第四十話 落とし穴
更に森を進むこと十分。開けた平地に出た。
「妙に何もない場所で怪しいな」
「あれじゃない?魔物が出てきてここで戦うんじゃない?」
「怖いのです!」
そう言って愛は構える。
愛の言う通りだとすると、この場所の妙に広い所が気になる。
また愛でしか倒せないような巨大な魔物でも現れるんだろうか……。
「とにかく進んでみよう!話はそれからだ!」
と、先頭に立ち進むエギーの姿が、突然ふっと消える。
「エギー!?」
愛がエギーを呼ぶ。
何が起きたんだ!?
エギーのいた場所には土煙が立っている。
そろりそろりと近づくと、エギーの進んだ地面に大きな亀裂が入っている。
「落とし穴だ!」
しまった!ここもバサバサで通らなければならない場所だったか!亀裂の奥はよく見えないが、愛は亀裂に頭を突っ込み、叫ぶ。
「エギィー!!だーいじょーぶーっ!?」
「だーいじょーぶーだー!」
返事が返ってきた!無事で良かったな。
深さが深さだけあったら死んでたかもしれないぞ。
亀裂は狭く、バサバサで通り抜けることは難しそうだ。
愛はロープを用意し、亀裂の奥に向かってロープの端を垂らす。
「登ってこれるーっ!?」
「ああ!」
気のせいだろうか、亀裂の奥からは話し声が聞こえる。エギーの独り言か?愛と俺とキュー、バサバサはロープを持ち、支える。
ロープにぐんと引っ張る力が入る。
エギーがロープを登ってきてるんだろう。
しかし、亀裂から姿を現したのは……。
「……誰?」
透けるように白い髪と肌を持った長髪の女の子が、ロープから上がってきた。
続いて、奥からエギーがロープを登ってくる。
「彼女も落とし穴に落ちたらしい。この穴の中で会ったんだ」
白い彼女はぺこりと頭をさげる。
「助けてくれて……ありがと、ございます」
女の子をよくよく見れば、耳は魚のひれのようになっており、肌には鱗がついている。
もしや、魔物か!
「マーフォーク族の……マメイです。よろしく……。食料を探してここへ来たら……落ちてしまった」
ぽつり、ぽつりとそう喋るマメイ。
「じゃあお腹空いてるんじゃない?はい、ベーグル!私のだけど、食べて食べて!」
「いいの……?」
「アイはさっきから一杯食べてるから大丈夫だぞ」
「そう……では、遠慮無く……」
マメイはベーグルをむしゃむしゃと食べ、あっという間に平らげた。
そんなマメイに声をかけるエギー。
「ありがとう。助かった……命の恩人」
マメイはエギーとアイの手をギュッと握る。
「なんてことないよ!」
「なのです!」
「俺、落ちてよかったな。そうじゃなきゃ穴の中のマメイをスルーして行くところだ」
「感謝……何か、お礼したい」
マメイは、指先に水を召喚すると、森の木に向かって飛ばす。
細く飛ぶ水に当たった木はスパッと切れ、真っ二つになった。
「魔力……私、強い。仲間にしてくれれば……役に立つ」
「仲間か、いいぞ!マメイ。大歓迎だ。俺達は魔王を倒す旅に出てるんだが、まだまだ戦力不足でな。水に強そうなマーフォーク族が仲間だと、大きな強みになる」
エギーはにこやかにマメイをパーティーにお迎えする。気のせいか、エギーを中心にハーレムができてきてないか?エギーを中心に。
「宜しくマメイ!私はアイだよ!」
「キューはバンパイアのキューなのです!」
「ん……宜しく」
照れながらアイとキューに握手するマメイ。
「貴方は……」
「るてんだ。宜しくな」
やっとこちらに気づいてくれたマメイと握手をする。こうして新たな仲間を迎えた俺達は、更に森の中を進んで行った。




