47羽:二人の上官
大森林の精鋭が集う“大砦”。
その最高司令官《白猫姫》は、剣姫《獅子姫》の実姉であった。
《白猫》様は絶世の美女である。
そして“残念な美女”だ。
妹である《獅子姫》が若々しい健康美なの対して、《白猫》様は妖艶で大人のお姉さんタイプな美女である。
歳はオレより少しだけ上なはず。
だが年齢以上に大人っぽく艶やかで、身体のラインも女性らしい。
そんな《白猫》様は大の日光嫌いだ。ゆえに顔と手の部分以外は薄手の服に包まれていて、肌の露出は極端に少ない。
大森林は熱帯雨林に近い気候で薄手派が多い。そんな中では珍しい格好だ。
でも、そんな薄手の服の上からでも、《白猫》様のスタイルの良さはよく分かる。
大きく膨らんだ胸元に細くくびれた腰。更にはギュッと上がったヒップラインが……。
「ん? どうした《魔獣喰い》」
「いえ、何でもありません!」
気配を消しじろじろと見ていた視線を気が付かれてしまった。面倒くさがり屋さんで残念美女の彼女だが勘は妙に鋭い。
「んじゃ、後の細かいところは《黒豹の爪》の隊と連携してよろしく」
しまった。
いろいろ説明をしていたが《白猫》様を見ていたら、あっという間に説明が終わっていた。
「では、失礼します」
だがオレは分かったふりをして執務室を後にする。聞き直すと怒られそうだし。
◇
「おっ、《魔獣喰い》。ちょうどいいところにいたな!」
執務室を出た通路に、先ほど名があがっていた戦士《黒豹の爪》が大剣をもっていた。
よし……作戦の詳細を聞いてみよう。
「んっ、なんだ? 《白猫》様の話が理解できなかったのか、お前は」
「す、すみません。聞き逃しちゃって……」
「はっはっは!相変わらず抜けているな!」
《黒豹の爪》は豪快な笑い声をあげて、今回の任務を細かくオレに教えてくれる。その豊満な胸をオレ近づけながら。
ちなみにこの《黒豹の爪》は女戦士である。
鉄塊のような大剣を軽々と片手で背負っているので、遠目だと男の戦士だとよく勘違いされる。
だが、その開放的な胸元からは褐色に日焼けした豊満な胸が輝いていた。
やや短めの髪の毛だが目鼻立ちも整っており、十分に美しい部類に入る顔立ちだ。
大剣使いということもあり、男の戦士顔負けの筋肉隆々な身体つきで口調の男っぽい。
でも胸腰は丸みを帯びおり、性別は間違いなく女性であった。
「……という訳だ。分かったか?」
「まあ、だいたいは……」
大まか作戦としては
『大砦の奥にある“魔の森”に大規模な“魔素”が発見された。オレと《黒豹の爪》の合同部隊で浄化に向かえ』
……こんな感じだよね、《黒豹の爪》ちゃん?
「本当に相変わらずだな、お前は。でも期待しているからな、はっはっは!」
なぜか急に彼女のテンションが上がっている。
どうやらオレが何気なく言った『《黒豹の爪》ちゃん』の呼び方を気に入ったみたいだ。
白い歯を見せながら正面からオレに抱き着き、暑苦しくバンバンとオレの全身をハグしてくる。
これは彼女の出身の地方の独特の感情表現らしい。
長身のために豊満な彼女の胸の二つの柔らかい双山が、オレの顔に当たり挟まれる。
素晴らしい感触と夢の心地である。
だが大型の獣の首すら素手でへし折る彼女の怪力で、オレの背骨も折れる寸前だ。
「わ、分かりましたから……離していただければ助かります……《黒豹の爪》ちゃん……」
「おう、すまん、すまん。ついつい興奮してしまった!では、準備して出発するぞ《魔獣喰い》よ!」
豪快な笑い声と共に彼女は去ってゆく。
窒息死か背骨粉砕死の二択死因を選ぶ一歩手前で、オレはその強烈なハグから開放された。危ない、危ない。
「ふう……危なかった……」
《黒豹の爪》ちゃんは悪い人ではない。
更には《白猫》様も綺麗で色っぽい。
そう考えるとこの“大砦”での任務は楽しい毎日であった。
《獅子姫》ちゃん、そして修行のために大村に残った神官ちゃん、この二人と離れ離れになったのは本音を言えば寂しい。
でも、彼女たちも自分自身を鍛えるために、この少しの別れを選らんだのだ。弱音をはいている場合ではない。
「よし、オレも頑張りますか!」
そう自分自身にも言い聞かせ、気合いを入れ直す。
こうしてオレは“魔素”を浄化する作戦に、仲間と共に向かうのであった。




