5)
私は元のベッドに戻り、メリーさんが用意してくれたスープを飲んでいた。そして、黄色い花の横に出した椅子に座ってニクスさんが私を見ていた。先ほど彼は怖い笑顔を浮かべていたのにも関わらず、今はどこか言葉選びに困っているように見えたため、私は自分から話しかけることにした。
「お怪我の具合はどうですか?」
私から話しかけられたことに驚いたのか、質問の内容があまりにも今さらのことだったので驚いたのかはわからないが、彼は目を見開いて固まってしまった。そして直ぐにコホンと咳払いを一つして言った。
「おかげさまでもう何ともありませんよ。本当にありがとうございました。」
「いえ、私の力ではありません。ニクスさんの生命力が強かったのだと思います。でも、本当に良かったです。――あ…!」
「どうしました?」
今度は私が固まり、ニクスさんが驚いて尋ねた。私は町の大きな門の前で犯した自分の失態を、ここに来てようやく思い出したのだった。
「あの、町の門の前でいきなり倒れ込んでしまって…怪我をしていたニクスさんに大変ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありませんでした。」
「ああ、そのことでしたか。あなた一人を抱えることくらい、何ともなかったので気になさらないでください。あの門からこの家まではすぐでしたしね。それに…」
そこまで言うとニクスさんは言葉を切り、ふっと笑った。私が首をかしげて先を促すと、彼は続けてこう言った。
「それに…あのとき初めてあなたが年相応に見えて安心したのです。私の方が随分と年上のはずなのに、あなたのようなお嬢さんが私なんかよりずっと落ち着いておられたから。」
「そんなことないですよ。ニクスさんがいて下さったから、私は落ち着いていられたのです。それに私はお嬢さんっていう歳でもないです。もう21ですし。」
そう言って苦笑するとニクスさんはまた驚いていた。そんな彼を見て、自分はやっぱり子供に見えるのだ、大人になりきれていないのだと自嘲してしまう。そんな私に気付くこともなく、しばらくフリーズしていた彼がようやく正気に戻ると私に言った。
「これは大変失礼致しました。妙齢の女性に対しては不適切な対応をしてしまっていたと思います。深くお詫び致します。」
彼が頭を下げたので私は慌てて言った。
「そんな!私の方こそ年上の男性に対して大変失礼致しました。」
私が頭を下げると、彼は少し気まずそうに顔を上げて言った。
「いえ、あなたの態度は適切だったと思いますよ。私も…21なのですから。」
―――えーーー!?
その後、私は別のことに対して謝ることになったのである。
更新頻度は遅いと思いますが、毎週末にはできるように頑張ります!