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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【下界 ベール王国 王都】の章

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61羽:二人の剣鬼

目の前に異様な集団が並んでいる



野性の獣の皮で作った革鎧を着こみ、その胸や腰には派手な色の毛皮や、明らかに獣の牙や爪など首飾りや腕輪をして装飾している



また、顔には赤緑黄色など派手な色で、怪しげ模様を塗り化粧をしている、



武器などはこの部屋に入る前に預かっていたが、その武具も狩りをする弓や手斧や槍など原始的生活感が感じられていた



明らかに蛮族と分かる集団が、この栄光あるベール国王の気品ある謁見の間にいたのだ



『野蛮な集団』



と最初はそう感じた



しかし、先頭にいる代表の女性を始めて、奥に控える戦士達も、みな臣下の礼をとり、我が国王に礼を尽くしていた



どうやら言葉も通じるようで、むしろ流暢な口上を述べ国王様に挨拶している



とても不思議な光景だった



聞いた話が本当なら、この者共はこの大陸の奥にある『大森林』の部族であり、そこから来た使者だという



大森林と言えば、凶暴な獣達が生息し、また、異形の魔獣がそこを住処にして人を食らう。



そして、そこに住む原住民は原始的な狩りの生活をし、狩った獣を生で食らい、時には街から人をさらい、食うとまで言われていた



大森林は『魔の森』とも呼ばれ、緑と水源豊かで広大な土地であるが、腕利きの狩人でも一度入ったら二度と出て来ることも出来ない



これまで隣接するどの国も開発をしようとした事は、一度もない恐怖の場所だ



そんな、森に住む原住民である彼らは見た目は噂通りだが、しっかりと礼節をわきまえ謁見している事に私は驚きを隠せずにいた



この代表であろうその女性は挨拶をし、自分たちの森の特産品を王に見せ献上する



見た事がない森の実や魚や肉の加工品、手の込んだ工芸品・芸術品、また不思議な色の貴金属、彩り石などが用意されていた



そしてなにより驚いたのが『魔獣のはく製』だ



それは狼に似ているようで狼ではない



体は普通の狼の倍以上で足も長く太い



その眼球はまるで宝石のように赤く深い色をしている


そして何より特徴的なのはその大きく鋭い犬歯や爪だ



この鋭い牙や爪で襲われたら、金属鎧を着た騎士でさえ一撃で絶命する



この動かない魔獣を見ただけで、そう想像できる程恐ろしい獣だ



背筋が寒くなる



後で聞いた話では魔獣の毛皮と皮は非常に硬く、鉄製の槍でもそれを貫くのには一苦労するという



「これは珍しい物ばかり。その心遣い感謝いたす」



我が王はその品物を見て嬉しそうにその使者に伝える



この王がこんなに嬉しそうな顔を見るのは久しぶりだ



元々気さくな方だが、日々政務に追われ、最近ではこういった笑みが出来ないでいた



「今度機会があったら、余も魔獣狩りに連れて行ってくれ」



『そうでございますか。大森林には魔獣が生息する森もあります。是非いつでもいらしてください』




と、こんな冗談のやり取り話まで出るくらい上機嫌だ





前話はその位で終わり、今回の謁見の本題に入っていた



『ヴェルネア帝国』の侵攻についてだ



・・・話には聞いていた



何でもこのベール国王に属するグラニス伯爵領の近くまで、ヴェルネア帝国軍が進軍して来たという



それをグラニス伯爵軍が迎え撃ち勝利したという話だ



しかし、何と今回この森の部族と一緒に来た、グラニス伯爵公の第一子息が述べるには、



この森の部族とグラニス伯爵軍共同で帝国軍と戦い、それを撃退したという話だった



その第一子息レオンハルト・グラニスは、まだ若いが目には強い意志の力が見え、その立ち振る舞いから剣の腕も中々と見え、好感の持てる青年だった



とてもその目を見た感じでは、嘘をついているようには見えない



これまではこの森の部族が伯爵家と個別に友好を結んでいたという事だが、今後はこのベール王国とも友好を結び、有事の際には協力して欲しいとの事だった





我が国王は即答を控え、数日後に返事をすると言い、この場の謁見は終了した



「暫くこの王都でゆっくりするがいい。世話はそこにいる近衛騎士のヘルマンに任せた、必要があれば何でも言ってくれ」



とオレを指さし説明する




・・・・そうか今回、私はこの為に呼ばれたのか




こうして『聖騎士』と人々に呼ばれる私は、この不思議な森の民の世話を数日する事になった





「この建物全部を自由に使ってください。使用人を何人か置いておくので、食事や身の回りの事はそちらに申し付けください」



私は王都にある来賓専用の館に彼らを案内し説明する



最初は同行していたグラニス伯爵家の王都の屋敷に泊ろうしていたらしい



しかし、国王に言いつけられ、彼らは国賓として扱う以上は、こちらの屋敷に居てもらうようにお願いした



彼らの風習がどのようなものか分からないが、レオンハルト卿から聞いた話では、我々と同じように物を食べ、水浴びをして寝るという事だったので、この来賓用の屋敷でもなんとかなるだろう



森の民たちは屋敷の大きさに感動しながらも、中庭から屋敷の中に進んで行く



・・・・ん?



