第十一話 攫われ主人公
ピーチチチと、鳥の声が聞こえる。
愛とエギーがハムスターと戦闘している中、俺は原っぱに寝転がり戦闘をサボっていた。
レベルを上げるには戦闘に参加した方が勿論良いのだが、愛は強いしエギーは悪いやつじゃないんだがエギーと愛の二人の世界だしで、俺がいなくても別にいいんじゃないかという気がする。
実際、アリワリアの戦闘ではいくらエギーの無茶振りとはいえ俺が足を引っ張り愛を危険な目に合わせてしまった。
遠くに鳥が一羽飛んでいるのをぼんやり見つめながら、俺は睡魔に襲われてウトウトする。
もう一度転生しちゃおっかな……何度も転生してたら人間になるだろうし……あーでもまた虫になったら食われなくちゃいけないのは……でもこの世界の弱っちい俺は一体……。
……。
遠くに飛んでいた鳥が大きくなってくる。
鳥に転生した時は良かったなぁ……あの自由に大空を舞う感じはたまらなかったな……。
鳥は段々大きくなる。
それにしては大きい鳥だな……遠くにいるから小さく見えるだけで、近寄って見ると意外とでかいんだよな……いやでかいなあの鳥。
ちょっとでかすぎないか?どんどん大きくなる黒い鳥は体にロープのようなものをつけて固定されており、上に人のようなものが乗っている。
人より大きいのかあの鳥?それに何だか俺の方に向かってきてないか!?
飛び起きるも時すでに遅し、巨鳥が眼の前に迫る。
その風圧に圧倒されながら接近した鳥は足で俺の胴体を掴むと、宙に舞い上がる。
「!ルテン!」
エギーが鳥に掴まれ宙に浮いた俺に気づき、ネギを放つ。
鳥に向かって一直線に飛ぶネギは鳥に届く前に失速し、下に落下した。
「ルテン君!」
愛が気づいた頃には俺は鳥と共に大空に吸い込まれていった。
下手に動くと落ちるし、ずっとこの足が俺を掴んでいる保証はない。
待て待て、転生したいとはちょっと考えたが死に方は自分で選びたいぞ。
「大人しくしてないと落ちるぜ」
鳥の上から声が降ってきた。
成る程、俺は拉致されたのだ。
巨鳥の餌になった気分だ。
あの人のいる場所を乗っ取れないかと考えたが、巨鳥の足は頑丈でばたばたしようがない。
仕方なく俺は捕まったまま、遠くに小さく見えるエギーと愛を眺めていた。
「連れてきました。ここ最近カラカラの草原を歩いていた勇者パーティーの一人です」
意図せぬ巨鳥とのフライウェイの後、巨鳥は地下にある小さな基地に辿り着いた。
俺は手足をロープで縛られると、薄暗い部屋に放り込まれた。
隣の部屋から聞こえてくる声に、壁に耳を当て盗み聞きをする。
「女の方じゃないのか」
「女は強そうなので止めました」
「まあいい。あいつと引き換えにあの勇者共からバルスと“爬虫類の骨”頂くとするか」
しまったな。アリワリアの件に夢中になって、商人の女性が話していた盗賊の存在をすっかり忘れていた。
レベルの低い勇者パーティーを狙ってバルスとレアアイテムを奪う盗賊っぽい奴らが、この辺を牛耳っていたのだ。
というか普通この攫われポジションは愛だろ!愛が攫われて俺とエギーが助けに行くのが王道だろ!何で俺が攫われてんだ!
「それですが、あの勇者パーティーは“爬虫類の骨”を持ってないようです」
「フン……弱小パーティーめ。まあいい。他の勇者共からかっぱらった分はまだそれなりにある。慌てずゆっくり集めるとするか」
“爬虫類の骨”……。
まだ俺達が手に入れたこともないアイテムだ。
というか、戦闘自体を余りしていない。
爬虫類というとあのアリワリアからドロップするアイテムだろうか。
俺達と戦闘した時は落とさなかったらしい。
ガチャリという扉の閉まる音がした後、声は聞こえなくなった。
恐らく今居た二人が部屋を出て行ったのだろう。
俺は考える。ここが盗賊の基地なら、“爬虫類の骨”は何処かにしまっているはずだ。
ここから脱出するのは勿論、それだけでなく、勇者達からかっぱらったというレアアイテムもあらかた盗ってやろうと俺は企む。
上手くいけば、二人の元に戻った時のいいお土産になるだろう。




