第三十一話 監獄
「ただいま、バサバサ」
俺は宿場で留守番していたバサバサに餌をやると、その背中に飛び乗る。
バサバサは上昇し、大空から都市キュラを見渡す。
うむ、いい景色だ。
しかし景色を楽しんでいる場合ではない。
俺は地図を広げる。
捕らえられた愛とエギーは恐らく監獄にいるだろう。
地図で街の監獄の位置を確認する。
ここから東に位置するロッド監獄という場所かある。
街にある唯一の監獄なのでこの場所で間違いないだろう。
俺はバサバサを東の方角に進める。
暫くしたのち、無機質な建物が見えてくる。
ロッド監獄だ。
監獄の上をバサバサで滑空する。
見張りのいない、人気の無い場所を空中から調べる。
建物の裏に良さげな場所を見つけた。
「下りろ、バサバサ」
無機質な壁に囲まれた誰もいない監獄の敷地内にバサバサと共に舞い降りる。
バサバサがいるとどうしても音をたてるため、バサバサには監獄の外で待ってもらう。
さて、監獄内には見張りが沢山いるだろう。
裏口であろう扉の横にはやはり見張りがいた。
俺は物陰から様子を伺い、見張りに手を差し伸べる。
見張りが欠伸をするのに口が開く。
今だ!
「“カース!”」
見張りの舌を辛くする。
役に立たない魔法かと思っていたのが、想像以上に役に立つじゃないか。
見張りは辛くなった口を抑え、建物内に入る。
続いて後をつけるように俺も建物内に侵入した。
見張りは水で口をゆすいでいる。
後ろから首を腕で締めつける。
「ぐ……うぅ……」
見張りは気絶した。
その衣服を奪い、見張りになりきる。
これで監獄内を動きやすくなったぞ。
気絶した見張りを裏口から外の木へと縛り付ける。
見張りの様子はバサバサに見ておいてもらおう。
俺は再び建物内に侵入すると、監獄の様子を伺う。
人相の悪い奴らが檻の中から俺を見る。
冷や汗を流す俺。
あんまりじろじろ見るなよな!それはそうと、エギーと愛を探さねば。
俺は人相の悪い監獄の中の奴らに話しかける。
「今日、ここに連れてこられた新しい罪人を知らないか。黒髪の女と、緑髪の男と、シルバーの髪の少女だ」
「シルバーの少女は知らねぇが、黒髪と緑髪ならこの建物の奥に連れていかれていたぞ」
「ありがとう」
建物の奥か。
キューは一緒じゃないのか?俺は少し不安になる。
まさかバンパイアは見つかり次第瞬殺なんかじゃないだろうな。
不安に駆られながらも、俺は腕を後ろに組み、牢獄内を闊歩する。
こうしてる方が看守っぽいからな。
カツンカツンと音をたてる自分の足音にひやひやしながら、先へ進む。
ところどころに立っている見張りにあまり顔を見られないように俯き、そそくさと前を通りすぎる。
バレてないよな?
そうして、俺は監獄内の奥の敷地に侵入した。奥の方から話し声が聞こえる。
「……急いだ方がいいな。そう言う事なら……」
「……間違いないよ、バンパイアだもん」
「……看守達の話によると……」
「……それってまずいんじゃ……」
聞き覚えのある声に耳を傾け、声のする方向に歩いていく。
すると、黒髪と緑髪の人影が見えた。
見つけた!愛とエギーだ!しかし、二人の前に看守がいる。
俺は離れた場所から看守の様子を見守る。
口が開いた時がチャンスだ。
「おい、静かにしろ!」
看守が愛達にそう呼びかける。
今だ!
「“カース!”」
俺はまたもや看守の舌を辛くする魔法をかけた。
「辛っ、なんか辛いぞ。お前達、何かしたか!いや、魔法は牢の中では使えないはず、くそっ、辛い!」
堪り兼ねた看守がその場から立ち去る。
入れ違いに俺は牢に近寄る。
口を抑えた看守は、俺を見つける。
「おい、俺は少し口をゆすいでくるからこの囚人の様子を見ていてくれ!」
「了解した」
そのままダッシュでこの場を去る看守。
その隙に牢に入れられたエギーと愛の元に近づく。
あれ?やはりキューがいない。
「エギー、愛」
「ルテン!!……はっ!」
思わず大きな声が出た愛が慌てて口を塞ぐ。
小さな声で、エギーが口を開く。
「ルテンなら来てくれると信じてたぜ」
「やはり監獄にいたか。この街では魔物に加担すると捕まるらしいな」
「その事だが大変だルテン、キューが処刑される!」