一人だけ入っていかない人物がいた



腰に剣を差した女剣士だ



この集団の代表で部族の王の娘、名前は確か『獅子姫』と名乗っていた



年端まだ若く、少女と成人の中間位だろうか



(うちの姫様より少し年上かな・・・・)


と思っていた



「ヘルマンと言ったか、お主?」



その森の姫様はオレを見て訪ねてくる



「はい、近衛騎士ヘルマン・フォン・ゼルツと申します」



私はその若く美しいが、威厳のもある姫様に自然と名乗り答える



「お主、かなりの使い手だの。手合わせ申す。では行くぞ!」



と言うと同時に腰の剣を抜いて斬りかかって来る




「な、何をなさいます!?」



私は慌て自分の剣を抜きそれ受け流す



スッと移動し相手との距離を取る




「一体これはどういう事ですか、獅子姫様」



私は問答無用で斬りかかってきた姫に再度問いかける



「思った通り、かなりの使い手であるな。しかし、何か力を隠しておるな?」



そう言うと、また斬りかかってくる



上段、下段から激しい切り返しが、何度も襲い掛かる



剣速も信じられない速さだが、剣圧も見た目と違いズシリと重い



受け流しているこちらの手が痺れてくる



「くっ!」



さらに剣速が上がり、殺気もこもった斬撃が飛んで来る



(このままでは本当に殺られる!反撃しないと)




『オレ』はそう思い意識を集中する






『また、獅子姫様の悪いクセが出た』




王宮からこの王都にある滞在用の屋敷に案内された、オレは屋敷の中に早速入ろうとしていた



(王都の飯は期待が出来そうだな・・・どんな美味い料理が出てくるのやら)



すると、後ろの方で何やら妙な気配が立つ




見ると我らが獅子姫ちゃん、ここまで案内してくれた聖騎士ヘルマンに真剣で斬りかかっていたのである



・・・・獅子姫様は腕利きの剣の使い手を見ると、その腕を試すように急に手合わせをする悪い病気があるのだ



オレも最初は斬りかかられ、これまで何度もその光景を見て来た



最近はあまり驚かなくなってきたが、流石に親切に案内してくれた騎士にまで斬りかかるとは思わなかった



確かにその騎士の腕は立つようだ



あの獅子姫の剣を何度も受け流し、回避する剣士など我が部族でもそう何人もいない



それ程までに彼女の剣撃は速く激しい



素早い森の獣でさえ一撃で仕留め、硬い魔獣ですらその業物の剣に倒れる



その剣を受け続ければ刀身の方が持たないだろう



(しかし、あの騎士は何か変だ・・・ワザと弱くしているというか、隠しているとうか・・・)




そう考えていたら急に流れが変わった



姫ちゃんの剣先に殺気が宿り



そして聖騎士ヘルマンが急に反撃し始めたのだ



先ほどまでの剣の見本のような剣捌きとは違う



急に荒々しい剣捌きでヘルマンは獅子姫ちゃんに反撃する



右から下から縦横無尽に叩きつける剣技



いつの間にか砂を手に持ち、それを獅子姫ちゃんの目に投げつけ目潰しをした



それを冷静に躱す姫ちゃん



そして更に斬撃を姫ちゃんに叩きつける



その騎士の顔を見ると、先ほどの穏やかな優しい顔とは違い、目に見えるほどの殺気を飛ばし鬼のような迫力だ



しかも、その顔には笑みも浮かんでいて、戦いを楽しんでいるようだ



一方獅子姫ちゃんも嬉しそうにその剣を受け、そして激しく打ち返している



まるで剣鬼同士の斬り合いだ



(・・・・マズイ・・・・このままでは、どちらかが死ぬまで終わらない)




オレはそう思い、弓を構え無心になり精神を集中する




・・・・一瞬しかない




その時、二人が剣を振りかぶり、必殺の一撃をお互い繰り出そうとした



(今だ)



ビュン



ガキン!!



『魔獣喰い』の矢が宙を舞う





その時『オレ』は信じられない体験をした



死闘のさなか一撃必殺の突きを繰り出そうと瞬間



自分の剣元に矢が飛んで来たのだ



そしてそれは対峙する女剣士の剣元にも同時に飛んでいた



1回で2本の矢を精密に射ってきたのだ



神業のような腕前だ



『オレ』はその矢を射った本人を探し見つける



この女剣士の従者であろう、陰の薄い狩人がこれを射ったのだ



「二人とも剣の稽古はこれまでです。腹も減ったので一緒に飯にしましょう」



その狩人は無邪気な笑顔でオレ達に語り掛けてくる



(・・・・また、やってしまったのか)



『私』は自分に反省し剣を収める



「ヘルマン、楽しかったぞ。また剣の稽古をしようぞ」



さっきまで殺し合い寸前までいっていた獅子姫様も、同じように笑みを浮かべ屋敷の方に颯爽と歩いて行く



(・・・もしかして、私が騙されて本気の斬り合いに誘いこまれたのかな)




(自分ものまだまだ未熟だな・・・・)



そう思い私ながら『聖騎士』と呼ばれている男は、屋敷の中に遅れて向かうのであった










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