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[Undecimo episode] 晴雨の竜――ツェレキス――

               ✝0✝


 空に暗雲が立ち込めていた。

 

 今にも雨が降りそうな空に向かって、彼女はため息をこぼした。明日は雨になるだろうと、彼女は顔をしかめながら思った。


 雨は降ってほしくない。

 

 それでも、じきに梅雨はやってくる。


「……梅雨を遅らせる方法は、ないの……じゃないと……ダメなのに」


 彼女は顔を俯かせて、一人の友人を思い浮かべながら呟いた。洞窟の中で、ひっそりと陰鬱に暮らす、友人の姿を。


 彼女のそばに、その友人はいなかった。雨が嫌いなので外に出たくないらしい。雨が降っていなかったとしても、外には出ないが。だから陰鬱だと言われるのに、他人の話にはあまり興味がないらしく、いつまでも暗い洞窟の中にいるのだ。


 ふっと微笑んで、彼女は再び空を仰いだ。


 分厚い雲が、徐々に重さを増しているような気がした。


              ✝1✝


 暗い教会で、巫女装束の少女は天井を見上げていた。そこに何があるわけでもなかったが、何か考えているかのように、彼女は天井を見上げていた。


 見目潤わしい少女だった。巫女装束に、短いスカートを着ている。スカートの後ろ側は少しめくれ、そこから猫のような尻尾が生えていた。絹繊維のように細い金色の髪をした頭には、狐の耳が立っていた。へそが見えるほど大きく開かれた胸元には、白銀の十字架が輝いている。


 否。それはもう十字架とは呼べないほどに劣化してしまっていた。


 片側が欠け、いうなればト字架といったところだろうか。


 静かな教会に、彼女の息遣いだけが聞こえた。彼女以外にもう一人住人がいたが、彼は教会の奥の部屋でホットケーキを焼いていた。もうじき焼けるころだろうか。


「ミカ、できたよ」


 思っていた通り、奥の部屋から青年がホットケーキを乗せた皿を片手に載せて出てきた。彼は奇妙な恰好をしていた。


 顔の右上以外を覆った狐面をつけており、唯一見える右目は赤黒い。背は高いが、ローブをひこずり、端々がボロボロになってしまっていた。彼は傍から見ると、『不審者』に見えた。


 彼はアツアツのホットケーキを長椅子の上に置いた。教会内に、ほんのり甘い香りが漂った。それにつられるように、少女が彼に近づいて手を伸ばす。


少女は車イスだったので、青年は彼女を車いすから下した。長椅子に座らせると、彼もその隣に腰掛ける。


ホットケーキにナイフを入れながら、彼は少女に訊ねた。


「さっき、何考えていたんだ? ぼーっとして」


「ん……いや、もうじき梅雨じゃけん、嫌じゃな思うただけじゃ」


 少女が梅雨嫌いだったことは初耳だったので、青年は驚いた表情を向けた。彼の態度に、少女はいらだたしげに睨み付けた。


「なんじゃ。梅雨が嫌いで悪いんか?」


「いや、別にそうじゃないけど……お前なら、雨が降って『わーい! 雨だ水たまりだ!』 って言ってそうだったから」


「私は子どもか!?」


 少女は彼の脇腹を思いっきり殴った。しかし、彼女にあまり力がないせいで、青年は平然としていた。


 見た目は子どもなのにな、と青年は思った。


 切り分けたホットケーキを少女に渡すと、彼女は幸せそうな笑顔でほおばった。彼女の笑顔を優しげに見つめると、青年もほおばった。ブルーベリーのジャムが、ホットケーキにしみこんでおいしい。


「――梅雨ってな」


 少女は思い出したように話し始めた。


「竜が管理しとるんじゃ。一匹の竜。その竜は、陰鬱で洞窟に隠れているような引きこもり体質なんじゃ」


「なんでそれを今?」


「……梅雨が来るとき、絶対にあいつは迷惑をかける。梅雨が嫌なんか知らんけど、誰かに迷惑をかけるのは決定しとる。今年も誰か一人はおるんじゃろうな、あいつに迷惑をかけられるやつが」


「本当にいるのか? 梅雨って気象の関係だろ。竜が関わっているとは思えないけどな」


「絶対に来るけん。むしろ、来なかったら梅雨が来んっていうことになるんじゃ!」


「そこまで言い切るか……」


 少女は頷き、


「うん。だってあいつだもん。根暗で陰険な引きこもりのヒモなんじゃもん!!」


 青年は呆れてため息を吐いた。彼女がなぜそう言い切るのかは分からなかったが、もし本当のことならば、きっと面倒なことになる。彼女がそこまで言うのだから、間違いない。


 その時、ぎぃと教会の扉が開かれた。


「あのぉ、少し、いいですらぁ?」


 教会に入ってきた少女は、笑顔で言った。


 少女は青年を見て「な? 言った通りじゃろ」といった風にドヤ顔を決めた。青年は、静かに少女の瞳から涙をふき取った。






「私はユネーヴァ・ヴェル・シスと言いますらぁ」


 丁寧に、少女は頭を下げた。青い縦向きのラインが入った法衣服を着ており、茶色の髪を頭の横で結んでいた。平均的な上背で、顔には張り付いたような微笑を浮かべている。目が悪いのだろう。眼鏡をかけていた。


