73羽:【岩の矛 出陣】
11歳の頃に生まれ育ったケドの村を出た
こう見えても村では将来有望なガキだった
父親に似て同年代では体格もひと際大きく、腕っぷしも強かった
村の訓練では弓槍剣斧盾、格闘術など何をやっても一通り卒なくこなす
今では恥ずかしいが、同年代のヤツ等からは『ガキ大将』なんてあだ名で呼ばれていた事もあった
当時は無敵なオレ様にも気になるヤツがいた
見た目は地味で目立たないヤツだが、いざという時は結果を出す弓の達人
『魔獣喰い』だ
そう、何年か前に森林戦士団の訓練生でありながら魔獣を狩り、大村の大精霊祭の受勲式で一番栄誉を獲得したヤツさ
凄いだろう。オレはアイツと同郷なんだぜ
と言っても、お互い何年も会っていないから、気の抜けた所のあるアイツはオレの事なんて忘れてしまっているかもしれねぇかもな
そう、その魔獣喰いにオレは子供頃に果敢に挑んだのさ
木剣の訓練時間を使い真剣勝負を挑んだ
オレはがむしゃらに、そして本気で斬りかかっていった
当時のオレにとっては渾身の一撃だった
だが、ひらりと躱されオレはアイツに一撃でのされてしまった
今でも覚えている
意識の外からの一撃っていうのは、ああいうのを言うんだろうな
才能なのか今のオレでもアレは出来ない
負けたオレだったが、その後は清々しい気持ちになった
何故ならアイツは本当に凄いヤツだ
それを確認できただけでもオレはよかった
暫くして魔獣喰いは村を去り大村の訓練所に入団していた
そして、オレもその次の年に村の族長から声がかかった
「お前もそろそろ大村の訓練所にどうだ?」
オレは断り、お願いした
「『沼の森』の砦の訓練所に行かせてくれ」と
お前も聞いた事があるだろ
魔の森と並ぶ危険地域の『沼の森』
そこにあるクソッたれの訓練所さ
訓練所といのも名ばかりで、実際には最前線の砦で日々獣や沼の魔獣と泥塗れになりながら戦う場所さ
栄光ある『大砦』やエリートコースの『大村の城』とは違う泥臭い所だった
そこにいる戦士達も、大森林の各村で持て余された荒くれ者ばかりで、オレは大人にいつもぶん殴られて怒られていた
でも、そこでは実戦相手に苦労しなかった
獣は多く、魔獣もよく出没する
荒くれ戦士達の戦い方は実践的でオレの戦い方に性に合っていた
でも、そんなんだから死ぬ先輩や大人達も多かったさ
それでもオレは必死で食らいつきながら、そこで生き長らえてきた
数年経ち気づくと、オレもそこでは一人前の戦士として認められていた
更に数年後には戦士団の中隊長までのし上がっていた
そうだな、暮らしてみるとその沼の森での生活も悪くはない
沼地や小川で水気は多いが、土地は豊かで食料も豊富だ
春になると綺麗な花が咲く一面花畑の景色は、一度お前にも見せてやりたいな
えっ、見たくないって?
つれないヤツだな、お前も
更には近くに村も結構あって賑わいもある地域だ
・・・・そうだよ、そう茶化すな
オレの家族も今はその村の一ついる
家族と言っても嫁さんと小さいガキが一人だが
嫁さん?
そうだな、そう器量がいい訳ではないけど、何というか気の利いて落ち着く女でよ
休暇を利用して滞在した村で偶然知り合ったというか、・・・・そんな感じだ
それよりガキの方は面白いぜ
最初はこんな小さかったのに、休暇で会いに行くたびにどんどん大きくなっていって
最近ではもう一人で歩けるようになっていた
きっとオレに似て大きな体の戦士になると思う
きっとオレの親父もこんな気分だったんだろうな
まあ、そんなこんなで沼の森での生活も悪くなかった
あそこで一生過ごすのも悪くはなかった
それなのに何故家族と離れて、この『魔の森』の砦の一つに来たかって?
そりゃ、オレの力をもっと高めたかったからさ
魔素の周期もあるんだろうが、最近では『魔の森』に活発に魔獣が発生していたから、ここに来たら戦う相手に不自由はしなかったからな
・・・・何でそれなら『大砦』に行かずにこの砦に来たかって?
そりゃ決まっているだろう
あの『魔獣喰い』を追い越す為さ
アイツの同じ場所で訓練し、同じ場所で戦っていたら一生アイツには追いつけないのさ
同じ場所にいたかと思うと、気付くとどこか遠くまで先に行ってしまっているヤツなのさ
ここの砦のヤツ等は、才能がそんなに無いが気合だけは十分だ
そんな奴らと毎日魔獣を狩っていたらそりゃ、いい訓練になるってもんさ
まぁ、そんな目で見るな
お前は別格だよ
お前こそ、何でこんな小さな砦にいるのか分からない位のヤツだからな
その辺の話も今度聞かせてくれよな
何っ?自分の過去はベラベラと語りたくはない
自分だけ聞くだけ聞いといて・・・・本当にお前も変なヤツだな
まあ、いい
そろそろ出発の時間だ
その『大砦』の援軍が出るぞ
何でも『真の魔素』らしいモノが発見されたという話だ
本当かどうか分からんが腕が鳴るな
そうなったら大部隊が集結だ
もしかしたら、ヤツにも会えるかもな・・・・
ヤツといったらアイツしかいないだろう
『魔獣喰い』のヤツさ
さあ、グズグズしてないで出陣だ
行くぞ!




