第三十六話 新たな仲間を連れて
「無事に帰還!ただいまーっ!」
愛がピースサインと共にダンジョンの表に出てくる。
体は泥だらけで、それは非常に激しい戦闘だったことを物語っている。
「無事で良かった、アイ!」
「それはこっちのセリフ!無事に助けられたんだね!」
「お腹いっぱいなのです!」
エギーから血を貰ったキューはつやつやとしている。
勿論、血を吸いすぎないように俺が見張っていたが。
「さて、捕まらないうちにこの街を去るぞ。俺達は処刑する魔物を庇った罪人になっちまっているからな」
「お風呂に入るヒマないかー。ちぇーっ」
「キューのせいで申し訳ないのです!」
「気に病まなくていいよっ!私がバンパイアを全部倒したから、もうこの街に留まる理由もないしね!どう逃げる?」
「船を使おう」
俺は地図を広げる。
この街の端の方に、広くて大きな川が流れている。
「処刑場や監獄からかなり離れた位置にある大運河を船で下ろう。そうすれば都市部を通らずに魔王城までのルートを辿れる。次は海を跨いだこの島ザブン島へ向かおう」
「了解。なら追手がこないうちに急がないとな」
俺達はダンジョンを離れ、新たな仲間キューと共に川に向かう事にした。そういやバンパイア討伐のクエストを受けていたが、街にもう戻れなさそうだし、報酬は諦めるしかないな……。
街から離れれば長閑な景色が続いている。
但し、飛び出してくる魔物にだけは気をつけなければならない。
愛はまた何かむしゃむしゃと食べている。
「アイは何を食べているのですか?」
「ベーグルだよ!ダンジョンに来る前に街で買ったんだ〜」
「街へ行ったのか!よく捕まらずに済んだな」
「街が広いから指名手配情報が行き渡るのが遅くて助かったよね。うん、このベーグル特濃バター味で美味しい!キューも食べる?」
「キューはお腹いっぱいなのです。エギーにお腹一杯にしてもらったのです」
「エギー、キューにご馳走したの?」
「血をやったんだよ。キューは血しか飲まないんだ」
「え〜!ベーグルも美味しいよ!キュー。ほら食べて」
ベーグルの塊を受けとったキューは、むしゃむしゃと嚙じるが、何とも言えない表情で愛にベーグルを返す。
「どうだった?」
「カチカチなのです。キューはやっぱり、コクのある濃厚な血が大好きなのです」
「そこんとこ、やっぱり魔物なんだなキュー」
「ベーグルの美味しさが分からないなんて、勿体ない!あっと、喉が乾いたな〜。私もエギーから血を貰おうかな」
「食いしん坊のアイに血を吸われたらカリカリに干からびちまうだろ。御免だ!」
「なによそれ!またバカにしてーっ。バンパイアと戦ったからお腹が空いたんだもん!」
キューの入った俺のパーティーは賑やかになった。
というか、俺の存在忘れられてないか?俺はバサバサに餌をやる。
俺の存在を感じてくれるのはお前だけだよ、バサバサ。
賑やかになった俺のパーティーは、長く下流に続く川へと着いた。
小さな木の船を買い、緩やかな川を船に乗り、下る。
遠くに俺達がいた都市の建物がうっすら白くかすんで見える。
指名手配も、流石にここまではそう簡単に届かないようだ。
というか、指名手配されているよな?広がる長閑な風景にその事を忘れそうになる。
その時。
『アオサギに遭遇しました』
魔物のお出ましだ。
きっとレベルが低くてもいけるだろう。
サギの鋭い嘴が俺を襲う。
いてててて!
「大丈夫かルテン!」
「このくらい大丈夫だ」
背中の傷の痛みに比べれば大抵の魔物の攻撃なんて屁じゃない。
背中の傷のお陰で精神防御力が強くなったんじゃないか?俺。
そんなステータスはないか。
俺はアオサギを剣で一刀両断する。
アオサギは、霧散して消えた。
『1000バルス獲得。経験値獲得』
「川を下っているとちょくちょく魔物が現れそうだな。任せていいか?ルテン」
「ああ。俺も経験値を稼がないと。愛、今レベル何だ?」
「22だよ!」
また愛とめちゃくちゃレベル差ができてしまった。これはもう諦めるべき現象なのか?
川を下っていくうち、何度も魔物のアオサギと出会い、俺は1レベルアップした。