まるで太陽のようだ、と青年は思った。ユネーヴァを見ていると、隣に座った少女が彼の腕の皮をつねって引っ張った。力のない彼女といえども、さすがにそれは痛い。


「俺はウァレ・フォール・エルタニル。こっちの変な奴がエミルカ・トゥバン」


「誰が変な奴じゃ!?」


 エミルカは悲痛交じりに叫んだが、彼女の恰好は実際、変だった。しかしそれはウァレにも言えることだったので、ユネーヴァはどっちもどっちだと思っていた。


「どっちもどっちですね。どちらも変ですらぁ」


 思っているどころか、それを口に出した。エミルカは一瞬イラッとしたような視線をユネーヴァに向けた。


「……で、私たちに何か用?」


 不機嫌なことを隠すことなく、エミルカは言った。ユネーヴァは彼女の機嫌に気づいていない風に、明るい笑顔さえ浮かべて言った。


「はい。ここに来れば、あの子のこと……い、いえ。私のことを何とかしてくれると思ったんですらぁ。あなたは竜と人間の願いを叶えてくれるんですよね!? な、なら――」


「私たちは神じゃない。願いなんて叶えれんし、叶えるのは当事者じゃ。私たちはそれを手助けするだけ」


「それでもいいですらぁ。私にかかった、竜の【呪い】さえどうにかしてもらえれば……」


「竜の【呪い】?」


 竜は、自分を守るための【呪い】を持っている。ユネーヴァがもし呪われているのだとすれば、彼女は竜に何かしたことになる。


 しかし、エミルカはこめかみに指をあてると、納得したように頷いた。ユネーヴァを呪った竜に、心当たりがあるようだ。


「……分かった。どうせ、またツェレキスのせいじゃろ」


「ツェレキス……?」


「梅雨を管理しとる竜じゃ。と言っても、雨雲を操っとるわけじゃない。梅雨を、誰かにいたずらされんように守っとる竜じゃ」


 エミルカはその竜のことを説明すると、ユネーヴァに視線を投げかけた。


「……あんたはツェレキスに呪われとるんじゃろ? 何があったか知らんけど、あいつはいっつもこの時期、一人は呪うんじゃ……もう、仕事増やして……」


 エミルカが愚痴りだしたのを、ウァレは遠巻きに見た。よほどその竜――ツェレキスが嫌いな様子である。


「ところで、あなたはそのツェレキスにどんな【呪い】を受けているんです?」


「そ、それは……」


 ユネーヴァは一瞬言葉につまり、一度咳払いをすると、淡々と話し始めた。


「私は、『梅雨が来ると竜になる』らしいですらぁ」


「……え」


 驚いたように声を漏らしたのは、エミルカだった。どうした? とウァレは訊ねてみたが、彼女は何でもないと首を振るだけだった。


彼女の様子がおかしいと思いつつも、ウァレはその【呪い】について考えた。


「……雨に触れるのがダメなら、屋内にいればいいだけなんじゃない?」


「それではダメなんですらぁ……」


 かっくりとうなだれたユネーヴァは、椅子の背もたれに額をつけた。その時、ウァレは彼女のうなじあたりに、黒いあざのようなものを見つけた。


「雨に触れてはダメなわけじゃないですらぁ。ただ、梅雨が明日の朝、日が昇るまでに来なければいいんですらぁ。この【呪い】は、梅雨の雨が降ればその時点で私は竜になっちゃうんですらぁ。だから、何としてでも梅雨を来させなければいけないんですらぁ」


