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魔王と勇者の禁断の恋 ~異世界の悲恋譚~  作者: nekorovin2501


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序幕の第1話:闇の玉座と光の剣

異世界エテルニア大陸。北に広がる闇の魔界は、永遠の霧に覆われ、黒い棘の生えた巨木が空を刺すようにそびえ立つ。空気は重く、硫黄の匂いが鼻を突き、遠くで魔獣の咆哮が響く。ここは魔王ヴォルドランの領土。魔族たちは彼を畏れ、崇め、時には不満を溜めながらも従う。ヴォルドラン自身は、黒い玉座に座し、赤い瞳で虚空を睨む。身長二メートルを超える巨躯、黒い翼を畳んだ背中、角が頭頂から湾曲して生える。だが、その表情には、ただの冷徹さだけではない。深い孤独が、影のようにまとわりついていた。

「陛下、また人間どもが国境を荒らしておりますぞ。奴らの勇者とやら、そろそろ本気で討ち取るべきかと……」

部下の魔族、ゴブリンのような小柄な参謀が、玉座の前に跪いて進言する。ヴォルドランはため息をつき、手を振った。

「奴らを甘く見るな。女神の加護を受けた勇者は、ただの人間ではない。……それに、戦争など、いつまで続くのだ。この大陸を血で染め続けることに、何の意味がある?」

参謀は目を丸くした。魔王がそんな弱気なことを言うなんて、珍しい。普段のヴォルドランは、冷酷な戦略家だ。影を操る魔法で敵を葬り、魔界の生態系を守るために人間界を脅かしてきた。だが、最近の彼は変わっていた。夜毎、玉座で独り、星のない空を見上げる姿が増えていた。

一方、南の人間界。王都アルティアは、光輝く白い城壁に囲まれ、青空の下で花々が咲き乱れる。街路は賑わい、人々は平和を謳歌する――表向きは。実際、王国は魔界の脅威に怯え、軍備を強化していた。そんな中、王宮の謁見の間で、勇者エリシアが膝をついていた。黄金の髪をポニーテールにまとめ、青い瞳が輝く美少女。二十歳そこそこだが、女神の加護を受けた剣士として、既に伝説級の強さを誇る。軽やかな鎧に包まれた体躯は、しなやかで力強い。

「エリシアよ、汝に命ずる。魔王ヴォルドランの首を取れ。潜入し、暗殺せよ。それが成功すれば、この戦争は終わるだろう。」

王の言葉に、エリシアは頷いた。心の中では、複雑な思いが渦巻いていた。幼い頃、魔族の襲撃で両親を失った彼女は、復讐心で剣を握ってきた。だが、戦場で見た魔族の目には、ただの悪意だけじゃなかった。人間と同じ、生きるための必死さがあった。「本当に、魔王を倒せば平和が来るの? それとも、もっと大きな闇が待ってる?」 そんな疑問を押し殺し、エリシアは準備を始めた。女神の加護で、剣に光の力を宿す。ステータスを確認する習慣で、頭に浮かぶ。

【勇者エリシア Lv.45 HP: 3200/3200 MP: 1800/1800 スキル: 光の剣撃、神聖バリア】

夜の帳が下りた魔王の城。霧が濃く、衛兵の魔族たちが巡回する中、エリシアは影に溶け込むように潜入した。女神の加護で気配を消し、城の地下通路を進む。心臓の鼓動が速くなる。「失敗したら、死ぬだけ。でも、成功すれば……」 そんな思いで、玉座室の扉をそっと開けた。

そこに、ヴォルドランがいた。一人で玉座に座し、窓から外を眺めている。エリシアは息を潜め、剣を抜いた。光の力が剣先に集まる。一撃で心臓を貫く――そう思った瞬間、ヴォルドランが振り返った。

「ふむ、意外と早いな。勇者よ。」

エリシアは凍りついた。気配を消していたはずなのに、どうして? ヴォルドランは立ち上がり、影を操ってエリシアの剣を絡め取った。彼女は慌てて後退したが、魔王の力は圧倒的。壁に押しつけられ、剣を落とす。

「くっ……どうしてわかったの!?」

ヴォルドランは微笑んだ。赤い瞳が、意外に優しく見えた。「我の影は、全てを感知する。お前のような美しい光は、闇の中で目立つものだ。」

エリシアは睨みつけた。「美しい? ふざけないで! あなたが魔王ヴォルドランね。私の両親を殺した戦争の元凶!」

ヴォルドランはため息をつき、影を解いた。「戦争の元凶か……面白いな。人間どもが魔界の資源を奪い始めたのが先だぞ。我々はただ、生きるために戦っている。」

二人は対峙したまま、言葉を交わした。エリシアは最初、憎しみだけで応じていたが、ヴォルドランの話に耳を傾けるようになった。彼の孤独、魔界の厳しい環境、人間界の貪欲さ。意外な共通点――両者とも、戦争の犠牲者だった。

「ああ、君の瞳には、正義の炎が燃えている。だが、その下に隠れた寂しさが見えるよ。」 ヴォルドランの言葉に、エリシアの心が揺れた。敵なのに、なぜか心地いい。時間が経つにつれ、緊張が解け、会話が自然になった。

「私は……エリシア。あなたみたいな魔王に、こんな話をするなんて、信じられない。」

ヴォルドランは笑った。「我もだ。だが、面白い出会いだな。」

結局、エリシアは暗殺を諦め、逃げ帰った。だが、心に残ったのは、憎しみではなく、奇妙な温もりだった。魔王の城を後にする彼女の背中を、ヴォルドランは静かに見送っていた。「あの乙女、再び会う日が来るか……」

こうして、禁断の恋の序曲が始まった。

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