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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【大森林 大砦】の章

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75/204

50羽:長期休暇

大砦の朝は早い



というか、大森林の部族はみんな早寝早起きだった・・・




朝日が昇る前に目を覚まし、軽く朝ごはんを食べ、それからそれぞれの役割分担の仕事を行う




食料を得るために狩りや採取に向かう者


城内外の警備や給仕などの仕事をする者


魔の森の巡回警備に行く者


集団訓練や個人訓練を行う者


大村への物資運搬警護に行くもの


また、夜警の戦士が交代制で仮眠を取るもの、


など多種に渡る





新人のオレはもちろん交代制でその仕事をこなしているのだが、オレには他の戦士に比べて仕事がひとつ多い





・・・・それは『小隊長』の仕事だ




小隊長の仕事は結構多い



上官や司令官との作戦会議や、弓小隊の戦士達の個々の状態の確認、武器や防具の整備申請や戦士達の給与の計算なんかもしている



実際は補佐で副小隊長が3名程いるので、細かい雑務は彼らに全部お願いしちゃっている





バカではない・・・・細かい仕事は苦手なのだ・・・・




今も作戦会議で司令官室に集まり、今後の魔の森に対する作戦を検討している




人員の増員がどうだの、大村との補給物資の効率化がどうだの、最近はあの辺に魔素が溜まりやすそうだとか、色々と議題は尽きない




チラリと周り見る




当然かもしれないが、16歳のオレが最年少だ




同じ他の小隊長はオレより年上のベテラン戦士達で、上官は勿論みな年上だ




通常だとこの砦に来て数年務め、そこから更に、その腕前や指揮能力が認められて始めて小隊長になる




だが、オレはこの大砦に来て直ぐに、小隊長に任命されてしまった




ある日突然、あなたの職場に社長と14歳の新人が来て、



「今日からこいつがお前らを統括する上司だ。よろしく頼むぞ」



と言われてら、どう思いますか?