「絶対に明日、梅雨が来るっていう確信はないのに?」


 ウァレの質問に、ユネーヴァは首を振った。


「いえ。確信してますらぁ。私、これでも占星術師なので、天気の予報くらいはできますよん。明日梅雨が来るのは確定事項ですらぁ」


 ユネーヴァの確信を持った物言いに、ウァレはため息を吐いた。彼女が占星術師で、明日梅雨が来ることを予報した……確率は不明でも、少なくとも嘘はついていない。


 ウァレはふと、エミルカに視線を向けた。梅雨が明日来ないようにする……そんなことが、果たして可能なのだろうか。


天気を操る竜ならあったことがあるが、梅雨というものは、天候がどうとか、そういうことではないような気がする。


 エミルカは腕を組んで何やら考えていた様子だったが、やがて諦めたように目を閉じると、


「……分かった。じゃあ、今すぐツェレキスのところへ行こう」


 エミルカは何か確信したように、言った。


              ✝2✝


「この……引きこもり陰険陰鬱ヒモドラゴン!!」


「エミリー、酷いによん……ぐすっ」


「誰がエミリーじゃ!」


 エミルカは、目の前の体長二メートルほどの竜を見上げて叫んだ。


全身青色の鱗で覆われた、美しい竜だ。瞳の色も青で、頭には短い角が生えていた。長く突き出た顎からは、白く太いひげが二本伸びている。


 その竜こそ、ユネーヴァを呪ったツェレキスだ。彼女は引きこもり体質で、洞窟の奥で眠っていた。


「なあ、ツェレキス……私はあんたに仕事増やすなって言ったじゃろうが……」


「あ、あれぇ? なななななんのことかにやん? ぼくわかんな――ひぃ!? ごめんなさいごめんなさい! 悪気はなかったというか、勝手になったというか……あぅ! いや、こ、こここれはいいわけじゃなくてね、つ、つまりは……えっと……」


 体格が三倍ほど違うのに、ツェレキスはエミルカに怯えっぱなしだった。よほどエミルカに迷惑をかけたらしい。


 エミルカは彼女の様子に、あきれた眼差しを送っていた。


「――もうええわ。どうせ、過ぎたことじゃしな」


「あはぁ! じゃ、じゃあ許してくれ――」


「はあ? なに()うとるんじゃ? 許すわけなかろうが」


 その時、ツェレキスの顔が絶望にゆがんだ。


 そんな彼女に、エミルカは嫌な笑みを浮かべた。


「じゃけぇ、ちょっとは手伝(てつどお)って。今年の梅雨は、どこにあるんじゃ?」


「ひぇえ……いくらなんでも、それを教えるとわたしが怒られ――いえ、何でもないによん。怒られるくらいどうってことないですによん。わたしは誰かの怒りをしかと受け止めますよおん」


 エミルカの剣幕に恐れをなして、ツェレキスは大人しく梅雨の在処を教えた。エミルカは難しい表情をした。彼女は一人で出かけることが出来ないので、ここらの地形には弱い。


 ウァレはエミルカの代わりに頷くと、彼女の車イスのブレーキを外して、外で待っていたユネーヴァと合流すべく歩き始めた。


「あ、そうそう」


 ふと、ウァレは足を止めた。エミルカが彼の袖を引っ張って止めさせたのだ。エミルカは振り返らず、ツェレキスに訊ねた。


「あんた、ユネーヴァってやつ知っとるか?」


「ユネーヴァ? 知ってるも何も、わたしの唯一無二の絶対的な最後の友人だりよん。と、いうかエミリーが知ってたことに驚いているわたしがいるによん」


「そ……分かった」


 頷くとエミルカはウァレの袖から手を離した。ウァレはそのまま振り返らず、洞窟から出ていった。


「……にしても、なんでエミルカが【呪い】のこと知ってたんだりよん?」


 一人きりになった洞窟で、ツェレキスはそう呟いた。しかし、深く考えることはせずに、洞窟の地面に引っ付くように眠り始めた。






 夜の森は恐ろしい。


 ウァレたちの住む教会の外は、森で覆われている。そのため、夜は暗くて恐ろしい。こんな時間に出かけなければならなくなったのは、きっとツェレキスのせいだ。


 ツェレキスは教会から離れたところの洞窟で眠っていた。そのため、翌日の朝日が昇るまで、そう時間はない。空も雲行きが怪しくなっていた。


「こ、これでしょうからぁ……?」


 ふと立ち止まったユネーヴァは、目の前で大きく口を開けた洞窟を見上げた。ツェレキスが言っていた『梅雨の在処』。ただ、普段の感覚からすると、ここに梅雨があるといわれても実感がわかない。


