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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【下界 ヴェルネア帝国 侵攻】の章

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58羽:対帝国会議

軍馬を走らせながら後方を確認する




朝日で視界もよくなり平原が見渡せる




・・・どうやら敵を振り切ったようだ




無事逃げ切れたのだ




敵に騎兵がいなかったのが幸いだった




周りの兵士達に声をかけ、最終的な撤退の指示を出しておく




このまま進めば味方の砦がある




そこまで退けば取り敢えずは一安心だ




周りを見ながら着いて来ている兵数を確認する




(それにしても来た時に比べて、随分と少なくなったものだ)




これ以外にも各自で逃げていた者もいれば、降伏した者、また、あのままグラニス伯爵領内に残り盗賊まがいになる者もいるだろう




それにしても惨敗という結果でしかない




総大将である東部方面の司令官も戦死した事もあり、暫くはこちらも砦に引きこもり防衛をしなければいけない




(やれやれ、ガエルを中央軍に行かせるのは当分先になりそうだ)




隣を軍馬で並走する、銀髪が赤く染まった男をチラリと見る




(こいつはこんな辺境で燻るヤツではない。中央軍で大軍を率い、各国にその勇名を響かせる偉大な男だ)




そう心に思う




すると、その視線に気付いたのか『赤髪』ガエルが話しかけてくる




「なぁ、アベル。さっきのあの敵の部隊の事を調べておいてくれ」




「ああ、分かった。グラニス伯爵領にいる間者に連絡を取り調べさせる。前の遠征の時はあんな奴らはいなかったな」



各地に情報収集網を持つオレは答える




「あと、あの女剣士の事も細かく調べておいてくれ。調べるだけで、絶対に手は出すなよ!」




「そう言うと思ったよ。経歴から好みまで細かく調べておくよ」



と答えておく




「はははっ、何でもお見通しか。お見通しついでに、お前の実家の宝物庫に業物の大剣が1個あったよな?アレも調達しておいてくれ」



とガエルはニヤリと笑い、目を輝かせてこちらを見てくる




「なっ!アレはうちの公爵家に代々伝わる宝剣だぞ!・・・・・そんな目で見るな。分かった、分かった、何とかしてみる。


 それにしても珍しい事もあるもんだな。随分とさっきの奴らに興味津々だな?」



とオレは、普段他人に興味をあまり持たない同期生に問う




「帝国軍に入隊してつまらない相手ばかりで、正直ウンザリしていたところだったからな! 

お前も自分の肩に一瞬で矢を射った奴に興味があるだろう?さあ、さっさと砦に帰って兵を補充してまた出るぞ!」




と楽しそうに言い、馬を先に走らせる





(やれやれ、変なのに興味を持ってしまったな。それでも、やる気を出してくれた事には変わりない。そういう意味では奴らに感謝しないとな)




(確かに気配を消し、味方に紛れて矢を射ろうとした私に気付き、更に私よりも早く矢を射る者がいたのには驚いたが・・・)



