第一話 解散と召喚
「俺、田舎帰るわ…。」
「えっ?」
お笑い芸人を目指し上京して、はや十数年、俺は鳴かず飛ばずのまま相方に事実上の解散を告げられる。
「ちょっとまって!この間もうちょっと頑張るって!」
「おやじが倒れた…。」
「あっ…。」
俺はその言葉に何も言えなくなる。相方の家は母親が事故で脊髄を損傷し父親が介護をしながら生活していた。そんな中でも相方の夢を応援してくれていた。
「それに彼女も付いてきてくれるって言ってくれてて……。」
「…そっか…よかったな。」
「うん…。」
暫く重い沈黙が続いた後。
「なんか、ごめん…俺もこんな形で終わるとは思ってなかった……………じゃあ。」
そう言うと元相方は、お金を置いて、いつものファミレスを後にした。
「………ハァ…どうすっかなこれから……。」
俺は座席に沈み込み、ただただ溜め息を漏らす。
俺の憧れはダチョウ倶〇部だった。誰も傷つけない笑いは無いならと、自分達が真っ先に傷つきに行くそのスタイルは幼い俺の心を何時だって勇気づけてくれた。
それなのに…。
竜ちゃん…聞いてないよォ……。ダチョウ倶〇部メンバーの突然の訃報を聞いたあの日いらい俺の心にはポッカリ穴が空いたままだ。お笑いに対しても何処か投げやりになっていた。まぁ…なるようになったって事なんだろうな…。
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「お兄さん飲み過ぎだよ!もうその辺にしときな!」
おせっかいな店主はそう言って、俺を店からつまみ出す。
「飲みたりねぇ…。」
俺は千鳥足のまま近くのコンビニで安酒を買って飲みなおす。
「チクショー!何カッコつけてんだよ!親父が心配?彼女がなんたら?結局びびって逃げ出しただけだろ!?クソが!」
そうだ相方は怖くなったのだ。今手に入る幸せと、このままの生活を続けたら手からこぼれ落ちていく幸せを前に怖気づいたのだ。
…俺は。
「クソっ!!」
ムシャクシャして近くにあった違法駐輪の自転車を蹴っ飛ばす。それとほぼ同時に足元が円形に光だす。あっという間に俺は光に包まれ目の前が真っ白になった。
気がつくと其処は玉座の間だった。
「おぉ!召喚は成功した!」
「は?」
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