第十六話 イビルフラワーの蔦
俺とエギーはまず愛を巨鳥に乗せた。
「バサバサ、飛べ!」
バサバサは羽ばたくと空に舞い上がる。
愛はこれでいいだろう。
問題は俺達だ。
イビルフラワーが皆一斉に蔦をのばしてきて、俺達をがんじがらめにしようとする。
俺は剣でその蔦を切り落とす。
エギーはネギで蔦を切ろうとするが勿論できるはずもなく、エギーの体に絡まる蔦も俺は切り落とす。
武器が剣だったのが不幸中の幸いだが、伸びてくる蔦の数が多く囚われるのも時間の問題だった。
「アイは大丈夫かな?解毒剤みたいなものがいるんじゃないか。あの花からドロップできればいいんだが」
エギーはこの期に及んでまだ愛の心配をしている。
頭にがんじがらめに絡まる蔦を俺は切り落としてやる。
足はもう二人共身動きが取れない程蔦が絡まっていた。
「盗賊の巨鳥だ。盗賊達の元に戻れば何とかしてくれるかもしれない。……心配なんだな」
「ルテンだってそうだろ?俺は……幼馴染みだからな」
「俺だって幼馴染みだ。それに……引き籠りの俺に気軽に絡んでくれて、メールもくれて、たまに食い物もくれた」
「なに?引き籠り?そんなにアイと接点あったのか?ルテン」
「それは…………」
前世での話だがな。
そう言おうとした矢先に、足の蔦が飛んできたナイフで千切れた。
このナイフには見覚えがある。
「ナイフを投げろ!あのモンスターフラワーから二人を救い出せ!」
盗賊のボスが声を張り上げる。
何人もの盗賊がナイフを雨のように投げ、イビルフラワーにダメージを与え、衰弱させる!
「サバナ!」
「ルテンの知り合いか、恩にきるぜ!」
「奴らは盗賊だ。それにしてもなぜ……!」
「こいつが呼んだんだ。鳴いてたろ」
何匹もの舞い降りた巨鳥の中に、愛を乗せたバサバサがぴいいと鳴く。
愛は、盗賊達からヒール手当を受け、むくりと起き上がった。
「私達ではこの魔物達を倒せない!三人を助けたら一旦引くぞ!」
「いいや、大丈夫だよ!」
病み上がりにも関わらず、復活した愛が構える。
愛の体がオーラに包まれる。まさか!
「ぐわああああああ」
「どうしたルテン!」
サバナが俺の悲鳴に驚く。
愛は、イビルフラワーに花粉を出す暇を与えないスピードで倒していく。
俺のカースで怯んでいたポイズンフロッグも、瞬く間に倒していく。
花に向かって突進し、花びらを掴み振り回し、巨大な蛙を次々と足蹴にして霧散させてゆく。
「すげぇ強さだ、あの女!」
「一体何者だ!?」
盗賊達がざわめく。
俺は痛みで湿原の地に転がり悶絶する。
エギーは無双状態の愛を見て歓声を上げた。
『25000バルス獲得。経験値獲得。“毒の花弁”“命月草”ドロップしました。4レベルアップしました。スキル“痺れ落とし”を覚えました』
はたまたレベルアップする愛。
それよりも、やはりこの花が“命月草”を落とす魔物だったらしい。
愛が自信満々な表情で“命月草”を持ってこちらに手を振る。
「げほ、愛、彼女がサバナだ。盗賊のボスだ」
俺はズキズキする背中の痛みの残り香に耐えながら盗賊のボスを愛に紹介する。
「はじめまして、アイです。これが必要なんですよね」
愛が“命月草”をサバナに手渡す。
やはり愛がいて良かった。あのイビルフラワーを俺やエギーで一体一体倒していってたらとても手に入らなかったかもしれない。
というかそれ以前に、大群に囲まれて盗賊達が来てくれなければ詰みそうだったがな!全く……。
「ああ、これだ。ありがとう……アイ、ルテン、えっと……」
「ネギーだ」
「違う!エギーだ!」
盗賊達にがんじがらめにされていた蔦を切り落としてもらいながらエギーが俺の言葉を訂正する。
サバナはエギーの顔を見てハッとした表情になると、顔を赤らめる。
「病気の母親がいるんだろ。これで元気になるぜ」
「あ、ああ……」
サバナはエギーに声をかけられしどろもどろになると、俺の隣に逃げるように駆け込む。
そしてつんつんと俺の肩をつつくと、
「素敵な奴だ。好みの女とか知らないか?」
と聞きに来る。
知らねーよ!こいつはいつも愛とイチャイチャしてるぞ!というか、欲張りセットすぎるだろエギー。
主人公かお前は!
「良かったですね!ボス!」
「ありがとうアイさん!」
「そのネギ食べられるのか?」
「食べられるぜ」
宴となりかけたその場を、我に返ったサバナが静止する。
「お、おい!てめぇら、ここでの宴はまだ早い!見ろ、沢山の魔物がうろうろしている!アジトに戻って、宴はそれからだ!」
「はいボス!」
「ルテン、エギー、愛!お前達も宴に来い!」
沢山の巨鳥達に乗って盗賊達は皆サバナの後に続き、退避する。
俺とエギー、愛もまたサバナの宴に呼ばれることになった。




