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第十四説 俺達は二人で一つ

前回のあらすじ

肆大邪神が一柱、阿軍隊(アーミー)が顕現した。阿軍隊は地球を破壊しようと数多の邪神を召喚し、地上に送りつけた。そこで、謎の少年が現れ、その危機を回避することに成功。しかし、これで終わるはずもなく、今度は大量の隕石を降らす。二人はこれらを破壊したが、リュテスは負傷してしまう。巨大隕石を破壊したレイビだったが、更なる絶望的状況にどうにもできなかった。二人は力を合わせ、最終決戦に再び挑む。

 遥か昔。原初の天地人が生きていた時代。この時、地球は星喰らいの二つ名を持つウロボロス・インフィニティーという隕石が地球を襲って来た。その時、天地人は七つの天地の勇者を召喚し、これを撃破した。隕石の正体は邪神であり、名は阿日徒羅流(アストラル)。地球が救われた際に暦が誕生した。それがエストラル。アは否定を意味し、エは肯定を意味する。地球の存在が確立された事を意味する暦であった。


 そして、今、再び地球は同じような状況にある。七人の勇者はいない。いるのはレイグランビ・ダグラス・デグラストルというちっぽけな勇者ただ一人。




「さあやれるものならやってみるが良い‼︎ そして絶望せよ‼︎ 絶望せし時、我の力は最大限となる‼︎」


「俺に力を……!」


 力が欲しいと願った時、究極神龍、四つの宝玉が輝き出す。


「これを使えと言うのか」


 宝玉を剣に嵌めた瞬間、彼の体は金縛りを受けたかのように固まった。そして小刻みに震え、汗が飛び散り、苦しそうになる。


「な、なんだよ……これ……体が言うことをき、効かない……痛い……苦しい……」


 隕石はもう眼前だ。急がなければ間に合わない。


「グゥゥゥ! 動け、動けよ! まさか、俺自身の力が足りないから宝玉を扱いきれないっていうのか!」


「終わりだな」


「足りないのは俺自身の力。己を高めるためには……」


 答えに辿り着いた。


「零の宝玉。だが、使えるというのか? あれはいつもガムシャラになって使っていた。今、あり得ない程に冷静だ。いや、やるしかない……! 来い、零の宝玉‼︎」


 空間が歪み、零の宝玉が現れた。


「来た! 全ての力を解放し、限界を超えろォ!」


 宝玉を砕くと、より一層鎧が強固になっていく。それに加えて体全体が軽くなり、自在に動けるようになった。


「見せてやる……俺と先代勇者の力……‼︎」


 隕石に向かって彼は突撃した。


「気でも狂ったか勇者‼︎」


「いいや、見ているが良い! 究極神龍・天地斬・零‼︎」


 剣と体、隕石に対して垂直になり、その姿はまるで大きな剣となった。そして直撃。破壊、破壊、破壊。ただひたすら破壊し、前に進む。その通り道に究極神龍の紋章を宿し、入口には天、出口には地の紋章を宿した。


「俺達の力を受けて砕け散れ‼︎」


 最後に隕石全体に斬の紋章が刻まれていき、最後には爆発することなく消滅した。


「馬鹿な……あれは阿日徒羅流様を模した隕石のはず……七つの勇者が揃っていないというのに何故‼︎ 貴様一人で破壊できるというのだ!」


「成る程な、なら、ただの模造品に過ぎないってことさ。アストラルが何なのかは俺にはわからないが、偽物ごときに俺は負けないってことだ」


「ふざ、けるなぁ‼︎」


 彼を阿軍隊(アーミー)は掴んだ。疲労で動けなかった彼は簡単に捕まってしまった。


「クッ……それほどの自信作だったか? 焦りが見えるぞ。邪神は概念ではないのか?」


「黙れ黙れ黙れェェェ‼︎」


 彼を地上に投げ飛ばした。地面を抉りながら激突する。


「ガァ……‼︎」


「ただ地球を破壊するだけでは物足りなくなった‼︎ 我が名、阿軍隊の本当の意味を見せてやる!」


 大量の邪神、隕石を召喚した。地球の周りはこれらに囲まれてしまった。


「行け、軍隊よ! 全てを破壊し尽くし、全てを否定せよ!」


 再び、地球に破壊の危機が訪れた。



 運良く、リュテスの側に落下したレイビは回復した彼女によって引っ張り出されていた。


「大丈夫?」


「……多分な。生きている限り問題はない……だが、神格化は解除されてしまった。そしてこの疲労だ……もう使えないだろう」


「絶体絶命だね。また最初の状況に戻ってしまった。いや、向こうのが圧倒的に有利だ。どうすれば良いんだ」


「わからない……悔しいが、もう何もできない。俺達だけじゃ……」


「私は諦めない。光の勇者だから。レイビ、貴方も諦めないで。天地の勇者であるならば如何なる状況でも屈するわけにはいかないって貴方が言ったはずよ! だから諦めないで!」