 しかし、止まっているわけにもいかないのも事実。ウァレはエミルカの車イスを押して中に入った。


 中は横に広く、縦に狭い。頭をぶつけそうになるほど低い位置に、天井から鍾乳石が垂れ下がっていた。つららのように尖ったそれは、とても危険だった。


 頭上に注意しながら進むと、やがて広い場所にたどり着いた。


 周囲を見渡すと、そこらじゅうに赤い文字が書いてあった。なんと書いてあるのかは分からないが、それらはすべて、梅雨を封じるための【呪い】らしい。


 天井には穴が開いており、そこから黒く積もった雲が見えた。今にでも雨が降りそうな空だった。


 早くしなければ、じきに雨が降るだろう――そう感じて、ウァレは広くなった洞窟の中央に視線を向けた。そこに一つのツボが置かれていた。


 エミルカはウァレのローブの袖を引っ張った。進め、ということらしい。


 ウァレはそのいかにも怪しいツボに近づいた。エミルカはそのツボをじっくり眺めて、やがてつぶやく。


「これが、『梅雨』じゃ。この中に、梅雨になるような【呪い】が封じられとる」


「えっと……つまり、このツボを壊せば【呪い】がなくなるのか?」


 ウァレの台詞に、エミルカは耳をぴょこんと立たせた。蔑むような瞳でウァレに振り返ると、


「何言うとるんじゃ、このバカ。壊したら、【呪い】が外に漏れるじゃろうが」


「それもそうだな」


 ウァレは納得したように頷いて、エミルカの頭をなでた。エミルカは不機嫌そうに顔を真っ赤にすると、ウァレの手をはじいた。尻尾は嬉しそうだったのに。


「あ、あの……つまり、どうすればいいですらぁ?」


 緩慢に近づいてきながら、ユネーヴァはエミルカに訊ねる。エミルカは髪を手櫛で整えると、むぅと呻いた。


「うーん……ここから持って行ったら、ええんかな。このツボは、『【呪い】を封じる【呪い】』がかかっとるはずじゃけん、ここから持っていけばええんじゃろうな」


「そこらじゅうにいかにも怪しい文字が書いてあるのは?」


「それは、このツボの【呪い】を一定の時期だけ解放するもんじゃけ、大丈夫じゃ。どちらにせよ、持っていくしかないんじゃ。ウァレ、任せた」


 エミルカは車イスなので、ウァレは彼女の代わりにツボを持ち上げようとした。が、思った以上にツボは重く、びくともしなかった。それもそうだろう。このツボの中には、役一か月分の雨雲が入っているのだから。

 

ウァレが必死にツボを動かそうとする後ろで、エミルカたちは彼を応援していた。いつの間にか、彼女たちはツボを動かしたときになにか起きても大丈夫なように、安全圏へ逃げていた。


「――ぐぅっ……あ、ちょっと動いたかも」


「がんばれ、ウァレ――ッ!」


 エミルカの声援を受けて、ウァレはさらに力を入れた。


 だが――


――ぴきっ


「……はあっ!?」


「? どーしたんじゃ、ウァレ?」


 焦るウァレを遠巻きに見ていたエミルカは、訝る視線を彼に投げかけた。ウァレは額に冷や汗を流しながら、ツボの全体を触ってみた。


 幽かに感じる、亀裂の感触……床とツボの接着部から上に向かって、それが入っていた。


 その亀裂から漏れる水が、床に水たまりを作り出す。それが、アセトンのごとくスピードで揮発し、雲を形成する。


――そう。雨雲が漏れ出したのだ。


「っ!? ま、まずい――ッ!」


「ウァレ! 下がれ!!」


 エミルカが叫びをあげたときだった。


――ズオンッ!


「うおっ……!?」


 洞窟中を這う文字が一層力強く輝いたのち、壁が崩れ落ちた。ある程度予想できていたが、ツボを無理に動かそうとするとツボが割れ、【呪い】の込められた文字が犯人を襲うようだった。


「壁に書かれた文字は……このツボの防犯装置ってことかっ!」


 ウァレは崩れ落ちてきた岩を何とかよけながら、そこから抜け出そうとした。エミルカの近くまで行くと、彼女の車イスを押して走り始めた。


「わぁ……すごい光景ですらぁ!」


「いいから逃げてッ! 今は逃げてッ!!」


 呑気に、崩れ落ちる岩を見ていたユネーヴァを諭すと、彼女も走り出した。


 暗い洞窟の中では走りにくかったが、それでも光の見えるところまでやってきた。少し安心しながら、ウァレたちは洞窟から抜け出そうと、必死に走った。


 しかし。


「ウァレッ! とまれ――ッッ!」


「うおっ!?」


 車イスにブレーキをかけたエミルカ。ウァレはつんのめりながらも踏みとどまった。彼の後ろで、ユネーヴァも不思議そうな顔をして立ち止まった。


 ウァレは視線を出口へもっていった。すると、天井から岩が崩れ落ちてきた。あのまま進んでいたら、ウァレたちは押しつぶされていただろう。しかし、それは時間稼ぎにすぎない。


「――っく……まずい」


 後ろから迫る落石の音が、彼らを恐怖に駆り立てた。


そして、彼らは落石に巻き込まれた。


            ✝3✝


「……んくっ……」


 エミルカは、足に走る激痛で目を覚ました。足の上に、横倒しになった車イスが乗っかっていた。だが、そのおかげで岩の下敷きにはなっていない。


 視線を辺りにさまよわせてみたが、誰の姿もなかった。落石でみんなばらばらになってしまったようだ。彼女の車イスを押していたはずのウァレの姿すらない。


「ウァレ――ッ!」


 叫ぶも、返事は聞こえない。崩れ落ちた岩で遮られ、彼に声が届いていないのかもしれない。

 

