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8羽:七歳の異動命令

 初狩りのその後も“オレ”は大人たちに同伴し狩りに行く。


 初めての時の様に森に潜む獣を仕留める事もあれば、低空を飛ぶ野鳥の群れを射落した時もあった。まだ筋力の無い子供の身体という事もあり遠距離まで矢は飛ばせない。だが“何となく”獣が潜む場所や無規則に逃げる獣の姿が見え仕留める事が出来ただの


「アイツ、また仕留めて来たな」


「こりゃ、いよいよ本物かもしれんな」


 最初は怪訝そうにしていた村の大人たちも、次第に幼いオレの狩りの腕を認めてくれてきた。実力主義のこの森の部族では年齢性別はあまり関係ない。より強く、より多くの獣を狩る事が出来る者が生き残っていくのだ。




そんなある日


 質素な朝飯を済ませ、今日もオレは狩りの準備をする。


(今日はどこの狩場に行き、どんな獣に出会えるだろう。そして、どんな肉が・・・)


 そう思うと口の中によだれが溢れてくる。村のみんなの為に、そして自分の胃袋の為に今日も一日頑張ろう。


 集合場所の村の広場に行くと、狩りに出る青年大人たちが今日の班分けをしていた。実力や獣の危険度を考慮しながら村長が編成を行う。


「おいお前、今日はコイツ等と行け」


 高齢の村長の指示によると、どうやら今日は今までと違う狩組に配属になるらしい。オレがその“狩組”に入ると分かり集まった大人たちがざわつき始める。


「おい、見ろよ。まさかアイツ、《流れる風》さんと一緒の組になるのか!?」


「《流れる風》の狩組・・・“魔の森”の遠征から帰って来ていたのか・・・」


「幾らなんでも村長、無謀ではないか?」


 そんな大人たちの声が嫌でもオレの耳に入って来る。半分は驚き、後の半分は可哀想にという憐れみも入っていた。



「どうも初めまして、よろしくお願いします」


 指示された狩組の所に行く、オレはペコリと子供らしく頭を下げて挨拶をする。


「ふーん、コイツがあの噂の・・・」


「思っていたより小さいな」


「強い戦士に歳は関係ない」


 挨拶したオレを値踏みする様な視線と共にそんな声が耳に入る。挨拶を終えオレもチラリとその新しい狩組の大人たちを観察する。


(これは確かに腕利きオーラが半端ないな・・・)


 この森の民は男女問わず全ての者が身体能力に優れたくましい。だがそれ以上にこの新しい狩組のメンバーが醸し出す強者感は飛び抜けている。


 村人たちの話ではこの狩組は普段は危険な猛獣や“魔獣”と呼ばれる危険な獣を専門に狩っており、援軍として遠い村まで遠征している事が多いのだという。


 全員がこの村の出身であったがその姿を見られる事は滅多になく、村の子供や青年たちにとっても憧れの狩人であるのだ。そんな彼らがオレの事をまだ爪先から頭の上まで観察している。


(オレはまだ七歳児の幼気な男の子に、そんな熱視線を送られても困るんですけど・・・)


 オレはエヘヘとその視線に子供らしい愛想笑いで返す。過度の期待をされても困る、少し子供らしくいこう。


「おい、そろそろ行くぞ。おガキも遅れるんじゃねぇぞ」


 それまで腕組をして一言も話さなかった男がそう狩組に指示を出す。ひと目見て分かった、この人がこの狩組のリーダーであり先ほどから名前が挙がっていた《流れる風》だろう。


 巨漢の戦士も多い森の民の大人の中でも、それほど大きな体躯ではなく見た目も普通だ。だが全身から隠せない程に溢れ出る威圧感プレッシャーは自分が今まで感じた事がないものだった。


「はい、分かりました。皆さん改めてよろしくお願いします」



 最後にそう子供らしく挨拶をして、オレはその《流れる風》率いる狩組に付いて行く事になった。





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