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第二十話 待ち伏せする魔物

翌日、俺達は魔術師の家を出て東北東の方角へ向かった。

エギーの持つ方角磁石がカタカタ揺れる。

壊れないでくれよ。

占ってもらった未来の中に方角磁石が壊れるパターンもあったのを思い出し、少し不安になる俺。

暫く薄暗い木々の間を抜けていくと、木と木の間をロープをはってある場所に着いた。


「ここが立ち入り禁止区か」

「ロープがはってるだけで簡単に入れそうだね。よいしょっと」


愛が軽々とロープを乗り越える。


「何ともないよ」

「よし!俺達も行こう、ルテン、バサバサ」


エギー、俺、バサバサも、愛に続いてロープの中に入る。

すると茂みががさがさと動いた。


「誰だ!」

「人か!?」


俺とエギーが構えると、茂みの中からグルルルと猛獣の唸り声がする。

バキバキと木々を踏み倒す音がして眼の前に現れたそいつは、普通の虎よりも三倍の大きさがある白い虎だった。


『ジャイアントホワイトタイガーに遭遇しました』

「虎だ!」

「待てルテン、一匹じゃない!」


巨大な白い虎がなんと三体、茂みから出てきて俺達に牙を見せる。


「倒そう!」

「いやアイでも三体はきついだろう。一旦逃げるぞ!」


エギーは戦おうとする愛に一旦停止をかけ、脱出でその場を離れる。

ロープを抜けて来た道を逆戻りすれば重なる木々に阻まれて虎の姿は見えなくなった。


「木ですぐに相手の視界をくらます事が出来るのがいいな」

「ちょっと待って、まだ獣の声がする!」


愛が喋る俺達を手で静止する。

グルルルという獣の唸り声が直ぐ近くでする。

あのホワイトタイガーからかなり距離を置いた筈だが、まだいるのか!?

すると眼の前から三体、また巨大なホワイトタイガーが姿を現した。


『ジャイアントホワイトタイガーに遭遇しました』

「さっきのやつらと違うやつか?」

「いや、同じだろう。何だ?この虎、まるで待ち伏せするかのように現れるぞ」

「いいから逃げよう!逃げるんだよね!?」

「ああ!とにかく逃げるぞ!」


さらに俺達は森を突き進む。

こんなに逃げ惑っていたら、迷ってしまいそうだ。

しかし変だな。

魔術師が占った結果では東北東の方角の立ち入り禁止区が安全なルートだったはずだ。

それが危険なホワイトタイガーと真正面から出会うなんて、聞いてないぞ!あの占いはでたらめだったのか?それとも、このまま逃げ切れるのか?


「東北東のルートからはぐれている!今はあの魔術師を信じて、東北東の立ち入り禁止区域に再び向かうぞ!」


エギーが方位磁針を確認すると、東北東の方角へ走っていく。

するとまた獣の声がし、ジャイアントホワイトタイガーが現れた。


『ジャイアントホワイトタイガーに遭遇しました』

「まけないぞこいつら、どうなってるんだ!」

「構わない、私が戦うよ!」

「あっ!おい、エギー、愛、向こうに誰が倒れている!」


立ちはだかるホワイトタイガーの奥に、誰かが倒れていた。

飛びかかってくるホワイトタイガーをひとまず愛とエギーに任せると、俺は両者の間を素早くかけぬけ、倒れている人に向かって駆け寄った。


「大丈夫か、あのホワイトタイガーにやられたのか!?」

「ううっ……」


額から血を流す小柄な男を、ゆさぶる俺。


「ありがとうございます。私はこの森の近くの村に住む村人です。うっかり立ち入り禁止区域に入ってしまい、ホワイトタイガーに襲われた次第です」

「なるほど、あのホワイトタイガーは何だ?逃げても逃げても待ち伏せするように現れるぞ」

「そうです。実はこの森に住む魔術師が使役する魔物で、村を何度も襲われているんです」

「魔術師が!?」


それを聞くや否や、ホワイトタイガーの背後から三つの人影が現れる。魔術師達だ。


「魔術師達が使役してたの!?それなら待ち伏せするように現れるのは納得だね。私達がどっちに逃げるか、一分後を占えば簡単に待ち伏せできるもん」

「どういう事だ!占いは茶番だったのか」


エギーが珍しく声を荒げる。

魔術師は物怖じすることもなく、手に持っているマグカップで悠々と珈琲を飲む。


「占いは本当、村人の話も本当」

「我々の企みがばれる未来も知っていた」

「だから我々は姿を表した」

「手持ちのアイテムを頂戴させて頂こう」

「特に“命月草”と“爬虫類の骨”は薬になる。貴重」

「我々は未来を覆しに来た。貴方達の旅が無事に終わる未来を」


何だって!?俺達は戦慄する。

どうやら占いは本当に当たっているようだが、まさか魔術師達がそんな盗賊のような真似をしているなんて、予想外だ!

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