第三十七話 白いイルカ
日は頭上を超え、とっくに昼を迎えていた。
俺達は手持ちのおにぎりを食べ、キューはエギーに血を貰い、次のエリア、ザブン島に向かって海を漂っていた。
海についたせいかアオサギは出現しなくなったが、代わりにスクイッド(イカ)が出現するようになった。
すっかり弱い魔物を倒すポジションは俺になってしまった。
経験値を稼ぐ為だ、しょうがない。
「島が見えてきたんじゃないか?」
「ほんとだ!ザブン島だ!」
「なのです!」
遠くの方に見えてきた島影は、恐らくザブン島なのだろう。
オールを漕いで、島にどんどん近づく。
「双眼鏡がほしいな。島についたら買うか」
「どんな魔物がいるか分からないし、気を引き締めていこ!」
島の砂浜に辿り着く。
と、さっそく砂が盛り上がり、魔物が出現した。
『ハーミットクラブと遭遇しました』
でかいヤドカリが出現した。
弱そうだ。
俺の出番だな。
俺は剣を振るうが、殻が固く、真っ二つにできない。
俺はハーミットクラブの入る穴を狙って剣を突っ込めば、やっと入るダメージ。
何度も穴の中に剣を突っ込めば、ハーミットクラブは霧散した。
『2000バルス獲得。経験値獲得』
特に何事もなくあっさり倒せた。
いい事だ。
「魔物は倒せたかルテン!」
流木を集めたエギーから声がかかる。
愛もキューもまた、いつの間にか流木を集めている。
何をしてるんだ?
「今日はここで野宿するからな。キャンプファイヤーの準備だ」
すっかりキャンプ気分だな!野宿といっても魔物が出る場所で野宿は大丈夫か?
「交代で夜中起きれば大丈夫さ」
そう言うと、ネギに火をつけ砂浜に固定するエギー。
「ルテンは食料を取ってきてくれ。ほら、釣り竿」
いつ作ったのかお手性の木の釣り竿を俺に渡すエギー。
今晩のメニューは魚か。
それはいいな。
俺は砂浜から離れ、海に突き出した岩場まで歩く。
竿の先には針と、そこらへんで取ったミミズをつけて、と。
これで魚を釣る準備は完了だ。
岩場の上を転げ落ちないように慎重に歩くと、海に向かって釣り糸を垂らす。
すぐにぐいぐい糸を引く感覚があり、思い切り竿を引き上げると、新鮮な魚が釣れた。
いい調子だ。
ここは魚が多いらしい。
それから、調子良く魚を釣っていく俺。
バサバサが俺の隣に飛んできて、魚をねだる。
やれやれ、しょうがないな。
俺は釣った魚を一つバサバサにやった。
バサバサは魚を丸呑みし、美味しそうだ。
すると、海面にゆらゆらと白く大きな影が現れた。
一体、何だ?魔物か?
ざぱーっ!
波間から現れたそれは、白いイルカだった。
人懐っこく、俺に口をパクパク開けて餌をねだっているようだ。
おいおい、俺達の分がなくなっちまわないか?そう思いながらも、白いイルカに魚をやった。
バクリと一口に飲み込むイルカ。
潮を吹き、嬉しそうに波間を一周する。
すると、背中に乗れと言わんばかりにヒレをぺちぺちさせて、俺の前に体を横たわらせた。
の、乗れと?俺はイルカになんか乗ったことないぞ。
前世ではプランクトンになって波間を漂ったことはあるが、この人間の体になってからは一度も泳いだこともない。
大丈夫か?
恐る恐る、イルカの上に跨った。
イルカは波をかき分け、泳ぎ始める。
うわわわわ!
「あっ!ルテンが泳いでるのです!」
貝を拾っていたキューが、俺の様子にいち早く気づく。
「泳いでるっていうか、乗ってる?何あれ、ボートじゃないよね。あれは……イルカ!?」
「ルテンの奴、イルカに乗ってるのか!?凄いな!」
「キューも乗りたいのですー!」
皆がイルカに乗る俺を羨ましそうに見ている。
うむ、悪くない。
と、イルカは海の中に潜る。
当然、俺も潜る訳で、慌てて息を止める。
少し潜った後、イルカの体は勢いよく海面をジャンプする。
バッシャー!
派手な水しぶきをたて、イルカと俺は海面に着地した。
てらてら光るイルカの背中にしがみつく俺。
なかなか楽しい。
いや、食料を釣らなくてはならないから楽しんでる場合じゃないのだが、イルカショーのお姉さんになった気分でなかなか良いものだ。




