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第二十七話 吸血

「成る程、バンパイアか。この女の子が」


エギーは小さくなって謝る女の子の牙を見て、納得する。


「しかし十人の男を殺したバンパイアとは思えないな、こうもあっさり降伏するなんて」

「あの時はお腹が空いていたのです!誰も起きる気配もなかったので血をごっそり頂戴したのです!そして今もお腹が空いているのです!」


さらっと十人殺しの事を認めたぞ今。

ランプの明かりの下で縮こまっている少女はとてもじゃないが見逃せない。

エギーは腕を組んで少女をじっと観察している。

エギー、なかなか危なかったぞ。

一方愛はというと、ぐっすり寝ている。

十人殺しのバンパイアがこの部屋にいるとは思えない程の熟睡っぷりだ。

もっと危機感を持ってもいいと思うぞ。

熟睡なのはバサバサも同じで、こちらは鳥だから仕方ない。

ちなみに俺は密かににんにくスプレーを懐に忍ばせる。

もし飛びかかってきたらこいつで撃退だ!


「しかし今もお腹が空いているのです……バンパイアの主食は血なのです。どうかほんの少しだけ血を恵んではくれないですか!どうかお願いしますです!」


と少女が頼む先はエギーだ。

人を殺す程に血を吸う少女に血を与えるのはかなり危険な選択だぞ。

というか、俺の血を狙ってこない辺り、スプレーが効いているのか?


「よし、やろう!」

「えっ!?マジなのかエギー!十人殺してるんだぞ!」

「死なない程度に頼む。それが条件だ!そんなに腹が減っているなら持ってけ!」


エギーの思い切りはいつも危険を顧みない選択でヒヤヒヤするな、おい。

万が一もしエギーが危険な状態になったら、にんにくスプレーをお見舞いするという手があるからまあ大丈夫だろう。

エギーは腕まくりをすると、少女に腕を差し出す。


「いやぁ助かります救世主様です!名はなんといいますか!」

「エギーだ。君はなんていうんだ?」

「エギー様!私はキューといいます!では有り難く頂くとします!」


少女、いやキューは口をがぱあと開くと、光る牙。

そのままエギーの腕にかぶりつき、じゅるじゅると啜り始める。

エギーはというと、最初は痛っと目をつぶったものの、段々半目になってぼんやりしてくる。


「おい、大丈夫なのかエギー。血を吸われてるんだよな?」

「だいじょ〜ぶ、だいじょ〜ぶ!」


まるで酒に酔ってるような反応だ。

痛くはなさそうなんだが、何故男十人もを殺せたか理解できた。

痛くないどころか血を吸われると酔ってるような状態に相手を持ち込めるからだ。寝ている間にこれをやられると、何だか酔ったような気分になったままどんどん血を持ってかれて……って、めちゃくちゃ怖いじゃないか!俺は懐からにんにくスプレーを取り出すと、少女にぶっかける。


「うわあぷぐぐ!?!何するですか何するですか!!うわあああ!にんにく臭いです!臭いです!うわあああ」

「おい、寝ている人と一匹がいるんだから静かにしてくれないか」

「お前は、にんにく男です!体からにんにくの匂いがするのです!まさかにんにくの武器まで用意しているとは!」


誰がにんにく男だ!このスプレーを武器という辺り、効果は抜群なようだ。

キューはエギーから離れる。

エギーは半目で意識があるのかないのか、然し顔色が青白くなっている。噴射して正解だっただろう。


「死なない程度って言ってただろ。エギーを見ろ。この通りだ」

「俺はだいじょ〜ぶだぞ〜ルテン〜」

「はっ、顔が青くなってますです!救世主様ー!」

「気づいてなかったのか?」

「食事に夢中になっていたのです!大丈夫ですかエギー様!お許しをー!」


このテンションで十人殺したとなると末恐ろしいな。

キューに揺さぶられるエギーはやっと意識が正常に戻ってきたのか、流血する腕をタオルで縛り、止血する。


「腹いっぱいになったか?」

「とりあえず死にはしない程度に膨れたです!ありがとうございますです!エギー様!」


キューはぺこりとお辞儀をする。


「俺がスプレーを吹かないと死んでいたぞエギー」

「ありがとうルテン。でもまあ乱暴にしてやらないでくれ。腹が減っていただけなんだろ。加減の仕方を覚えれば人を殺す魔物じゃなくなるさ」


エギーは優しくキューの頭を撫でる。

キューはふわわわと声を上げ小さく縮こまる。

この少女に人を殺さないようにさせるのはいい事だ。

俺は構えていたスプレーを懐にしまった。


「今日はこれまでだ。また腹が減ったら飲みに来い」


いや、魔物を往来させるなよ!俺の心の叫びと反してキューはすっかりエギーが気に入った様子で、ぴょんぴょん跳ねながら部屋を出て行った。

PV1000超えました!いつもありがとうございます!

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