 エミルカはもう一度叫ぼうと、息を吸い込んだ。が、背後から聞こえてきた音に、とっさに振り返った。


「ウァレか!?」


「わ、私ですらぁ……」


 おそろおそろ、岩陰から姿を現したのはユネーヴァだった。エミルカは、ふぅと息を吐いた。ひとまず、一人は安全が確かめられた。


 問題は、ウァレだった。


「ウァレはどこじゃ?」


「さ、さあ……私も、エミリーの声で起きたからん……」


「エミリー言うな。……そっか。まあ、ウァレなら大丈夫じゃろ。心配戦でも、たぶん……きっと……ぜ、絶対に……」


「どんどん尻つぼみになってるらぁ!?」


 エミルカは、ほんの少し心にわだかまりを感じながら、ユネーヴァに車イスを起こしてもらった。車イスは何とか無事だった。


「……とりあえず、ウァレを探しながら進んでみよ」


 エミルカは視線を一点に向けた。落石が起きたせいか、出口とはまた別の道が続いていた。エミルカたちの周りは、岩で囲まれてしまったので、そこを行くしかない。


 エミルカは車イスを進ませた。彼女の後ろから、ユネーヴァが心配そうについてきた。


ウァレがツボを割ったことで、梅雨が漏れたはずだ。ヒビだけだったので、まだゆっくり雨雲がたまっていっているはずだが、どちらにせよ、このままでは梅雨の雨が降ってしまう。

 

 ユネーヴァが焦っているのが、エミルカにはなんとなくわかった。そして、彼女がかけられた、本当の【呪い】の正体も。


 分かれた洞窟の奥まで来たが、目の前には岩の壁が立ちはだかっていた。それ以上先には行けず、また、何もない。


「……戻るわけにもいかんしな……」


 今歩いてきた道は、一本道だった。どこかに分かれた道があるわけでもなかったので、出口はないのかもしれない。


 岩の壁を壊そうにも、彼女たちにはそんな膂力はない。事実上、彼女たちは外に出ることが出来なかった。


「……ま、このまま焦っても仕方ないし、大人しくウァレが現れるのを待っとこーか。あいつなら、たぶん何とかできるじゃろ」


「え……そ、ウァレさんが安全なのかどうかも分からないのに!?」


「じゃけ、ウァレは絶対に大丈夫じゃ。ただ、今はどこにもおらんだけ。その内

見つかるじゃろう。絶対、ウァレが見つけてくれる」


 真剣な眼差しで言ったエミルカに、ユネーヴァは何も言えなくなった。彼女たちの信頼を崩すことは、ユネーヴァにはできないことだと思った。


 そして、それがうらやましくも思った……。


「――心配なんじゃろ」


「え……」


「梅雨」


 突然、話が変わり、ユネーヴァの反応が遅れた。エミルカは瞑目して、何を考えているのかは分からなかったが、ユネーヴァは頬に汗を流しながら、答えた。


「そうですね……あと何時間……いえ、何分もないのかもしれませんが、梅雨の雨が降ってしまえば、私は竜になってしまうらぁ……」


「ふぅん。そんなに竜が嫌なんか?」


 ユネーヴァは、淡々と答える。まるで、答えが決まっていたかのように。


「はい。だって、人間にはできることが竜になってしまえば、できなくなりますらぁ。人前に出られなくなって、寂しく孤独に……私は、それが嫌なんですらぁ。だから、私は竜になりたくないらぁ。竜になったって、楽しそうなことはないと思いますしねぇ」


