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第二十六話 バンパイア

その日、俺は宿場で一夜を過ごすことになった。

今まで獲得したバルスを少し豪快に使って10000バルスの少し豪華な宿場に泊まった。

宿場へのバンパイア侵入の話を聞いて、あまり安い宿に泊まるのはセキュリティ面で不安が残るといった理由があるからだ。


「温泉気持ちよかったね!明日の朝もう一回入っちゃおうかな!」


愛がタオルで髪を拭きながら言う。

湯上がりでほてる体を冷たいドリンクで冷ます俺。

魔王を倒す冒険の旅が、すっかり気分は修学旅行だ。

転生前の世界ならゲーセンを探していたところだが、流石にこの世界には無い。

エギーは自前の的を取り出して新しく弓ネギの使い心地を試している。

バサバサは既に顔を羽の中に埋めて眠っていた。

俺は棚に並んだ興味のある魔導書を探す。

勇者パーティーヒロイン特集、イチオシの炎魔法の使い方、冒険グルメ旅、流行に乗り遅れない最新アーマー一覧……う〜む、そうじゃなくてこう、一から始める闇魔法みたいな本が読みたいんだが、ここには無いようだ。

仕方なく、イチオシの炎魔法の使い方を手に取り、パラパラとめくる。

最近取得した線香花火の良い使い方があればいいが……無いか。

線香花火なんて取得するのは俺くらいだ、畜生め。

なんだかんだ思いつつも本に夢中になっていたら、愛とエギーは既に寝支度を済ませていた。

俺も寝るか。

エギーは既に寝息をたてている。

就寝するの早いなこいつ。


「おやすみ、ルテン君」

「ああ」


愛も布団に入る。俺も本を棚に戻し、布団の中に入る。

そうだ、にんにくスプレー……。

俺はエギーと愛を確認する。愛はまだ寝てないと思うが、二人共見てないよな?念の為だ。

俺は自分の首筋ににんにくスプレーを噴射する。

ぐええ、にんにくの濃い香りが俺の周りに充満する。

これ布団に匂いがうつったりしないだろうな。

宿場の人に迷惑になるぞ。

それに明日の朝起きた時にまでにんにく臭かったらエギーや愛につっこまれるじゃないか。

やはりつけなければ良かったかもしれん。

布団の中がにんにく臭くなりながらも、次第に瞼は落ちてきた。

睡魔が俺を襲い、うとうとしかけた頃。


ぎし……。


床が軋む音がした気がした。

気のせいだろうか。


ぎし……ぎし……。


俺は段々目が覚めてくる。

誰かが床を歩く音だ。

昼間押し売りの人が言っていたバンパイアの話を思い出す。


ぎし……ぎし……。


間違いない、誰かがこの部屋の中を歩いている。

愛か?エギーか?それとも見知らぬ第三者か。

俺は緊張で体が固まる。

さてどうする?バンパイア一人に三人じゃ大声を出して皆起こせば、三体一でこちらが優勢だ。

しかし見知らぬ第三者ならば、十人の男を皆殺しにした猛烈なバンパイアなのかもしれないのだ。


ぎし……ぎし……。


足音は次第に近くなってくる。

寝ているふりが苦しくなってくる。

足音は……俺の布団の前ではなく、エギーの寝ている場所へ向かう。


ぎし……。


熟睡しているのか、起きないエギー。

起こすか?と、悩む間もなくエギーはぱっと目を開き、起き上がる。


「誰だ!」


懐からのネギを取り出すと、ネギに火をつける。

足音の主は直ぐ様逃げようと踵を返す。

俺も直ぐ様布団から起き上がる。

布団の横に置いた剣を持ち、構える。

するとどたどたっと床を転がる音がした。

どうやら転んだらしい。

エギーは部屋の明かりをつける。


「あわわ、見つかってしまったのです!お見逃しを!」


高い声が響く。

女の子!?

床に転がったその第三者は、シルバーの髪に黒い衣服を身にまとい、その口からは牙がちらりと覗く。

まさか、この女の子がバンパイアか?


「お見逃しを!どうかお見逃しをー!」

「そうはいかない!どういう理由で寝ている俺の元へ来た!」

「ああ、エギー、多分この子は多分だが、バンパイアだ」


そういえばにんにくスプレーの事を隠すことに夢中で、バンパイアの話をエギーや愛にしてなかったな。

俺は、昼間押し売りの人から聞いたバンパイアの話をエギーにした。

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