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第十三話 宴

洞窟の中にいると時間が分からなくなるが、恐らく夜だろう。

盗賊達全員が集まり、夕食を食べ始めた。

両手が縛られてなければまた“カース”で夕食を辛くしてやるのだが、どうやら手が使えないと魔法も使えないようだ。

盗賊達はカップになみなみと酒をつぎ、焼いた肉を次々と口に放り込む。

陽気に肩を組んで歌い始める者もいれば、机に突っ伏して寝る者、捕まった俺に絡みに来る者と様々だ。


「こいつの勇者パーティーは見つかったかー?」

「まだです。まぁ向こうもこいつを探してるでしょうからすぐに見つかりますよ」

「違いない。ギャハハ。手持ちのもの全部かっさらってやるぜ」

「強そうな女がいたんだってな。俺達の奴隷にできないか?」

「こいつの身柄と引き換えにそれもいいなぁ!」


好き勝手な事を言う盗賊達。

愛達は俺を探しているだろうか、いや、捕まるぐらいなら逃げてほしい。

しかしエギーの性格を考えると俺を探してそうだな。

これ以上の足手まといはもう御免なんだが……。


「よう!てめぇはどこの街出身だ?」


酒臭い息を浴びせてくる盗賊。

黙っていてもしょうがない、こいつらと話してみよう。


「タルンタルンだ」

「タルンタルン!ボスと同じ村の出身じゃないすか。ね、ボス!」


先程会った盗賊のボスと呼ばれた人がこちらに近寄る。

鋭い目つきをした女性だ。

その目をこちらに向ける。


「私は今は草原になっちまったこのタルンタルンの村に住んでいた。まだ魔物の侵略を受ける前だ。今はタルンタルンの村もすっかり小さくなっちまってるらしいな」

「小さくなるどころか、陥落しましたよ」


ボスと呼ばれた女性がその言葉を聞いて目を見張る。

他の盗賊達もええっと声をあげた。


「陥落って何だ。魔物に攻め込まれたのか」

「ああ、そうだ」

「マジすか!じゃあ何すか、村人は全員死んじまったのか!?」

「ボスの母親はどうなるんだ!?」


途端にざわめき始める盗賊達。

ボスの母親?気になるワードが飛び出してきた。

どうやらこの盗賊共はタルンタルンの村の今の様子を全く知らないらしい。

俺は取引を持ちかける事にした。


「俺達のパーティーを見逃してくれたら、詳しく話してやってもいいぞ」

「こいつ、ボスに向かって生意気な!」

「減らず口を叩くんじゃねぇ!」

「待て」


ボスが周囲の盗賊に静止をかける。

そして、重い口をゆっくり開いた。


「同じタルンタルン出身の馴染みだ。私に情報を与えたらひとまずお前を逃してやろう」


話の分かるボスだ。

よしよし。何でも聞け。


「私の母親は小さくなったタルンタルンの村に住んでいた筈だが、今は無事か。細身で、地味な女性だ」


ちょっと待て、こいつの母親の顔なんて知らないぞ。

しかし答えなければ逃してもらえないし……。

そう言えば、村長っぽい人が村人は全員無事だと言っていたな。

なら母親も無事なんじゃないだろうか。


「村人は全員無事だ。恐らく母親も無事だろう。村人は今は全員タルンタルンの地下にある洞窟の中で暮らしている」


俺がそう言うと、盗賊達はざわつく。

ボスは、さらに重々しく言葉を繋げる。


「私の母親は病気だ。体が弱く、常に薬を必要とするんだ。その薬が“爬虫類の骨”を使ってできる。だから手っ取り早く薬を調達するのに道行く勇者パーティーを狙い、“爬虫類の骨”を集めている」

「そこまで話していいんすか、ボス!」


ボスは淡々と言葉を繋げる。

そうだったのか!俺は面食らった。

確かにアリワリアを倒すよりは道行く勇者パーティーの懐を狙った方が効率良く“爬虫類の骨”を集められる。

そんな深刻な理由がこの盗賊にあったとは……。


「でも私達は“爬虫類の骨”を持っていない」

「そうか。ならお前の仲間で強いやつはいるか」


それは俺だ、なんて答えられたらカッコがつくのだが虚しいかな、思い浮かんだのは愛だ。

ああ俺だって言いたい。


「いるな」

「ならばこの“カラカラ草原”から北に位置する“シットリ湿原”で手に入ると聞く“命月草”を探してくれないか。そいつは母親の病気に最も効く薬だ。いや、どんな病気にも効く薬だと聞いている。私達のレベルじゃそこに向かうのは危険でな。もし取って来てくれれば、お前達全員見逃してやろう」


この盗賊のレベルで危険な場所ならば俺や愛、エギーでも危険だろう。

この条件を呑まなければまた囚われの身に逆戻りだ。

それに俺だけなら兎も角、愛とエギーも巻き込むのだ。

いや、病気の母親の事を知れば、愛もそうだが、エギーなら二つ返事でイエスだろう。


「わかった。シットリ湿原に向かおう」

「本当か!恩にきるぜ!」

「よかったすね!ボス!」


盗賊達が歓喜の声をあげる。

ボスは、手もとから派手な装飾のでかいナイフを取り出すと、縛っていた俺の両手両足のロープを切った。


「私の名前はサバナだ。宜しくな」


サバナは手を差し伸べてくる。

俺はその手を取り、握手を交わした。

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