「……そ」


 エミルカは短く反応を見せると、ゆっくりと瞳を開けた。薄く開いた瞳が、ユネーヴァをとらえたとき、背中がぞわっと寒気がした。


 エミルカの瞳が、まるで真実を見抜いているような気がしたのだ。


 ユネーヴァの反応に対し、エミルカはふっと微笑んだ。


「――嘘じゃな」


「――ッ! な、何を言っているんですらぁ?」


 ユネーヴァが否定の言葉を返そうとしたとき、エミルカの瞳が幽かに赤く光った。


「そんなにあわてんでもええがな。冗談じゃ、冗談。それより、ウァレを探さんとな……あいつはどこに行ったんじゃ」


 車イスを走らせて、エミルカは一本道を戻っていった。ウァレと別れたのは、あそこの辺りだったはずだ。なら、ウァレがいるかもしれない。


 エミルカの後姿を見つめて、ユネーヴァはただ茫然と突っ立っていた。


 その時だった。


『ミカ――ッ! ユネーヴァッ! いるか!?』


「ウァレッ!!」


 エミルカは、とっさに声のする方向へと向かって行った。壁の向こうから、ウァレの声が響いてきた。おそらく、エミルカたちがいるその向こうにも、もう一本道があるらしい。


 ウァレは崩れた岩の隙間から手を伸ばした。エミルカがその手を握ると、ウァレは力強く握りしめてくれた。


「ミカ! 大丈夫なんだよな!? すぐにそっちに行く!!」


 岩壁の向こうでウァレがそう言うと、崩れた岩を退けるような音が聞こえてきた。落石した岩は幸い、手で抱えられるほどの大きさだった。


 エミルカは、ウァレの作業が終わるのを、じっと待っていた。


 彼女の後ろで、ユネーヴァは心配そうに彼女を見ていた。


              ✝4✝


 天井から水が滴り落ち、ぴちゃんという音がした。


 ウァレは両手を見て、小さくため息を吐いた。何とかエミルカたちを助けることはできたが、両手はボロボロに傷ついてしまっていた。血だらけになったそれをエミルカに見られないように、ウァレは両手を後ろに組んだ。


「ウァレ、何やっとるんじゃ。はよ手当しとかんと、あとで酷うなるで」


 しかし、彼女にはバレてしまっていたらしい。ウァレは大人しく彼女に両手を差し出した。ウァレは車イスの背もたれに着けられた荷物入れから包帯を取り出し、エミルカに渡した。エミルカはウァレの手にそれを巻きつけ始めた。


「……外、たぶん雨降っていますらぁ……」


「そうじゃな。はよ止めんと、朝日が昇る……そうなったら、手遅れじゃ」


 包帯を巻きながら、エミルカは答えた。天井から水が滴っているということは、外で雨が降っていることだろう。


 ウァレはふと、ツボのあった方角へ目を向けた。そちらの道は完全に寸断されており、おそらく、もうツボのところへは戻れないだろう。


 かといって出口に向かうこともできなかった。彼らは完全に洞窟の中で固まっていることしかできなかった。


「このままじゃ、時間も分からないな……あと少しで日が昇るっていうこと以外は、何も分からない……」


「そうじゃな……って、ユネーヴァ!」


「え……な、何ですかこれっ!?」


 ユネーヴァの肌が、硬いものに変わっていることに気が付いた。爬虫類のようなその肌は、まぎれもなく竜のもの……ユネーヴァの竜化が始まろうとしていた。


「くっ……早く、解決策を見つけんと――っ!」


 しかし、現状では何もすることが出来なかった。


 洞窟に閉じ込められている状況では、彼らは何もできない。しかし、あと数分と迫った時間の中で、どうにかして梅雨を止めなければならない。それは分かっている。


 ウァレは解決策をいくつか考えてみた。


 一つは、岩をどかしてツボのところへ行く――しかし、岩をどかすことはできない。ウァレの手はボロボロで使い物にならないし、かといって少女二人の力では到底無理だ。


 二つ、岩を壊す。しかし、これも前述の通り、ウァレの力が使えない以上は無理だ。それに、落石したことで天井は今、不安定な状態だと言える。そのため、これも得策とは言えない。


天井からの水が滴り落ちる度、彼らは焦燥に駆られた。そうやって考えている間にも、夜は明けるし、ユネーヴァの竜化も加速していく。


 そして、ウァレは三つめの方法を考えていた。が、この方法はあまりほめられたものではない。と、いうよりもあまり使いたくない方法だった。


 しかし、それが最善なら――それしか方法がないのなら――……。


 ウァレの考えを、エミルカも察したのだろう。彼女はユネーヴァに向き合って、首から提げた十字架を握りしめた。


「ユネーヴァ。あんたは何を願う? 何を願って、何を思って、私に嘘を吐いたんじゃ?」


「う、嘘だなんて……そんなこと……」


「ツェレキスは、梅雨を守る竜じゃ」


 エミルカは、ユネーヴァの台詞を遮って言った。


「梅雨を守るために生きとる竜じゃ。あいつは、毎年人間に【呪い】を駆けることによって、梅雨をコントロールする力を持っとる。じゃけん、あんたがあいつの被害者になったことは分かっとる」


「だ、だから何だっていうんですらぁ? 私は嘘だなんて――」


「まだ分からんのんか? 私は、あんたよりもずっと前からツェレキスを知っとる。じゃけん、あいつがどんな【呪い】を持っとるか、知っとるんじゃ」


「――――――っ!」


「どういうこと? ミカ」


 ウァレが尋ねると、エミルカは十字架に視線を落とした。


「……ツェレキスの【呪い】は『日に当たると竜になる』じゃ……じゃけど、ユネーヴァが言ったのは『雨に当たると竜になる』……明らかに嘘じゃな」


「……」


 エミルカの言葉に、ユネーヴァは否定も肯定もしなかった。いや、もう結果は分かっている。彼女は、嘘を吐いたのだ。


 梅雨を絶対に来させなければ、ユネーヴァは竜になってしまう。だが、彼女は梅雨を止めさせ、晴れにしようとしていた。翌日雨が降るのは確定だったので、そのままにしておけば竜にならずに済んだのに、だ。


