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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【大森林 魔の森】の章

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104/204

76羽:騎士編スタート!?

遥か彼方の山脈まで広がる草原や畑



その真ん中を切り裂くように1本の灰色の直線が伸びている



土を浅く掘り起しその上に2層に亘り大小の石を積み上げた街道だ



遥か昔、この大陸を統一していた大皇国の時代に、気の遠くなるよう時間と奴隷の酷使によって築かれ、今なお大陸各地を横断する商隊や巡礼者などの旅人に利用されている



今は割拠された国間の珍品などの物資を運び、時には騎兵と歩兵が他国に侵略時に使われ、その街道は改修されながら長い歴史を刻んでいる




・・・そして、その街道を西に向かう隊列があった



中央には数頭の馬が引く豪華な装飾をした馬車を置き、その周辺には正装を身に纏った騎士達が馬に乗り周囲を警戒している



また、その前後にも護衛の歩兵や文官女官が付き添い、後方に食料日常品や献上品を荷物を積んだ荷馬車など見える



その物々しさ重厚さから、街道沿いの住民やすれ違う商人の間では、どこかの王国の身分の高い使者が他国を訪問する使節団ではないかと噂されていた



この群雄割拠する大陸で、各国同士が侵略し、時には停戦し同盟し合う事は日常茶飯事であり、そういった使節団も珍しいものではない



そして、その隊列も特に珍しい雰囲気は感じられなかったのである



・・・・異民族が混じっていていたとしても





オレは今、馬の上に乗っている



それも白馬の軍馬である



その毛並みは艶やかで美しく、日が当たる度に銀色に輝いていた



白馬に着ける鞍や鐙も装飾された豪華な品で、以前戦場で見たことがある物とは明らかに様子が違っている



基本的に馬に乗って移動する事は今まではなかったが、数年前から部族の戦士は馬術の訓練も受けており、オレ自身も器用に乗りこなしている



これも身体能力が高い加護のお蔭だろう



・・・・そして



そして、ですよ



オレの全身を包むのは、何とあの『金属鎧』だ



そう『金属鎧様』です



全国金属鎧愛好会の皆様ご無沙汰していました



ついにその鎧をワタクシ装備しているのです



長距離の旅仕様なので全身を覆う鎧のタイプではないが、白馬の装飾と同じくその白銀に輝く磨かれた金属の表面には、鮮やかな模様が彫ってあり、この金属鎧の美しさを一層引き立ていた