そう心の中で思い、気付くと私も笑みを口元に浮かべていた




そんな自分に気付き、私は西にある自軍の領土に馬を進めるのであった。





オレは今、下界の直轄地にある宿場村に来ていた




・・・いや『宿場街』と言った方が正解かもしれない




2年前に来た以来だが、その規模は見間違えるほど大きく拡大していた




前は居酒屋宿屋を中心に、少ない家々と周りには畑や牧場が広がっていた



しかし、今は木と石を組み合わせた城壁がぐるりと街を囲み、その前には空堀も掘られていた



等間隔で見張り塔もあり、さながら簡易型の城塞都市といった所だ




東西の城門では見張りの兵士達が簡単な通行検査もしており、街の中もすっかり変わっていた



行商人に引っ切り無しに訪れたい、宿屋も増え、それに伴い商店街が連なり、長屋や歓楽街も出来ていた




さすがに城はないが、この街を守る兵士達が詰める兵舎が砦代わりになり、いざという時はここに立てこもる事も出来るそうだ



オレは今、そんな兵舎の一部屋にいた




その部屋の中にはオレと、女戦士の『黒豹の爪』、研究軍師『知恵の実』、この街の守備隊長、そしてグラニス伯爵軍の騎士が二人いた




一人は銀色の甲冑を身に着け、豪華な装飾をしたマントを羽織っている青年騎士



もう一人は同じく甲冑を身に着け、その青年騎士の後ろに控える女騎士




そう、少年騎士君こと『レオンハルト・グラニス』と、女騎士ちゃんこと『スザンナ・デリス』の二人だった




二人に会うのは2年ぶりだが、見た目でも分かるように成長していた




少年騎士君は身長も大きく伸び、年上のオレより少し大きくなっていた



それに伴い腕や胸板も逞しくなっており、その眼光も以前の優しさも有りながらも意志の強さも兼ね備えていた




女騎士ちゃんもオレより少し年上だったせいもあるが、更に大人っぽく成長していた




生真面目な性格は変わってなさそうだが、オレの顔を久しぶりに見て洩らした笑顔にオレはドキリとした




オレがそんな妄想に浸りそうになっている間にも、他の人たちは今回の戦について報告会をしていた




オレ達の今回の総大将である黒爪ちゃんが、少年騎士君たちに援軍のお礼を言い感謝する




「礼にはおよびません。森の部族の皆様には2年前に、多大なご支援をいただきましたから」



と少年騎士君も立派に返事をする




(むむ、こいつは身長だけではなく中身も大きく成長しているな)



身長を追い越され、中身でも追い抜かれそうになり密かに凹んでいたオレだった




「また、このザクソンの街が抜かれたら、次は我々グラニス伯爵領内に帝国兵が流れ込んできます。そういった意味で我々はこの街を全力でこれからも支援いたします」




と補足する




確かにこの宿場街は元々グラニス伯爵領だった事もありここを過ぎたら、すぐ伯爵領だ




ずるいかもしれないが、ここで2方向から帝国軍を迎え撃つ事が出来るので有効な策だ




そして、今後の対応について話し合う




次にまた帝国軍が攻めてきたらどうするか?



今回よりさらに大軍で攻めて来たら、持ちこたえるのは難しいと



帝国軍の情報をいち早く知る情報網の整備



連携強化の為の合同軍事訓練など



これまで以上に、外敵に対する方針を強化していく事になった




・・・・相変わらず難しい話は苦手なオレは(苦手なだけ。アホではない)聞いているフリをして会議を流す




(それにしても女騎士ちゃんは、久しぶりに見たけれど本当にキレイになった。


元々スタイルが良く、整った目鼻立ちの美人ではあったが、少し大人になりお姉さん的な色気と可愛さが見事にマッチした雰囲気だ。


鎧の上からだと分からないが、華奢に見えて結構胸もある。大森林に来た時に、薄着姿を見た時にはドキリとしたもんだ。)




とオレは2年前の事を思い出し妄想していた




「・・・・そういう訳で、こちらからはこの『魔獣喰い』と戦士数名、加護をかける精霊神官、あと軍師『知恵の実』を同行者として出すのでよろしく頼む」



と黒爪ちゃんは、何か少年騎士君に言っていた




「了解した。『魔獣喰い』よ、また一緒に旅が出来るとはな。よろしく頼むぞ」



と少年騎士君はオレに握手を求めてきた



よく分からないが、オレも条件反射でそれ返す




(ん?何が決まったんだ?同行者って、どこに行くんだ?)




ボーっとして何も聞いていなかったオレだが、それを悟られないように分かったフリをする




「それでは、ここでの対帝国の対策が済んだら直ぐに出発だ」



少年騎士君は宣言する




「・・・・ちなみに何処に行くのですか?」




オレは隣にいた軍師『知恵の実』ことセリナちゃんに小声で聞く



「なんだやっぱり聞いてなかったんだな?君も一緒にグラニス伯爵家の主君である『ベール王国』の王都に行くんだぞ!」




と、少し軽蔑した目で見られセリナちゃんに教えてもらう




(えーっと、王都ですか?何をしに・・・)




・・・・・相変わらずボーっとして、いつ間に自分の割り振りが決まっていました



そんな訳でよく分かりませんが、オレは王都とやらに行く事になる







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