 そこには彼女なりの考えがあったのだろう。理由、それも自分を犠牲にするだけの理由があったのだ。


 ユネーヴァは困ったような表情で、顔を上げた。


「はい。私は嘘を吐いたですらぁ。本当は、雨が降ったほうが私のためになるんですらぁ……でも、それだと救われるのが、私だけなんですらぁ」


「梅雨が来なければ、ツェレキスは人間になる。その代わり、犠牲にした人間が竜として、その役割を担うことになる……つまり、ユネーヴァはツェレキスと入れ替わろうとしたんじゃな」


 ユネーヴァは首肯した。


「私は、ツェレキスに外に出てほしかったですらぁ……」


 ユネーヴァとツェレキスは親友とも言うべき友だちだった。人間と竜という、種族は違えど仲が良い友だちだった。


 だから、ユネーヴァはいつまでも洞窟にいなければならないツェレキスを不憫に思った。竜は人間の前に姿を現すわけにはいかないので、そうして洞窟に籠るしかなかったのだ。


 ならば、ツェレキスを人間にしてしまえばいい。


 ユネーヴァは、梅雨になるはずの時期に雨が降らなければ、ツェレキスが人間になることを知っていた。自分はその代わりに竜になってしまうが、彼女のためならそれでもいいと思ったのだ。


「だから……雨を止めなければいけないんですらぁ! 彼女をこのまま、竜のままで一人にしたくない! 外に出て、もっといろんな人を知ってほしい! そのためなら、私は私を犠牲にすることだって厭わない!」


「――それが、あんたの願いじゃな?」


 ユネーヴァは、迷うことなく、


「はい。私は、ツェレキスを人間にしたいらぁ!」


 エミルカは、無感情に十字架を握って、瞑目した。


「私は竜と人間を繋げるもの――【猫ノ狐】。あんたの願いは分かった。主のお導きより、私たちは出会った。奇跡の縁が、私たちを引き結んだ。大切にするものを、私たちは持っとる。願い、思い、叶え、乞い、祈り、詠い、そして……すべてはつながる」


 エミルカはゆっくり瞼を開くと、ユネーヴァを見つめた。


「願いを叶えるのは、いつも当事者じゃ。私たちは、あんたの願いを手助けするだけ……じゃけん、願いし迷い子のために、私たちは力を貸す」


「……ありがとう、エミルカ……助けて、お願い!」


 ユネーヴァは、立てなくなって地面にへたり込んだ。独りの友人のために、自らを犠牲にささげようとする一人の少女が、本気で願う。


 友のために自分を犠牲にする――それができる人間は、なかなかいない。彼女の思い、願いは立派なものとはいえまい。自分を犠牲にするなど、バカのすることだ。だから、こんな願いはかなわないほうがいいのかもしれない。


――それでも、思いだけは変えられない。


「――ウァレ、祈れ」


 エミルカが 静かに言うと、ウァレは狐面を外した。彼の素顔を見たユネーヴァは、驚きに目を見開いた。


 右上以外が焼けただれていた。唇からは常に鮮血が流れ、落ち窪んだ左目には、眼球がないのだろう。額には、十字架模様のあざ――否。そういう風に焼けただれているのだ。


 ウァレは十字架のあざに触れながら、呪いの言葉を詠った。


 それに合わせるように、エミルカが十字架を握って祝福の言葉を紡ぐ。


「――至誠(Verbum )なる(Dei )主の(factum )言葉(est:perii)

    我は(Nunc )≪魔(sumus )≫な(in )りて(magia )――」


     「――純(In )心なる(corde )は(puro )言の(verbo )葉(Dei )

         ただ、(Beaedictio)≪(,)童≫へ(datum )と(est )還(ei )り(ut )し者(filii)――」



  「「――――【魔童】(Curse)――――」」



 次の瞬間、彼らは人間ではなくなった。


 ウァレは、耳がとがり、口からは白い牙のようなものが生えていた。額の十字架を中心にして、黒い刻印が全身を這い、そこから蒸発するように黒い靄のようなものが発生していた。


 対してエミルカは、猫のような尻尾が日本になっていた。頭の狐耳は大きくなり、頬から針金のようなひげが生えている。ウァレの黒に対し、こちらは赤い靄のようなものを発生させていた。