・・・・これを着ているオレの口元は朝から晩までにやけっぱなしだ




この世界に来て17年と数か月



剣と王国、騎士や英雄のいる世界に来たのに、オレのいたのはそんな文明とはかけ離れた、深い森の外れにある小さな村だった



小さい頃から毎日、水汲みや木の実拾いを手伝わされ、弓を練習して森の茂みに虫に刺されながら潜み獣を狩り、その生肉や時には虫なんかも食べて生活していた



成長し念願の戦士団に入団したものの、獣相手に狩りを日常とする部隊では革鎧や弓が基本装備



こんな煌びやか金属鎧とは一生無縁でいるのかと半ば諦めていた



更に『森の精霊』様は、武器はともかく体に身に着ける金属を嫌う



数年前までは金属鎧を密かに製造する計画を個人的にしていたが、あまりにもその精霊信仰が村に深く根付き製造すら出来なかった



まぁ、個人的に収集していた下界の金属鎧はとある秘密の場所に密かに隠し、時間を見つけては一人でこっそりそのお顔を拝見し崇拝していたが



そんな金属鎧崇拝者のオレだったが、やはり大森林の中では何が起きるか分からないので、その飾ってある騎士鎧も怖くて今まで着る事が出来なかった・・・



それでもやっぱり『金属鎧を堂々身に着ける』って夢は捨てきれないでいた




そんな時にこれだよ



やっぱり神様はいるんだね~



あっ、その神様がお呼びだ



「おい、魔じゅ・・マジウス。ここからそのヴェルネア帝国国境まではどの位かかるのだ?」



姫様がこの隊列で一番豪華な王族馬車の小窓を開け、オレを呼び聞いてくる



「はい、マデレーン姫様。あと1日もあれば国境付近の帝国側の砦に到着いたします」



オレは馬を進めながらお答えする



「うむ、そうか・・・何かあった時はよろしく頼むぞ」



「ははー!」



オレはそう返事をして礼の姿勢をとる



・・・・・オレの名前は『魔獣喰い』改め



ベール王国近衛騎士『マジウス』



今、幸せの絶頂期にいます






そんな騎士道まっしぐらなオレの姿を見て、呆れた視線を送ってくる森の部族たち



「おい、魔獣喰い。お前、なんでそんなに楽しそうなんだ?」



革鎧に短槍装備の軽装歩兵の恰好をしているが、どう見ても体格は重装歩兵な『岩の矛』改め『イワノフ』が聞いてくる



「イワノフ君、私は魔獣喰いではない。マジウス殿と言いたまえ。・・・勿論、近衛騎士として姫様のお供が出来るのは名誉この上ないのだよ。ハッハッハ」



「・・・・」



イワノフ君(仮)はオレを呆れた目で見ながら絶句している



しかし、そんな視線に負ける私ではないのだ



何しろ下界に出る事数回目にして、ようやく手に入れたこの金属鎧と誰にも束縛されない自由な時間なのだから





そういえば、何で森の部族であるオレ達がこのように変装(仮装)してベール王国の使節団に同行しているのか説明しよう



先日、大村の城から急に呼び出しがあり、オレは部下を引き連れて駆け付けた



何でも下界にある友好国であるベール王国のマデレーン王女から、緊急の文が王都大使館からの連絡鳥により届いたのだという



その文には簡単に言うと


『ベール王国と微妙な敵対関係にある、ヴェルネア帝国に友好度を高める為に使節団として行く事になった。魔獣喰いよ、それに同行しろ。byマデレーン王女』



みたいな事が書いてあった



そして、その依頼を受けオレが下界に行く事になった



・・・という簡単な話だ



一聞するとマデレーン王女ちゃんのいつものワガママにオレが付き合わせられるような話で、断ってもいいのだがオレは二つ返事で了解した



(むしろ行きたい!)