はい、そうですね、そんなキツイ視線を皆から向けられます




とにかく大変だった



2年間必死で頑張ったお蔭で、最近ではそんなキツイ視線を向けてくる、小隊の戦士はいなくなったけど最初は大変だった




まぁ、そのオレを大抜擢した社長本人を目の前にいるので、何も言えないのだが




その本人はいつも通り全身を長袖長ズボンで肌を隠し、面倒臭そうに会議に参加している




均整のとれた顔つきは、面倒臭そうな顔をしても美しく、分からない者が見れば、悩ましげな薄幸の美女と勘違いするかもしれない




その面倒臭さがりの美人司令官『白猫姫』様は



今日も、会議で決まった事を皆に割り振り「後はみんなヨロシクね~」と、言い会議は終了する



眠そうにしていたので、絶対昼寝だ・・・



一見すると怠惰な指揮官だが、その割り振りや発言も適材適所




大型の魔獣狩りなどでは先頭に立ち戦意を上げるなど、やる時はやる女性なので、皆任せられた想いで必死に任務をこなすのだった





・・・・そしてオレの次の任務は




「休暇ですか?」



とオレは上司に確認する



「そうそう、お休み。君2年目だから、今年から休暇があるんだよね~。休みの間は、小隊長の仕事は他で回しておくから、気にしないでゆっくりしてきてね~」




とオレの直属上司である男は言う



『白狼の尾』・・・・オレの上司で今の弓の師匠である




見た目はのんびりしている優男風で、性格もこんな感じで適当な掴み取りのない人




だが、戦場での、その弓技は凄まじい。




こう見えてオレも弓技だけには自信があった



小さい頃から鍛錬を重ね、『流れる風』のオッサンに本格的に実践で教えてもらい、厳しいながらも効果的な実践の狩りでその技を磨いて来た




10歳になり大村城に行ってからも、毎日欠かさず鍛錬を行い結果も出してきた



『もしかしたら、オレって弓の達人かな?』



って、思っていた時もあったが、この大砦に来て、この師匠に出会いそれが慢心だったと思い知らされた




・・・・師匠はオレが引けないような複合材の長弓を軽々使いこなし、遥か遠くにある獣を何無く仕留め、頑丈な魔獣の甲殻も突き破るほどの剛力の持ち主だ




そして、平時はこんなのんびり屋だが、狩りや魔獣との戦場に出ると性格が一変する



的確に隊をまとめ、気配もなく死角に忍び寄り、包囲網を敷き、音もなく確実に獲物を仕留める




そんな腕利きの本物の狩人であり戦士だ




(いつかこんな狩人戦士になりたい)




性格はともかく、そんなオレの尊敬する上司であり、師匠から言われたのは休暇の仕事だった






大砦の周りには村がない



大村城などではその城下の村に家族など多くの住民が住む



しかし、常に魔獣の群れの猛威に晒される、この大砦は村を置かずに、本物の戦士達だけがここに駐在している




その戦士達の家族は、みな大森林に散らばるそれぞれの村に住んでいることが多い




そこで、1年に1回、3か月間の長期休暇が貰えるのだ




3か月間といっても、大砦から遠い村だと往復で1か月以上かかる者もいるので、そんなに長い休暇ではない



それでも日々戦いに明け暮れる戦士達には、1年で一番嬉しい時だ




生まれ故郷の村で家族と一緒に過ごしたり、また、大村など大きい村に想い人がいる者はそこで愛を育んだりする





「折角なんで生まれ故郷にでも帰ってあげたら。んじゃ、明日から休みで大丈夫だから、よい休日をね~」



と突然の休暇を言い渡し、師匠はその場を去る




(明日からって、これまた急だな。それにしても、一体何をしよう・・・)





行く宛もないのだが、取り敢えず旅の支度だけして出発の準備をしておく






次の日の朝になり、朝食を食べたオレは旅の荷物を持ち、出発の為に大砦の中庭に出る




持ち運び易い短弓に剣、手斧、革鎧に非常などが入った背負い袋




中庭にはオレの他にも、何十名かの同じような休暇を貰った戦士達が、城門が開くのを今か今かと待ちわびている




みな早く故郷に帰りたいのだろう




するとそこに、よく顔を知った上官2人がいた




一人は褐色の肌を露出した大柄の戦士で、その胸元のはち切れそうな大きな谷間が眩しい



もう一人はフリフリのスカートに色白の生足、上を見ると革鎧の胸の部分は少しだけ膨らんでいた




・・・・女戦士『黒豹の爪』と、研究軍師『知恵の実』ことセリーナ・ベルガーだった




二人とも旅用の背負い袋と武器や革鎧を装備していた




オレに気付いたセリナちゃんは、すぐ側まで近づいて来る



「あれあれ、魔獣喰ん、あなたも今回休暇だったんだ。偶然だね」



と上目づかいで話しかけてくる




(また、胸が当たって。セリナちゃん、ち、近いんですが・・・)



とオレはドギマギする




「おい、そういえば、『白狼の尾』の奴から聞いたが、お前今回の休暇でどこに行くか決まってないんだってな?」



と、愛用の大剣を持っている『黒爪』ちゃんが尋ねてくる




「あ、はい。オレは特に生まれ故郷とか、親といないので。いきなり休暇貰ってどうしようかと考えていました」




とオレは正直に答える



すると、二人の上官はお互いに顔を見合わせる




「おー、そうか。それならオレ達にちょっと付き合ってくれ」



と『黒爪』ちゃんがニヤリと笑い誘いかけてくる




「えーと、ちょっとって、どこまでですか?」



とオレは恐る恐る尋ねる



こんな時は嫌な予感がビンビンする




あーそうだよなー、という予感



「それはよかった。じゃあ、これからオレの故郷の山村まで一緒に行くぞ」





・・・・・こうして、オレの休暇の旅は、巻き込まれていきなりスタートしたのであった


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