第十八話 スライム救護
平たく伸びる草原をひたすら歩く俺、エギー、愛。
気がつけば愛はまた何か食べている。
パンだ。
エギーもそれに気づき、また俺の前で二人が喋り始める。
しかし今回の俺の隣には巨鳥のバサバサがいる。寂しくなんか……寂しくなんかないぞ!
「また何か食ってるのかアイ」
「盗賊に食料も貰ったよ!ほら!パンとミルク!このパンはバターが染み込ませてあって美味しいんだ」
「ほーん。どれ、俺も一口……固いな!」
「えっ、そう?」
愛は固いパンを歯でむしり取りもぐもぐと食べている。
「歯茎も強いんだなアイ。くるみ割り人形になれるんじゃないか?」
「そんなものにならないよ!」
「だって固いぞこのパン。中身はふわふわだが……」
「それが美味しいんじゃない!ほら、チョコレートのもあるよ!」
「俺はもういい、むぐぐぐぐぐっ!」
愛にパンを無理矢理口に入れられるエギー。
それはそうとお二人さん、もうすぐホロホロ森に着きますよ。
バサバサは、愛からパンを貰って嬉しそうだ。
俺は地図とコンパスを確認する。
俺達の歩む先には、茂った小高い木々が見えてきた。
愛が、残りのパンの欠片を口に放り込み飲み込むと、早速森の入口へと向かって走る。
エギーも俺もバサバサも後に続く。
「森は薄暗いな、明かりがいるか」
昼なのに薄暗い森の入口で、エギーが手持ちのバッグからランプを取り出し、明かりを灯す。
先に進めば、茂った木々があっと言う間に俺達を取り囲んだ。
森の鳥の鳴き声が響き渡る。
こいつは迷ったら厄介そうだな。
深く茂る草を掻き分け、前に進む。
すると、がさがさがさと音がして茂みから何かが出てきた。
『スライムと遭遇しました』
スライム!漸く魔物っぽいやつのお出ましだ。
あくまで前世のゲームの記憶だが、スライムは弱い魔物の筈だ。
愛とエギーが戦闘態勢を取っているが、ここは俺が戦わせて頂く。
なぜなら俺はまだレベル1なのだ!二人を掻き分け、バサバサと共に前に出る俺。
スライムの攻撃に備え暫く戦闘態勢を取っていた俺だが、いつまで経ってもスライムに動きは無く、何もしてこない。
「どうしたんだ?あのスライム。死んでいるのか?」
「さっき茂みから出てきたじゃない。生きてるよ」
「でも何もしてこないぞ」
「変だな……ん?」
耳をすます。スライムからか細い声が聞こえる。
「タス…ケテ……タス…ケテ……」
助けてだと?このスライム、何故か助けを求めている。
「俺達はお前を倒しに来たんだぞ!それっ!」
俺がスライムに剣を振るうと、スパッと切れたスライムの塊がゴロンと落ちる。
まさか……このスライム、固まっている!?
「入れ物もなく長時間外に出てたら固まるよね」
愛がスライムを哀れんだ目で見つめる。
「ウッカリ草原ニデタラ乾燥シテ固マッタ……タスケテ」
草原に出たぐらいで固まるなよ魔物だろ!しょうがない、助けてやるか。
スライムを頭からつかむと、エギーの食料袋に入った水を体にかけ、これでもかというくらい揉んでやる。
少し柔らかくなったら、さらに水を付け足す。
約一時間後、たぷたぷの体を持ったスライムが完成した。
「アリガトウ……アリガトウ……」
スライムは喜んで森の中に……待て待て!俺と戦って経験値を寄越せ!レベル1なのを何とかしなきゃいけないんだ!俺は去りかけたスライムをぷるんと掴む。
「経験値が欲しいんだ!俺と戦え!」
「そんなに戦いたいのか。戦闘狂みたいだなルテン」
誰が戦闘狂だ!レベル1だ!
「せっかくかちかちの体がぷるんぷるんになったんだし、見逃してあげようよ」
愛の言うことはもっともだ。
ぐぬぬ、貴重な経験値……!
「オ礼ニ、魔術師ノ家ヲ教エルヨ」
「何っ、本当か!」
「コッチダヨ」
スライムはぷるぷると矢印の形に体を変化させ、俺達を誘導してくれる。
優しい魔物だ。
「魔物に道案内されるとはな。いい魔物もいるもんだ」
「これで今日の泊まる先は心配いらないね」
二人は案内してくれるスライムについていく。
まあ経験値はいいか、他にもスライムとエンカウントするだろうし。
するよな?バサバサが二人の後を追う。
俺も、スライムの後を追うエギーと愛の後を追った。




