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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【大森林 大砦】の章

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53羽:故郷の村

1年に一度の休暇を使い、大森林中を旅していたオレ達は、その帰り道オレの故郷の村に立ち寄にった




(ずいぶん久しぶりだな・・・・)




10歳の頃『流れる風』のオッサンに連れ出されて、この村を出たので約6年ぶりだ




この村は大森林の辺境にある小さな村で、何の特産品もない村だ




オレは毎日大都会を夢見て、少年時代をそこで過ごしていた




身寄りのないオレだが、やはり自分の生まれた故郷に、久しぶりに帰るのは感慨深い




・・・・・懐かしの村が近づいてくる




アレ?




6年前と少し雰囲気が違っていた




村の規模が大きくなっていたのだ





昔より人の住む家が増えていて、対獣用の柵も広く増設されている




そして、何より変わっていたのが村の脇にある『酪農』の規模拡大であった





そういえば小さい頃に、オレが『流れる風』のオッサンに提案して始まったのが、この村の酪農だ




オレは酪農のやり方なんて分からないので、実際には全部『流れる風』のオッサンと大人の村人達がやってくれた




食料と栄養の安定供給を狙って提案したことだったが、実際にはオレが乳製品や酪農品を食べたかったのが一番の切っ掛けかもしれない




あの時『流れる風』のオッサンが作ってくれたチーズの試作品を、食べた時の感動は今も忘れられない





「ちょっと、魔獣喰ん、何で君の生まれ故郷で『酪農』が行われているのだ!?この大森林で行わられている酪農だなんて・・・・初めて見たわ・・・・」




下界から来た研究軍師セリナちゃんは、その光景を見て目を丸くする




「酪農?見たところ山牛や山ヤギ、鳥なんかを柵や小屋の中で囲っているようだが、何か意味があるのか?」



一方、酪農を始めて見る女戦士『黒爪』ちゃんは、この光景の意味がまったく分からないようだ




確かに、『獣は狩り殺して頂く』を幼い頃から教え込まれた、この大森林の部族の者にとって、獣を捕まえ家畜として、飼育繁殖をするなど意味が分からない事だろう




最初はこの村もそうだった



しかし、実際に酪農を行ってみて、この故郷の村でも、多くの村人がその有効性に共感し協力してくれた




たぶん大森林の英雄『流れる風』のオッサンの意見だから、皆聞いていたのかもしれないが、常に栄養不足だった幼子達がすくすくと成長する姿を見たら、誰もが納得していた




・・・・幼い頃は下界に住んでいた、賢いセリナちゃんは勿論『酪農』を知っていたのだろう



「ふむふむ、こんな辺境でも酪農ができるとはね。この方法を広めていったら面白いかもね」




感心しながら、村の周辺を観察していた




・・・・ふと気配がする




村の若者の狩人がいた




村に近づいて観察しているオレ達を、何者か確認しにきたのだ




怪しい者だと思われ、弓で誤射されてはたまらない




大声で名乗る



「オレはこの村生まれの『魔獣喰い』だ!今回は戦士団の休暇にて帰郷した」






見張りの若者達は、小さい頃に一緒に村で訓練していた、オレと同年代の青年だった




当たり前だが二人とも逞しく成長していた




身長も伸び、腕や胸板も厚くなり、歩き方や佇まいを見ても隙がない




昔は二人とも弓に剣槍と器用にこなし、訓練ではオレはいつも逃げ回っていたのを覚えている




何とか、その二人もオレの事を覚えていた




「魔獣喰いだと!?本当だ、お前生きていたのか。いや~、懐かしいものだ」 




特に目立たない子のオレだったが、何とか覚えていてもらえて嬉しいものだ




村の門まで歩きながら女戦士『黒爪』ちゃんと、女研究軍師『知恵の実』セリナちゃんを紹介する




魔の森最前線『大砦』の大隊長の二人と聞いて、見回りの二人は背筋を伸ばし挨拶をし直す




幼いフリフリ女子セリナちゃんはともかく、大柄で筋肉隆々の女戦士の黒爪ちゃんは、見た感じでもの凄く強く見える




オーラというか迫力が桁違いだ




その手に持たれて業物の大剣を見ただけで、幼い頃から武芸を嗜むこの部族の者なら、彼女がただ者でない事を察するだろう




オレの村だと彼女の腕に対抗できるのは、『流れる風』のオッサンか『岩の盾』のオジサン位しかいないだろう




そんな人が上官で少し誇らしく思う




村の門をくぐり中に入り奥に進む




・・・・村の中は、昔とあまり変わらず懐かしい風景だった




狩ってきた獣を処理する小屋、日用品や破損した武器の手入れをする鍛冶屋のジイの小屋、共同生活の長屋に、奥には小さい頃毎日訓練した訓練所もあった




見ると訓練用の弓矢の的も大分近い距離に感じた




(今なら目をつぶっていても当たる距離かもしれない)




