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第三話 襲撃

俺の産まれた村“タルンタルン”は、人口五十人前後のとても小さな村だ。

村の周囲には魔物が沢山うろうろしている魔王の支配域があり、たまに村に魔物が侵入してくる以外は平和な村で、村人も皆いい人で、俺は呪われている事を隠してこの地ですくすくと育った。

冒険者になると告げられたことも、両親の周囲の人間しか知らないようで、たまに家に訪れる両親の友人や親戚などが、おい、お前冒険者になるんだってなと嬉しそうに頭を撫でてくる。

引き籠りだった俺でも、そんな未来を告げられたら自分自身に期待をしてしまう。

勇者になる為に何かできる事はないだろうか?そう考えた俺は、コツコツ資金集めをする事にした。

満五歳の体に冷たい夜風が通る。

俺は民家の裏に来ていた。

勇者には民家に玄関から堂々と入り置いて屋内に置いてある宝箱の中身を堂々と持ち帰る事が許されているらしいのだが、俺はまだ五歳児だ。

それに、前世の記憶がある俺には人んちに堂々と入ってそんな立派な箱を度胸がないのでこうして夜にこっそり宝箱を開けに来たわけだ。

勇者になってから開けに来てもいいのだが、早くから少しずつ集めるにこしたことはない。

壁をよじ登ると、民家に侵入する。

廊下を抜き足差し足忍び足で通り抜ける。

一階に宝箱は、とキョロキョロ暗い部屋を見回すと、ベッドの横にキラリと光るものがあった。

あれだ!忍び足で近寄ると、宝箱を開く。


『2000バルス獲得しました』


突然大きな声が部屋の中に響いた。

宝箱が喋った!バルスってこの世界の通貨の単位だろうか、なんだか城が壊滅しそうな響きをもつ単位だ。

それよりこんな夜中にそんな音を立てたら……!


「だれ……?」


ベッドに眠っていた少女が起き上がる。

まずい!俺は慌てて2000バルスとやら袋に入ったコインをひっつかむと窓から飛び降りる。

民家から外に出て、息をつく。

ふう、快適異世界ライフ計画も楽なもんじゃないぜ。

その時。


「襲撃だー!」


誰かの大きな声が辺りに響いたかと思えば、遠くの方で幾つもの火の手がチロチロとあがる。

襲撃って、どこから!?火の手があがった方向と反対方向に逃げようとした道を空から舞い降りてきた黒い塊が塞いだ。

真っ黒なあれは、ドラゴン!


『ニーズヘッグと遭遇しました』


どこからかまた声が聞こえる。

襲撃という緊迫な状況にも関わらず眼の前に現れた黒いドラゴンに夢中で観察してしまう俺。

空を覆い尽くす程沢山いるニーズヘッグは次々と街に降り立ち口から火を吹く。

家が燃える!俺は近くにあった木の棒を手に取った。


『“木の棒N”を装備しました』


今度は木の棒が喋った!この世界はこんなナレーションが入る世界なのか?待て、それよりも眼の前のニーズヘッグを倒さないと、街が燃えている。

とりあえず、あの頑丈そうな体に一撃いれよう!

火を吹くニーズヘッグの腹の下まで走り寄ると、木の棒で腹を思い切り殴る!硬い腹に木が思い切り当たる。

しかし、腹に変化はない。

全然攻撃が通ってないじゃないか!ドラゴンが翼を広げる。

その風圧で俺はふっ飛ばされ、地面を転がった。

五歳児にはやはり無茶な動きだったか。

しかし異世界に来たとなれば普通チート能力で無双するのが鉄板だと思うのだが……。

もしかしたら、装備が悪いのかもしれない。

俺は燃える周囲を見回す。

暑い。

木の棒は沢山あるが武器になりそうなものは……。

俺は火がまわっていない小屋に入る。

重い扉を開けると、農具が並んでいた。

しめた!ここなら良い武器が手に入りそうだ。

とにかく、五歳児の俺でも扱えて、あのドラゴンにダメージを与えられる刃物刃物……。

棚の二段目に、小さな鎌があるのを見つけた!これだ!


『鎌Nを装備しました』


これでニーズヘッグを倒せるとは思えない。

しかし、少しでも気を引いて一人でも村人を救わなければ!勇者になるという予知ももらっている。

俺は使命感に駆られていた。


『ニーズヘッグと遭遇しました』


背中を向けたニーズヘッグに向かい、走り寄る俺。

翼に向けて鎌を振るう!しかし、翼はびくともしない。

腹も硬ければ羽根も硬い!少し傷ついただけでなんともないようだ。

もう一回!ニーズヘッグの正面に向かわないようにもう一度背にまわると、鎌を振るう!が、全く歯が立たない!いくら五歳とはいえ刃物がこんなに効かないとは。

もしかしたら物理防御が高いのかもしれない。

魔法なら五歳児でも扱えるが、家にあった魔導書などは読もうとする度取り上げられてしまい、見る隙がなかった為全く魔法のたぐいは使えないのだ。

それならばロープか何かであの体をしばってしまえばどうだろう?上手くいくか分からないが、もう一度小屋に向かおうとしたが、小屋に火の手があがっていた。

そんな俺の眼の前に降り立つ何匹ものニーズヘッグ。

これでは勝ち目がない!

危機的な状況に戦慄していると、背後から急に俺は持ち上げられた


「こんな所で何をしているんだ!逃げるぞ!」


村人が俺を抱えてニーズヘッグから離れる。

危機一髪、助かった!懸命に戦おうとした所で満五歳の体、大人にヒョイと担がれると、地下へと続く階段に連れていかれた。

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[気になる点] ニーズヘッグの大きさとか見た目とか。
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