「ユネーヴァ」


 エミルカが、ウァレの背中を見つめながら言った。


「あんたの願い、全ては叶わん」


「――え?」


 しかし、その言葉の真意を訪ねるより先に、ウァレは岩に向かって黒い靄を――【呪い】を放った。


 ウァレの【呪い】によって、硬い岩が、重い岩が、その性質を反転させる。


 柔らかく、軽くなった岩を、ウァレは包帯で動きづらい拳で殴りつけた。岩が粉々に砕けちり、あっという間にツボまでの道が出来上がった。


 柔いと思われた天井も、何とか崩れないでくれていた。いや、もしかするとウァレが何か細工したのかもしれない。しかし、そんなことはどうでもよかった。


――早く、梅雨を止めなければ。


 焦ったユネーヴァが、ツボのところまで走って行った。


「ユネーヴァ! まだ危ない!」


 しかし、ウァレの声は彼女に聞こえていないようだった。


 ユネーヴァはツボのある、広い場所まで来ると、地面に落ちた岩を踏み越えていった。


 やがてツボを見つけると、ユネーヴァはツボに向かって手を伸ばした。しかし――。


「ぐっ……な、なにこれ……ッ!?」


 ユネーヴァの手は、ツボに触れることが出来なかった。障壁があるようで、一定の範囲からツボへは、触れないような仕組みになっていた。


 いや、これは【呪い】だ。


 気づくと、ユネーヴァは宙に身を投げ出されていた。ツボの【呪い】に弾かれたのだと気づいたとき、仰向けに地面に転がった。


「きゃっ……」


 天井を見上げると、その上のほうが幽かに明るくなっていた。もうじき、朝日が昇る。


 ユネーヴァは立ち上がった。自分の足が重かった。いつの間にか、足にまで鱗が這っていた。人間とは思えないほどに筋肉が膨張し、不恰好に腫れていた。


「そ、それでも……ツェレキスを……」


 不自由な足を前にだし、ユネーヴァは必死にツボへと向かっていった。ツボに触れる直前、またも障壁に阻まれて身を投げ出された。


「――ぐっ……ぁ……」


 背中に熱いものが走るような感覚がすると、彼女の背中に一つの翼が生えた。それが重く、身動きがしづらくなる。


「な、なんで……なんで私、竜になるのっ!?」


「ユネーヴァっ! ツボに触れろ――っ!!」


 何が起きているのか分からない。それでも彼女は……一人の友人のために立ち止まるわけにはいかなかった。


 今度は、さらに力強く、ツボを押さえるようにして手を突き出した。障壁が拒もうとするが、横から黒い靄がそれを覆ったと同時に、ユネーヴァはツボに触れることが出来た。


「――って、これでどうすれば……?」


「壊すんじゃ!」


「え……でも――」


 壊せば、中にある梅雨が外に出ていくと言ったのは、エミルカだった。そのエミルカが、今は逆のことを言っていた。


 ユネーヴァは混乱しながらも「もう、どうなっても知らないらぁ!」と叫びながらツボを地面にたたきつけた。雨雲が減っていたおかげか、ツボはさほど重くは感じなかった。


 その瞬間、天に昇っていた梅雨がぴたりと動きを止めた。


 次第に空が白んでいき、陽光が雲の間をすり抜ける。


「……ぁあ……梅雨が、止んだ……」


 ユネーヴァはそう呟き、拳を握った。


              ✝5✝


「えっと……これはどういうことですらぁ?」


 ユネーヴァは、自分の身に起きている現象に、驚きを隠せないでいた。そして、目の前には藍色の髪をした少女が首を傾げていた。


「何が問題なの? 普通によん」


「ツェレキス、それは自分を見てから言ったほうがいいらぁ?」


「? ……わお! に、人間になってるによん!」


「今気づいらの!?」


 人間になったツェレキスは、目を輝かせて自分の身体を見ていた。


 ユネーヴァはどういうわけか分からなかったものの、自分が竜にならず、彼女も人間になれたのだから、それが一番いいと思った。苦笑すると、ユネーヴァはツェレキスに第着いた。


「ゆ、ユネーヴァ? どうしたの? 泣いてるりよん?」


「よかった……これで、本当によかったんだ……」


 誰も犠牲にならず、彼女たちは同じ人間となった。人目に憚られることなく、彼女たちはずっと友だちでいられる……と、そう思っていた。


 二人のやり取りを、洞窟の外でウァレとエミルカは聞いていた。


 エミルカは悲しげな表情をして、ウァレの袖を引っ張った。


 ウァレも何も言わず、岐路へ着いた。


「……一日だけじゃし」


 エミルカがそう呟いたとき、彼女の頬に冷たいものが当たった。空を見上げると、墨色の空が覆っていた。


「ああ、もう終わりじゃな」


 雨が降る、その前に早く帰ろうと、ウァレは足を速めた。


 彼らの後ろで、喜んでいた二人の声が、悲鳴に変わったのを聞いた。それを気にしないまま、ウァレは明日のことを考える。


 明日から、梅雨だ。


 いや、今から梅雨だ。



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