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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【最期の森】の章

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189/204

157羽:憧れを超す決意



『魔獣喰い』は今の自分が置かれている状況を冷静に分析する。



《自分は瘴気が溢れ出す“魔穴”を封じ、そして仲間である五人の女性たち助け来た。だが逆に五人の仲間は何故か敵側につきこちらを“敵”として認識し敵意を向けている》


・・・そう、そんな最悪な状況だ。


彼女たちは幻術や幻覚で騙されている訳でもなく、自分たちの確かな意思で自分を“敵”として認識している。


『魔獣喰い』は改めてその現実に気付き、絶望の淵に落とされた最悪な気分になる。


(ここは一度退いて情報収集をして態勢を整えるか・・・いや、“魔穴”の広がりもこれ以上は時間が経っては手遅れになる・・・くそっ、どうすればいいんだ・・・)


援軍も期待出来ない。四人の“敵”を足止めしてもらう為に多くの仲間に道中残ってもらったからだ。仲間が“敵”を倒しここに援軍として辿り着く希望もあったが、逆に敵の手勢が増えるという最悪の状況も想定しないといけない。


時間もない・・・援軍もない・・・まさに“詰み”の状況だ




《おや、随分と静かになったけど、どうしたのかな?色々と愚策を考えているみたいだけれど“悪は必ず滅ぶ”・・・そう決まっているんだ》


“自分と同じ顔”をした男は大げさな表情でそうこちらに語り掛けてくる。


「さあ、観念するのじゃ。多勢に無勢の絶体絶命だが安心しろ。お前の相手は正々堂々、私一人で十分だ」


敵側に回ってしまった“獅子姫”はそう宣言し、ゆっくりと剣を上段に構えこちらに近づいて来る。『魔獣喰い』は知っている。この構えから繰り出される彼女の一撃は、相手に防御の構えや回避行動をさせない剣速の必殺の一撃だ。


他の女性たちも聖女エレナを先頭に“自分と同じ顔の男”を奇襲から守る陣形を組みこちらを警戒している。更には自分の後ろには漆黒の“魔穴”が深く高く広がっている・・・


まさに背水の陣


 策も何も尽きてしまった・・・





「策か・・・ああ、そうだったな・・・変な力に目覚めて勘違いしていたけど、元々オレはそんなキャラじゃなかったな・・・」


『魔獣喰い』はそう呟きながら“獅子姫”に向かい一歩足を進める。


「森の民の為に、自分の為に策を考えてくれたのは、いつも軍師のセリーナだった・・・」


手に持った銘弓を地に置き更に足を進める。遠くでこちらを警戒しているセリーナは、そんな自分の行動を奇策の何かと怪訝そうに見てくる。




「そして、自分の地位をかえりみず、王女として人間として大きく成長したのはマデレーン・・・」


矢筒も外し弓の所に一緒に置く。セリーナの隣にいるマデレーン王女はこちらの前進を警戒し結界の力を強めている。




「聖女エレナ様にはいつも支えてもらい危機一髪の時に助けてもらってばかりだし、精霊神官ちゃんはオレが訓練所の頃から憧れであり、いつも影で支えてもらっていた・・・」


大精霊祭で頂戴した加護の短剣や、幼少の頃から肌身離さず愛用していた手斧を腰帯ごと外し足元に置き更に進む。聖女エレナと精霊神官はこちらの真意を見極めようと警戒しながらこちらをジッと見ている。




「そして、獅子姫・・・ちゃん。君はオレの目標であり太陽でもあった。天真爛漫でカリスマ性あふれる君に振り回され追いかけながら、オレのこの異世界での日々は充実の毎日だった・・・」


全ての武器装備を外し『魔獣喰い』は剣を上段に構えて警戒している獅子姫のすぐ前に両手を広げ無防備に立つ。いや、ただ一つの“得物”だけを腰に残していたが、彼がこの武器を抜いて使用したのを見た者は多くはない。それ程までに彼には一番似つかわしくない武器だったのかもしれない。


「でも最後には君に勝たなくちゃいけないんだ・・そして、今度こそ君にこの剣を返すんだ・・・」


警戒する獅子姫の前で『魔獣喰い』は腰に手を置き、ひと振りの長剣をさやから音もなく抜く。刀身の刃紋は黒く怪しく光り見るものを魅了せずにはいられない。しかもその切れ味は鋭く、金属並の強度を持つ魔獣の硬皮すら易々と切り裂く業物だ。


「何故ならオレは男であり、森の戦士だからだ」


“獅子姫”と『魔獣喰い』


二人は静寂に包まれた大森林の中で剣を抜き初めて対峙するのであった。





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