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マタギの孫をなめんなよ!【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【大森林 魔の森】の章

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103/204

75羽:作戦・・その後

『真の魔素』の周辺を巣食う魔獣と、謎の槍使い『蒼竜王』を退けたオレ達は遂にその魔素近くまで移動した



(一体、真の魔素とはどんなモノなのか?)



しかし、そこには森の中にポカンと出現した不思議な空間が広がっていただけで、肝心の魔素はどこにも無かった



(ここに何かが出現し木々が消失した痕跡はある)



今回の作戦直後から、その場を監視していた偵察部隊によると、『真の魔素』はつい先ほど大きな輝きと共にその姿を突然消したというのだ



オレ達は警戒しつつ、精霊神官や偵察斥候部隊と共に周辺を隈なく調べるが、その気配はすっかり消え元の静かな森へと戻っていた



普通の魔素は精霊神官による『浄化』が行われまで消える事はない



むしろ、少しづつ大きく成長し、その魔の力を強めていく




では『真の魔素』はどこに消えてしまったのか?



それともどこか遠くに移動したのか?



謎は多く残る



オレ達はこの場に調査部隊を残しつつ、本拠地である『大砦』に戻るのであった





ついこの間出発したはずの大砦だったが、やはりここに帰って来るとホッとする



今は大砦の周辺も警戒しつつ、今回の作戦で負傷した者や亡くなった戦士達の対応にオレは追われていた



あの『蒼竜王』に近衛戦士が多く殺された事もあったが、魔素の周辺にいた魔獣の群れの牙や爪にも多くの戦死たちが傷つき倒れていた



小隊長であるオレは自分部下と共に、自分の小隊や他の隊の戦士した者の遺品を集め分類する



戦死者の遺族へは、大村の城経由で各村に『連絡鳥』などを使い連絡する



この遺品を家族へ送るのは当分先になるが、まずはその死の連絡をする



危険な狩りや魔獣退治を担当するこの部族は、男の方が死亡率が高い



戦死して残った妻や幼い子供は、その村全体で世話をする共同生活が基本になっている



それにより、男達は後に残された者の事を心配する事無く勇敢に戦う



遺された子供達は鍛錬を重ね、戦死した父親のように立派な大人になる事を誓う



また、未亡人となった妻も年齢によって、落ち着いて時がきたら再婚しまた新しい子を宿すのが普通である



一見白状に見えるこの風習だが、


『死んだ戦士は森の土に還り、また新しい生命として生まれ変わる』


と信じられているこの部族は『死』に対していつまでも悲しむ事もなく、直ぐに前を向き未来に進んでいるのだ



・・・・そんな、風習だが、オレはやはり仲間が多く亡くなるのはやるせない



『小隊長に配属されたばかりのオレに、小隊運用のコツを教えてくれた古参の戦士・・・』



『オレより年下だったが、その天性のセンスで将来有望とされていた名門弓一族の血を引く若弓士・・・・』



『最近、女の子が生まれた、と残念がっていたが、その手紙を嬉しそうに皆に見せびらかせていた若手の近衛戦士・・・・』



そんな遺品をまとめるだけでも、思わず作業する手が止まってしまう



近年になり、狩りや魔獣討伐で戦死率が下がったとはいっても、やはりこの大森林は危険な森なんだと実感させられた



しかし、オレも悲しんでばかりではいられない



戦死処理や怪我人対応をしつつ、部隊の再編も行わなくてはならない



まだ、『真の魔素』のその後の行方が分からないという事もあり、当分は大村や近隣の砦から援軍に来ていた戦士団に駐留してもらい、その対応をする事になった



その中から戦力の配分を検討しつつ、この大砦に今後も残ってもらう再編だ



そういえば、オレを助けてくれた同郷の『岩の矛』のヤツとその仲間もあの時の活躍を見込まれ、ここ大砦の近衛戦士団に入団することになった