というのが本音である



何しろ使節団に同行する為には、いつもの森の異民族衣装ではなく、ベール王国の騎士や兵士の衣装に着替えて行くという事だったのだ



『騎士』ですよ、騎士



ついに騎士(仮装)になる時が来たのだ



オレ達はその後に合流場所である、下界の直轄地のザクソン宿場街で待ち合わせをした



数日するとそこにマデレーン王女御一行様が馬車で到着した



姫様御一行がここに来るのも数か月ぶりという事だったが、今回は緊迫する隣国のヴェルネア帝国に行くという事で少し物々しい



騎士や護衛の人数も前回から多くなっていた



更に皇帝に会う為に、王女をはじめ騎士達も使節団の正装で身を固めて来ていた



まぁ、前回は秘境である大森林の森の奥に行くから、そんなにオシャレは必要なかったのだろう



とにかく、その装飾された衣装にオレの心はときめいた



マデレーン王女の方でオレたち森の部族の変装用の衣装も持ってきてくれていた



下界に出たといっても金属鎧を嫌がる森の戦士達は、軽装歩兵や軽装騎兵の恰好をみな選んでいた



女の子である軍師『知恵の実』セリーナ・ベルガーちゃんや精霊神官ちゃんは王女様お付きの女官の恰好



そして、オレは勿論ベール王国近衛騎士の恰好を選ばせてもらった



これも密かにマデレーン王女への返信の文で用意をお願いしていた物で、サイズも丁度ピッタリな正装鎧だ



装着しても鏡がないので自分ではよく分からいが



「ふーん、結構似合っているじゃない。それを着ている間は私の家来なんだから頼むわよ」


と、マデレーン王女はツンツンしていたけど嬉しそうに言ってくれた




「おお、こうして見ると本当の近衛騎士の一員のようだ。どうだ、森の暮らしに飽きたら私と一緒に姫に仕えんか」



と護衛のまじめ人間近衛騎士ヘルマンにも褒められ、オレの心は天にも昇る





そんなこんなで、オレの冒険も騎士編がいよいよスタートだ



『転生したら騎士だった』と今日から日記もタイトルを変えよう



そして、今はザクソン宿場街を出発し、ベール王国とヴェルネア帝国との国境に向かい進んでいた



もうしばらく行くと帝国の領土内に入り、その先に国境を警備する帝国の砦があるという事だ



数日前に早馬で事前連絡を帝国側にしており、先方からも了解の返事も貰っていた



その砦付近で帝国側の護衛兵と合流し、一路帝都に向かいという事だ



一応交戦中の敵国の領地内を、敵兵と共に行動するのは危険ではないかとオレは心配していたが



何でも、帝国の領内で歴史ある王家の正式な使節団が盗賊や獣に襲われでもしたら、帝国の威信は地に落ちてしまう



また、帝国兵が裏切り使節団を襲い人質にしたり殺したりしても、そのような卑怯な事すれば今後は大陸中の国々からの信用を失い孤立してしまう



そういう事情もあり、歴史的に各国はプライドを持って相手の使節団を守ってくれるという



それでも、こんな豪華な馬車や献上品を沢山積んだ馬車が街道を進んでいると、大規模な野盗に襲われる事もあるのでオレ達も警戒は怠れない



マデレーン王女の乗った馬車を中心に街道を縦列に組みつつ、その行く先や周辺にも哨戒騎兵が広がり随時警戒しながら進んでいる



森の戦士からも目鼻が効く優秀な偵察斥候の戦士も貸し出ししているので、賊の奇襲に気付かないという事はないだろう



そんな訳でオレも騎士気分に浮かれていられるのだ



こうして歴史ある石畳の街道をひたすら進み、国境沿いの宿場村に一泊し、いよいよ帝国領に入る





朝早くに出発し国境代わりの小さな小川を越える



小さな橋も掛かっているが、いざとなれば徒歩や馬でも渡れる位の浅い小川だ



周辺を警戒しつつ渡河する



特に何もない



道中は騎士仮装に浮かれていたオレだが、流石にこの辺りからは真面目に警戒している



しかし、気のせいか警戒の勘が上手く働かない



まさかの金属鎧の弊害か・・・



とにかくそんな素振りは表に出さずに、部下に指示をだしながら周囲を警戒する



敵国の領土内といっても特に今までと変わりはない



前方に小さな山が見え左右には草原や畑が広がっている



国と国の境目が高い壁で囲まれている訳でもなければ、監視カメラが設置されている訳でもなく誰でも自由に行き来できるようだ



歴史的にみても、この辺の土地は以前はベール王国の領土であった時期もあり、一進一退しながらその領土の形は微妙に変化している



帝国という名前から『侵略大好き、夢は世界制覇!』みたいな感じを受けるが、この広い大陸の情勢は常に流動的になっている



迂闊に他国を占領しようと全軍をもって出陣してしまうと、空けた自国が第三国に攻められ占領されてしまうので、どこの国も迂闊には動けない時代なのだ




国同士の軍事バランスが絶妙な感じの天秤で保たれているようだ



そういった理由もあり、戦争といっても前回のように小規模なものが多く、相手の本国を刺激し過ぎないように、相手に所属する諸侯の領土を削るのがメインとなっている



前回はベール王国所属のグラニス伯爵家が、お家騒動でドタバタしていた情報を掴んでいたのか、帝国軍がグラニス伯爵領土を削に侵攻して来た



それも結局は、情報が古かったのでその侵攻時には、国境付近は我々森林部族に譲渡された後であり、結果として森の部族とグラニス伯爵の援軍に挟まれ帝国軍は撤退した事になる



オレたち森の部族は作戦通りに下界風な兵装で戦っていたので、戦った帝国としてはグラニス伯爵軍の別働隊に襲われたと思っていたに違いない



オレ達としても、あまり大陸各地にある国々と敵対してもメリットはないので、下界での戦闘を行う時は目立たず欲張らずになっている



それでも各国のスパイもザクソン宿場街に潜入しているようなので、オレ達の存在がバレるのも時間の問題だがそれは仕方がない



迎撃体制を基本にし、一度攻めてこられたら、二度と侵攻する気がなくらる位の反撃をするのが、今のところ森の部族下界直轄領の運営方針だ




使節団は国境を越えゆっくり進む



(先行偵察隊の報告だとこの辺で・・・・・あっ、いた)



丘を越えてオレ達の目の前に、横並びで騎兵と歩兵が整列しているのが見えた



赤黒い鎧や衣装に身に包んでいる



「ヴェルネア帝国東部方面軍だ・・・」



仲間の騎士の誰かが呟く



その姿は頼もしくもあり、不気味でもある



・・・・こうしてオレは敵対国の真っ只中に行く事になったのだ







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