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第二十八話 北のダンジョン

「へっ!?エギー血を吸われたの!?」


翌日、目が覚めた愛にエギーは昨日の話をしたらしい。

俺は布団からむくりと起き上がり、あくびをする。

エギーのおかげでバンパイアの脅威が無くなったので、ぐっすり眠れた。

そこはエギーに感謝だ。


「腹が減っていたみたいでな。ちょっとだけ吸わせてやったんだ」


いや、死なない程度にがっつり持っていかれてたぞエギー。

エギーはアーマーを着ながら何とでもないような調子で言う。


「それなら私も起こしてくれたら良かったじゃない!エギー一人じゃ貧血になっちゃうよ!私ならいつもたっぷり食べてるし血もたっぷりあるもんね」

「いや、アイは血を渡さなくていい」


それはその通りだ。

俺は衣服に腕を通す。


「それにしても、バンパイアがいるなんてね。昨日の買い物の時に全然気づかなかったよ。ルテン君」


俺も最初に聞いた時は半信半疑だったからな。

念には念をと高い宿場を選んだのが、無駄になってしまったらしい。

まあ、結果的に皆無事で良かったが、エギーがまた来いとか言っちまってるからな。

また来るんだろうか……。


「さて、今日はクエストを請けるぞ」


身支度を整え宿場から出た俺達は、クエストの書かれた看板のある広場に来た。

他の冒険者も沢山おり、広場は混雑している。

この冒険者達も、魔王を倒しに旅に出た者たちだろうか?とりあえず村タルンタルンが元に戻ればそれでいいのと、魔王に背中の傷の事を聞ければ戦う必要すらない。

俺は、ちらりと三人の魔術師の予言を思い出す。

いかんいかん、弱気になっている。


「バンパイア三体討伐……これが一番労力の割に報酬がいいね」


昨日バンパイアと出会ったばっかりか、討伐対象になっている事に少し驚いた。

人型の魔物と戦闘か。

いくら魔物とはいえ何だか罪深く感じてしまうな。


「よし、バンパイア討伐にするか」

「いいのかエギー。もし昨日みたいなかわいいバンパイアが現れたら倒すのか?」

「昨日の子は特別だ。俺はバンパイアを倒す」


ネギを構えるエギー。

しかしスライムやハムスターでもない人型のバンパイアにそのネギは効くのか?ああでもファイアーネギは効果ありそうだな。


「場所はここから北のダンジョンか。ルテンの言う通り、度々街に出没しては人を襲うから設けられたクエストなんだろう。行ってみよう」


こうして俺達は街から北側に位置するダンジョンへ向かうことになった。






北のダンジョンは静かで寒く、地下を照らす火がちろちろと灯っている。

クエストをこなしに他の冒険者が来ている筈なのだが、まるで俺達以外誰もいないかのように地下は静かだった。


「このまま地下に降りていけばいいわけだな。準備はいいか、アイ、ルテン」

「食料と水はばっちりだよ!」

「俺も大丈夫だ」


愛は街で買った食料をリュックにぱんぱんに詰めている。

どれ程時間ががかるか分からないが、街で入手したこの北のダンジョンマップを見る限り、結構深くまで潜らなくてはいけないようだった。

扉を開き、早速ダンジョン内を進もうとした時。

いきなりばさばさばさと音がして目の前に黒い塊が現れた。


『キロプテラと遭遇しました』


うむ、コウモリか。

弱そうだ。

俺は新しく購入したロングソードを振りかぶり、キロプテラを真っ二つにする。


『1000バルス獲得。経験値獲得』


大したことない敵だからか、入手するバルスもそこまでではない。

大したことない敵といえる事に少々感動した。強くなったな、俺……!


「このダンジョンにバンパイアはいるんだよね」

「ああ、ルテンの持っているマップにはそう書いてあるらしい。どこに出るかまでは書いてないが……」

「強いのかな」

「多分強いと思うぞ。ジャイアントホワイトタイガーやアリワリアとは違い知能があるからな。どんな攻撃してくるかわからん」


静かな地下で話す二人はひそひそしていても声は響く。

魔物に居場所をすぐに悟られそうだな。

すると、前方から自分達のものではないひそひそ話がすることに俺は気づいた。

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