反骨精神な本人はあまり納得してないと言っていたが、またあの真の魔素の槍使いに出会える可能性が高いこの砦に残る事は楽しみにしていたようだ



どうやらあの場の雰囲気ではオレが次にあの槍使いに狙われる感じらしく、何かにつけてオレと行動を共にしていた



多少口は悪い奴だが、腕は立つし何よりあの緊迫した場で、無謀とも言える勇気を持ってあの槍使いに立ち向かおうとしていた、その度胸にも他の戦士達も認めていた



そんなこんなで、あの真の魔素が消えてから数か月が経った





あれから、あの近辺や魔の森を隈なく調査・偵察していたが『真の魔素』の足取りは一向に掴めていなかった



探知や精霊占いが得意な精霊神官の話では、どうやらこの大森林から別の場所か空間に移動したのではないかという話だった




オレもその意見には密かに同感だった



気のせいかもしれないけど、あの精霊神官ちゃんに手を握って貰い、森の力(?)を分けてもらってからやけに勘がよくなったのだ



森の声が聞こえるというか、悪い感じが見えるというか、何となく先が分かるというか・・・・




漠然として自分でも不思議な感じなので、この事は誰にも言っていないけど、そういう勘がよく働く



(普段の生活や狩りには特に支障はないし、こんな不思議な事を言って不思議な子だと思われても嫌だからな・・・


機会があったら大村に帰った精霊神官ちゃんにでも聞いてみよう)



そう思いながら、オレはいつもの日常を過ごしていたのである




・・・・そういえば、あの真の魔素での戦いのあと、暫くしてある日『アノ人』が突然旅に出た



・・・・それは我らがこの大砦の総司令官『白猫姫』様だ



傷も治り、大砦での作戦後の処理や補充が終わった、ある日の事だった



「修業に出る」



と置き手紙をして出て行った



総司令官なのに思春期の学生ばりの気軽さで出ていってしまった・・・



それでも、あの槍使いとの個人的な敗戦の後、白姫ちゃんは様子がおかしかった



余程悔しかったのだろう



一人でブツブツ言いながら斧を振り回す姿も見られていた



そして、愛用の大戦斧と僅かな旅道具と共に姿を消していたのだった



その手紙には、後の事は女戦士『黒豹の爪』が他の幹部と共に、この砦の指揮を執っていくように書いてあった



実は今まででも、あの面倒臭がりの白姫ちゃんに代わりに、その幹部達がこの大砦を運営していたので、特に混乱もなく今に至る



『白猫姫様は修業を積み、強く成長して帰って来る!』



砦に残った戦士達もそう強く信じ、その士気が高いのは幸いだ



・・・普段からぐうたらな姫様が敗戦を機に本気を出して修業し、パワーアップして帰って来る



部下としては、そういった盛り上がる展開なんだろうな・・・




とにかく、総司令官が不在だがこれまで通り普段の生活と仕事の毎日だった





・・・そんなある時、大村の城から連絡がオレに来た



『至急、下界に行く準備をして城に来い』・・・という事だった



訳の分からないまま準備をし、オレは大村の城に向けて出発する



『お前と一緒にいたらまたあの槍使いに会えそうだ』と言う同郷の戦士『岩の矛』とその仲間


『行く行く!私も行く!』と無理やり着いてきた研究軍師『知恵の実』セリーナ・ベルガーちゃん



と、オレの小隊から護衛の戦士たちが同行している



大砦の部隊の再編も終わっており、黒豹の爪ちゃんをはじめ他の幹部もいるのだから

暫くは魔の森も大丈夫だろう



(それにしても一体何事だろう・・・・下界に行く準備をして来いだなんて・・・・)



オレは疑問に思いながらもひたすら森の中の道を進む



(でも、不吉な予感がする・・・・)



昔から、オレの悪い予感はよく当たる



不幸な星に生まれたオレが悪いのか、それとも上司が面倒をオレに全て割振りするのがいけないのか、とにかくのんびり生活は夢のまた夢だ




(それにして下界か・・・・今度こそ買い物や観光を満喫出来るかな・・・・)




そう思うと足取りもウキウキで軽くなる



・・・・オレは単純だ









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