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魔王と勇者の禁断の恋 ~異世界の悲恋譚~  作者: nekorovin2501


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序幕の第2話:仮面の祭りと禁断の舞踏

異世界エテルニア大陸の人間界、王都アルティア。年に一度の「女神の収穫祭」が、街を華やかな光で包み込んでいた。街路は色とりどりのランタンで飾られ、甘い果実の香りと焼き菓子の匂いが混じり合い、夜風に運ばれてくる。広場では楽団が優雅な調べを奏で、民衆が仮面を被って踊り明かす。仮面舞踏会――それは、身分や出自を隠し、誰もが自由に楽しめる伝統の夜。だが、エリシアにとっては、ただの息抜きではなかった。数日前、魔王の城での出会いが、彼女の心を乱していた。

エリシアは、銀色の仮面を被り、軽やかなドレスに身を包んで広場を歩いていた。黄金の髪を緩く結び、青い瞳が仮面の隙間から覗く。普段の鎧姿とは違い、まるで貴族の令嬢のような装いだ。女神の加護を受けた勇者として、王宮から祭りの警備を任されていたが、心ここにあらずだった。「あの魔王の言葉……なぜ、忘れられないの? 敵なのに、あの赤い瞳が、優しく見えたなんて……」 内面の葛藤が、胸を締めつける。復讐のために剣を握ってきたのに、今はただ、混乱だけが残っていた。

周囲では、笑い声が弾けている。子供たちが仮面の下でキャンディを頰張り、恋人たちが手を取り合って踊る。エリシアは仲間たちと合流した。勇者パーティーの一員、魔法使いの少女リリアと、戦士の男ガルドだ。リリアは花柄の仮面を被り、興奮気味に話しかけてくる。

「エリシアさん、今日は楽しもうよ! 魔族の脅威なんて、今日だけ忘れて。ほら、ガルドも踊りたくてうずうずしてるよ?」

ガルドは照れくさそうに肩をすくめた。「俺は警備がメインだ。けど、最近スパイの噂があるんだよな。魔族が人間界に潜入してるって。王宮の衛兵が、国境で怪しい影を見たらしいぜ。」

エリシアは頷きながら、心臓が早鐘のように鳴った。「スパイ……まさか、あの魔王が?」 そんな馬鹿な、と思う。でも、城での出会いが頭をよぎる。リリアがエリシアの手を引いて、広場の中心へ連れていく。

「まあいいわよ、踊りましょ! 仮面だから、誰かわからないんだし。」

音楽が盛り上がり、ワルツの調べが流れる。エリシアは仕方なく、輪の中に入った。パートナーを探す中、一人の男が視界に入った。高身長で、黒いコートを羽織り、狼のような仮面を被っている。赤みがかった瞳が、仮面の奥から彼女を捉える。男は優雅に手を差し出し、微笑んだ。

「美しいお嬢さん、一曲いかが? この夜、運命の出会いがあるかも知れませんよ。」

声に聞き覚えがあった。低く、響くような――魔王ヴォルドランの声だ! エリシアは息を飲んだが、好奇心と警戒心が混じり、つい手を握ってしまった。「まさか……ここにいるなんて。どうして?」 内面で疑問が渦巻くが、仮面のせいで正体は隠れている。男――ヴォルドランは、彼女をリードして踊り始めた。

二人は音楽に乗り、手を取り、ステップを踏む。ヴォルドランの手は温かく、意外に優しい。影の魔法で周囲の目を逸らし、二人だけの世界を作り出していた。エリシアのドレスが翻り、ランタンの光が黄金の髪を輝かせる。

「あなた、誰なの? その瞳、どこかで見た気がする……」 エリシアは探るように聞いた。心臓がどきどきする。敵なのに、この温もりが心地いい。ヴォルドランは笑みを深めた。

「私はただの旅人。闇から来た者さ。君の美しさに、魅せられたんだ。君の名は?」

「エリ……リナ。あなたは?」 エリシアは偽名を口にした。踊りながら、互いの息が近づく。甘い果実の香りが混じり、夜風が頰を撫でる。ヴォルドランの手が腰に回り、エリシアは体が熱くなるのを感じた。「これは、恋? いや、そんなはずない。敵なのに……でも、この感覚、何?」

サブプロットとして、離れたところでガルドが目を光らせていた。「あの男、怪しいな。影が濃いぜ。スパイじゃねえか?」 彼はリリアに耳打ちし、密かに近づく。だが、ヴォルドランの影魔法が巧みに二人を隠し、ガルドたちは見失ってしまう。「ちっ、消えたか。警戒を強めろ。」 緊張感が、祭りの華やかさに影を落とす。

踊りがクライマックスを迎え、音楽が最高潮に。ヴォルドランはエリシアを近くの路地へ導き、仮面を少しずらした。赤い瞳が露わになる。

「君は、エリシアだな。勇者よ。」

エリシアは仮面を外し、剣を構える構えで睨んだ。「あなたはヴォルドラン! 魔王! ここで何をしてるの? 暗殺? それとも……」

ヴォルドランは静かに首を振り、彼女の頰に触れた。「いや、君に会いたかっただけだ。あの城での会話が、忘れられなくてな。この仮面の下で、種族の壁を越えられると思った。」

エリシアの心が揺れた。敵なのに、誠実な瞳。憎しみが薄れ、代わりに好奇心と、甘い予感が芽生える。「私も……忘れられなかった。でも、これは間違いよ。あなたは魔王、私は勇者。」

ヴォルドランは悲しげに微笑み、影に溶け込むように去っていった。「また会おう、エリシア。この恋の炎、消すなよ。」

エリシアは一人残され、胸を押さえた。祭りの喧騒が遠く聞こえる中、心に禁断の種が植えつけられたのを感じた。ガルドたちが駆け寄ってくるが、エリシアはただ、微笑むしかなかった。「大丈夫、何でもないわ。」

だが、内面では嵐が吹き荒れていた。「敵なのに、心が奪われそう……この先、どうなるの?」 こうして、仮面の夜は、二人の運命をさらに絡みつかせた。

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