第十話 痛む呪いの傷
「愛!」
「アイ!」
俺とエギーはアリワリアの体によじ登り、顎を持って口を開かせようとするが、頭を左右に振られ、地面に叩きつけられる。
くそっ、愛が!
すると。
アリワリアの口が発光する。
「なんだ、口が光って……」
「ビームでも出るのか?」
「お、おい、あれ……」
「愛!」
アリワリアの口が少しずつ開く。
紫色に光っていたのはアリワリアの口内に収まった愛だった。
ぐぎぎと歯を持ち上げ、閉まった口が開く。
「やああーーー!!」
愛の体が閃光を放つ。
アリワリアの上顎を掴んだ愛はそのまま体を捻り、アリワリアの体を浮かせると、地面に叩きつけた。
地面に叩きつけられたアリワリアは負けじと体を起こす。
アリワリアの足から開放された俺だが……。
「ぐわあああああああ」
地面をのたうち回る俺をぽかんと眺めるエギー。
背中が!背中が焼けるように熱い!痛い!そうだ、傷だ!背中の傷が痛みを発しているのだ!
「ルテン君!だ、大丈夫?」
愛は攻撃を止めると、痛みが和らいだ。
こちらに駆け寄ろうとするのを制止する。
愛から溢れる力は、この傷に関係しているようだ!
「俺の……ことは……気にせず、行けっ……!」
「わかった!」
愛は再び力を溢れさせる。
再び全身が紫色のオーラで覆われる愛。
それをぽかんと見つめるエギー。
再び背中の痛みに悶絶する俺。
「はあああああっ」
「ぐあああああっ」
俺の唸り声と愛の声が重なる。
愛は力を溜め、アリワリアに渾身の一撃を放つ!
「ギャアアアアアア」
さらに続けて攻撃を、何度も喰らわす。
まともに愛の攻撃を数度食らったアリワリアが体制を崩し、横倒しに転がり、黒色に光る粒子となって霧散する。
愛が、力を抜けたようにその場に座り込むと、俺の背中の痛みが消えた。
た、助かった。
エギーが愛の元に駆け寄る。
『5000バルス獲得。経験値獲得。6レベルアップしました。スキル“チャージ”を覚えました。スキル“ヒーリングM”を覚えました』
「レベル8か、アイ。凄い力だったぞ。ルテンが何故か悶絶していたが、これは一体……」
「エギー、酷い怪我!ルテン君も!」
愛は、早速覚えたヒーリングを俺とエギーにかけてくれる。
愛から不思議な力が発生したこともそうだが、俺の背中の傷も痛んだ。
これは一体どういう事だろう。
因みに、エギーにも愛にも、背中の傷の事は話していない。
俺は、一先ず二人に傷の話をすることにした。
「愛、エギー、今まで話した事がなかったんだが……俺は実は誰かに呪われていると魔術師に告げられているんだ」
「呪われている?」
俺は服を脱いで背中を二人に見せる。
傷を見て、二人がごくりと唾をのんだのが分かった。
俺は説明する。
「背中に傷が……縦に一本横に十九本。魔術師は魔王の仕業じゃないかと言っていたから、俺は魔王に会ってどうして呪いをかけたのか聞きに行くためにも勇者になったんだ」
呪われている事を話しても、二人は俺から距離を置くことなく、互いに顔を見合わせた。
「そうだったのかルテン。そして、愛の突然力が溢れた時にその傷が」
「傷んだ。これってどういう事だろ。ルテン君の本来持つ呪いの力が、私に譲渡された、とか?」
いや、それにしては体力や魔力をもっていかれたという感じがしない。
愛が力を発揮した時、ただただ傷が物凄く痛んだだけだ。
「アイが力を発動した時に共鳴したのか?」
「そうだとしたら、さっきの愛のみなぎる力は魔王と同じものか」
「私、魔王のことなんて全然知らないよ。会ったこともないし、力を与えられる理由なんてないよ」
「魔王に直接会って聞くしかないな。しかし俺達は助かったぜ、魔王にこの件だけは感謝しないとな」
愛には魔王の力が譲渡されており、俺には魔王の呪いがかけられている。
理由は分からないがそれはともかく、愛が強烈な力を発揮する事はとても嬉しい事だ。
が、何で俺の背中の傷も痛むかなぁ。
俺も力が抜けてその場に座り込んだ。
愛が無双している間、傷の痛みに悶絶して転がってるなんて最高にカッコ悪いじゃないか。
アリワリアを倒した俺達は、商人の店に戻る事にした。
意気揚々と戻ってきた俺達に、商人の娘がおかえりなさいと笑顔で紅茶を淹れてくれた。
「クエストクリアです。アリワリアを倒したのですか?凄いですね」
「愛が倒したんだ」
エギーは、まるで自分の成果のように自慢げに言う。
「アリワリアは強い勇者でも手こずる曲者ですよ。さぞお疲れでしょう、ゆっくり休んていってくださいね。ああ、こちらが報酬になります」
20000バルス回復薬L三つ、アイテム“体力の書”が机の上に並べられる。愛が感嘆の声をあげた。
「これだけバルスがあれば新しいアーマーも買い放題だよ!エギーが無茶なクエストを受けたおかげだね」
「いや、アイが覚醒してくれたおかげだろ」
相変わらずイチャイチャする二人を前に、未だにじんじんする背中の傷に疲れ果てた俺は、机の上に突っ伏した。