「リュテス……。ああ……そうだな。だが、一人では決して無理だ。俺達二人の力を合わせなければ」


「力を合わせる……そうか、レイビ、手を繋いで」


「何をするつもりだ」


 彼女は彼の手を取り、指を絡めて握る。


「これで力の出し合いができるはずよ」


「お、おい。この繋ぎ方って」


「気にしてる場合じゃないわ。さあ、剣を取って」


「あ、ああ」


 二人は剣を取った。レイビは左利きなので丁度左と右で持っていることになる。二つの剣を交え、構えた。


「行くよ……今ある全ての力を込めて!」


 空に向かって、迫り来る全ての邪神、隕石に向かって光線を照射した。光と闇が混じった光線は、次々に壊して行く。


「やればできるものだな……!」


「私達だからこそ、ね。今はっきりとわかったわ。光と闇、その二つはいつも同時にいないといけないって」


「やっとわかったか。にしても、リュテスといると俺は胸が熱くなってドキドキする。これは何なんだ」


「私も、君とこうしていると体が熱くなるよ。共鳴というものかしら」


 すると、二つの体は光と闇に包まれ、一つの体になっていた。


「な、何だこれ⁉︎」


「……私達合体しちゃったんじゃ」


「どういう……ことだ……」


「で、でもこれならさっきの技が使い放題なはずよ。力が溢れてくるからね」


 後にこの姿の事をリュテスは光闇(こうあん)の勇者と呼ぶ。


 姿が完全に分かると、次に新たな宝玉が現れた。


「光の宝玉……宝玉は、勇者を認めた時に現れるもの……成る程な」


「さあ、残りを片付けて阿軍隊を倒しましょう。決着をつけるわよ」


「次こそ終わらせよう。この星を守るために」


 宝玉を手に取り、天に向かって飛んだ。




 残っていた邪神達を破壊し、再び阿軍隊の前に立つと、阿軍隊は怒り狂う。


「「もう、あんな小細工は無駄だよ。一対一で勝負だ」」


 二人の声が重なり、二重音声になっている。


「汝二一⁉︎ 阿巫山戯! 我必滅‼︎」


「「神格化解いたからもう何言ってるか分からねえよ。五月蝿いから、さっさと消えろ!」」


 阿軍隊は空から雷の形をした剣を取り、振ってきた。


「「無駄だ、その大振りの威力は半端ないかもしれねぇ。だけど、それは当たらないよ!」」


 光速で避け、阿軍隊の剣の影から飛び出す。


「「壊れろ! 光闇火水咆哮熱線(ライトアンドダークネスフレア)‼︎」」


 光、闇、火、水、四つの宝玉を剣に嵌めて阿軍隊の剣を一刀両断した。


「阿有得‼︎ 阿有得‼︎‼︎ 我汝押⁉︎」


「「全ての光よ! 闇よ! 究めに極めし我に宿り新たな世界へ引導せよ!」」


 宝玉を究極光闇に入れ替えた。そして、エクスカリバーも手にし、交差させる。


「「究極光闇(シャイニング)天地開放(ダークネス)‼︎」」


 二つの剣から混沌とした色の光線が放たれ、阿軍隊を貫く。


「何故、我、汝、滅……我不滅‼︎ 阿滅‼︎ 終末是‼︎」


 阿軍隊は膨張し始めた。爆発でもするつもりなのか。もし爆発すれば人類は滅びる。


「「まだだ‼︎ 勝手に爆発しようと思うな‼︎」」


 剣を光らせたまま、ひたすらに切って行く。風船が破裂したときに萎むように、阿軍隊も萎んでいく。


「「奴より速く‼︎ 光よりも速く‼︎ 神の如きその速さで敵を穿て‼︎」」


 遂に神速に到達した。凄まじい速さだ。時間そのものを切り裂いているのではないのか。そう、疑いたくなるほどにまで。


「阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿‼︎‼︎‼︎」


 小さくなっていった阿軍隊は最終的に、人並みとなって消えていった。




「……終わったか。で、これどうやって解くんだ? ずっとこの姿のままなのか?」


「そんなこと言われても分からないよ〜必死過ぎて途中から私の意識途切れそうだったし」


「「とにかく言えることは戦いは終わったってことだね」」


「この二重の声どうにかならんのか」


「それもわからあああん‼︎ あ、もしかして光の宝玉外してみるとか」


「いや、つけてもつけなくてもこの状態だっただろ」


「物は試しよ」


 光の宝玉を天地の剣から外すと、彼女の目論見通り、合体は解除された。


「なるほど、戦う意思がない状態でこうすればいいわけか」


「つ、疲れた……」


「こんなの人生で一度も体験することないしね。それにしても辛い戦いだったわ……犠牲者はかなり多そうだし」


「……そうか、防ぎきれなかったか」


「私は、死んでいってしまった人達の分も生きるよ。それが唯一できる罪滅ぼしだと思っているから」


「だが、俺はあと二十五年も生きられない」


「なら、その分だけ善行を積むのよ。きっとそれで良いと思うよ。自己満足かもしれないけどね」


「そういうことなら、そういうことにしておこう」


「そう、じゃ、早速だけど私のために行動してほしいんだけど」


「何だ?」


 改まって何を言い出すのか、首を傾げて不思議がる彼は、彼女の口から発せられた言葉に凍り付く。


「ライト様……いいえ、ライトを殺すのを手伝って」

次回予告

リュテスから告げられた言葉はライトを殺すことだった。彼女は血迷ってしまったのか? 仮にも自分の国の王なんだぞ? 俺は断ろうとするが、彼女は何故この決断をしたのかを語り出す。


次回、DARKNESS LEGEND 十五話 光の支配者ライト


人の命を何だと思っている‼︎

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