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5羽:七歳の初陣

 異世界で森の部族に転生した“オレ”は七歳になり、初めての狩りに参加する事が許された。


 住んでいる村から感覚的に一時間以上は歩いただろうか。そろそろ今日の狩場に近付いてきたようだ。


 今回の“狩り組”は自分を含めて大人六人に子供二人の八人編成だ。オレともう一人の少年以外は村の大人狩人が脇を固めている。


 装備的に重装備の戦士が二人、大型弓の狩人が三人、軽装の斥候役が一人、そしてオレたち見習い小僧二人をいった組み合わせだ。戦士といっても皆弓に長け、また狩人たちも剣に秀でている。


 危険が多いこの森の部族では、余程の事がなければ弓剣の万能型の能力が求められおり、それに従って幼い頃から訓練と教育を受けていた。雛形テンプレ的な“魔法使い”も“僧侶”も居ない少々バランス悪い組み合わせだが、“魔法”が無いこの世界では致し方が無い。


 オレたちは“狩りの心得”を歳が近い青年たち学びながら、ひたすら歩き深い森の中を進む。いつもは採取の時だけ村近辺に出かける事が出来たが、今回の様に遠出をしたのは生まれて初めてだ。


 場所が変わると生えている植物や地形も変化し、逐一教わりながら頭に叩き込んでいく。そんな道中も自生している貴重な木の実や山菜・薬草の採取も忘れてはいけない。


 狩りは獲一日掛けても全く遭遇する事が出来ない事も多々あり、そんな時に手ぶらで村に帰らない様に採取も必要なのだ。


“当たるも八卦当たらぬも八卦”か。


 爺ちゃんっ子だったオレはついつい年寄り臭い言葉を使ってしまう。今のオレは前途明るい七歳児だ。若々しくいこう。


 道中は指導係りでもある青年狩人が色々と教えてくれる。狩りでの心構えや各種獣の危険性、現場での役割分担など、理論から実践的なものまで詳しく教えてくれる。


 物覚えの悪いオレはいつも“ゲンコツ指導”をされるのが多いが、この道中に限っては楽しく学んで行く事が出来る。実戦で実力を発揮するタイプなのかもしれない、たぶん。


 そんな和やかな雰囲気の道中だったが、狩場が近づくと徐々に緊張感が出てくる。いつの間にか隠密が得意な軽装の斥候役の大人がいなくなり獲物を探す。


 七歳になり隠密行動はオレも訓練しているが、彼の動きはまさに森の木々に巣食う忍者のよう感覚だ


 暫くして斥候役が獲物を見つけ戻りって来た。その情報を元に狩りの入念に準備を行う。オレともう一人の少年は今回あくまでも初陣で体験組なのであまり無理はさせない方針らしい。


 危険が少なく助かるが、早く大人になりたい自分としては悔しい気持ちも多分にあるの。まあ七歳なので仕方がないか。


 今回の獲物は“森鹿”の群れを狙うという事だ。


 “風下からの追い立て係”“待ち伏せして仕留める係”“周囲の警戒及び予備係”の三班に分かれ行動を起こす。


 今回オレは“周囲の警戒及び予備係”という事だ。特に危険性や大きな役割分担も無いが、いかんせん初めての狩りでその緊張感は半端ではない。


 というのも、この森の野生の獣は例え草食動物であっても危険が大きいのだ。先日見た“大猪の”様に現代の野性の動物に比べて体格が大きいのだ。その巨体から繰り出される体当たりや足蹴りなどは、屈強な大人でもそれを食らうと重症を負う危険性があるのだ。


 まだ七歳児のオレなら一撃で死の危険性もある。


(異世界に転生してまだ何もしていないのに、下手したら死んでしまうのか・・・)


 そう思うと足がガクガク震え、背中に気持ち悪い汗が流れてくる。


(よし、とりあえず、欲を出さないで無理はしないようにしよう)


 



そう心に近い、いよいよ初めての狩りが始まる。







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