(本当に懐かしいな・・・・・)




訓練や狩りが辛く、空腹の毎日の記憶しかないけど、こうやって帰ってくると、嫌な思いでも美化され感慨深い




「へー、お前もそんな顔するんだな。いつもイヤラシイ事と食べ物の今年か考えてないと思ったがね」




オレの表情を読んだのか、黒姫ちゃんが茶化してくる




「オレだって人の子ですから、たまには真面目な事も考えますよ」




オレはそう答えながら表情を戻す




暫く村の中を散策していると、村の青年達や大人たちが集まって来て人だかりができる




陰の薄いオレはともかく、大砦から来た二人の女性陣に話を聞こうと群がる




「先にこの村の族長の所に行かなくては行けない」、と皆に言い族長の館に向かう




・・・・族長は相変わらずだ



喰えないジジイというか、狸オヤジというか




大物である黒爪ちゃんやセリナちゃんを紹介しても、漂々と対応してくれた




「今宵はここでゆっくりしていきなさい」




オレ達はその族長の言葉に甘えて、一晩床を借りる






夕食時はこの村で、いつも通りに皆で族長の館に集まり食事をとる




オレ達の宿賃代わりの獲ってきた獣肉に加えて、この村の酪農で採れた乳製品、卵料理、穀物肉料理などが出てきた




昔に比べて大分豪華な内容だ




話を聞くと、この村で加工された酪農品を他の村に持って行き、違う特産品と物々交換をしているという




焚き木を囲み食事をする皆の顔は明るい




黒爪ちゃんの魔獣狩りの武勇伝や、セリナちゃんの聞いたこともない知識を聞き入り、村のみんなは盛り上がる




村の腕自慢の青年が、木剣で黒爪ちゃんに模擬戦を申し込む




「オレはそういう解かりやすいのは嫌いじゃないよ」




ニヤリと笑い受ける黒爪ちゃん



宴の余興ができ村人達は盛り上がる




・・・・・そんな中、オレはある人物をずっと探していた




オレの教育係りであった『流れる風』のオッサンだ




夕方になり、狩りの大人達が全員帰って来ても、その姿が見えない




気になったオレは、恐る恐る族長のジイさんに尋ねる




「あいつは、何年か前から忘れ物を片しに行く、とか言って出ていったぞ。たまにぶらりと帰って来ては、またすぐ出かける」




とジイさんは答えてくれる




そうか、姿が見えないから、何となくそんな気がしていたけど、実際にそう聞いて会えないと分かると寂しいものだ




あのオッサンなら殺しても中々死なないだろう




まぁ、どうせ会っても、後ろからいつもみたいに頭の上にゲンコツを加えてくるんだろうけども、それでも顔くらいは見たかった




(そういえば、あのゲンコツは本当に痛かったっけ・・・)





質素な故郷の村の宴も、皆語り合いながら時間もあっという間に過ぎていく








次の日の朝も、いつも通り朝日が昇る前に準備して村を発つ





村の門まで見え送りに来てくれる村人達




族長のジイさんに、同期の青年達、小さい頃に木の実の採り方を教えてくれた年上の女性狩人もいた




「次はいつ帰って来るんだ?」




最初の会った、見張りであった青年が聞いて来る




「うーん、そうだな・・・・、また流れる風のように、気ままに土産話でも持って帰って来るよ」





オレはそう答えておく





「なんだ、もう少しこの村でゆっくりしてもよかったぞ」




木剣勝負をして、村に結構骨がある青年がいた事が嬉しそうだった、黒爪ちゃんがオレに語りかけてくる




「あの大森林式酪農法は本当に研究しがいがあったわ。また一緒にこようね」




研究家セリナちゃんも満足していたようだ



「うーん、そうだね。また、休みがあったら他の皆も誘って遊びに帰って来るかな。その時はオレの尊敬するオッサンも紹介出来るといいな」




と、独り言のように言い、オレ達はその村を後にする


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