り、世界を希望の未来へと引導せよ! 正義世界(ライトニング・ワールド)‼︎」」


 剣を高く上げ、掲げると世界中に光が降り注いだ。ライトから光が抜け、哀れな姿へと変貌させる。


「「貴方は光人族と語った。だけど、実際は名も無き邪神だったとはね」」


 化けの皮が剥がれたライトは邪神だった。


「ばかな……こんな事が……ふざけるなぁ‼︎」


「「巫山戯ているのは貴様だ。私を洗脳し、レイビを殺すよう命じ、帝国を嗾け、俺の母上を殺した‼︎ 貴様を、生かしておくわけにはいかない‼︎」


「クッ……こうなっては仕方ない……その剣は返して貰おうか‼︎」


 ライトは手を伸ばすと光闇の勇者からエクスカリバーを奪い取った。


「「何⁉︎」」


「私は邪神だが、光の邪神だ。この剣は我の一部」


「「……だったらどうした‼︎ もうその剣は私のものだ‼︎」」


 勇者は天地光闇の宝玉を嵌めた。そして地面に刺し、詠唱を始める。


「「天地を揺るがす悪を貫く光と闇の交差。宇宙現れし時、闇を認識する我、光とならん! 天地光闇(ダークネス)勧善懲悪(レジェンド)‼︎」


 天地の剣から一本の蔓のようなものが生え、エクスカリバーに絡み付いた。


「何をするつもりだ‼︎」


「「改造するのさ‼︎ 真の主に仕えよエクスカリバー‼︎」」


 まるで衣が剥がれたように外面がボロボロと崩れ落ち、光り輝き出す。


「な、に」


「「来い!」」


 引っ張るとエクスカリバーは勇者の手に収まる。


「何故……何故だぁぁぁぁ‼︎ 我を選べエクスカリバー‼︎ 奴を殺さなければならんのだ‼︎ 世を支配するためにはお前の力が必要なのだ‼︎」


「「ふん、剣の声も聞けぬ愚かな邪神よ。消えゆくが良い。これからが本当のDARKNESSLEGENDだ。喰らうが良い‼︎」


 天地の剣が闇に染まり、これで二つの剣は光と闇となった。


 勇者は走り、邪神ライトの元へ近付く。そして両方で斬りつけ、ライトは黒い血を流す。不完全な邪神であるライトは概念ではなく人に近い。


「グギャァァァアアアッッ‼︎」


 神速状態になった勇者は、わずか十分の一秒でライトを木っ端微塵に斬った。


「「これで、俺たちの戦いは、終わったんだな…………」」


 光の宝玉を外し、合体を解除すると、二人は連戦の疲れで倒れ込んだ。

次回予告


宴。昔、俺は嫌いだったが、やりきった今となっては嫌いじゃない。父上にも報告しよう。俺のために生きてくれた魔界の皆にも。リュテス、俺はお前のおかげで立ち直れた。俺に何かできるものはないのだろうか。……わかった。ちょっと待っていてくれ。


次回、DARKNESS LEGEND エピローグ DARKNESS LEGEND


デグラストルの未来はきっと明るいはずだ。

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