遠くてもそばにいる
今後シリーズ化予定の作品を30分チャレンジ短編として書いてみました。
主人公の夜勤バイト明けの一コマです。
「ふぅ…まぁ今日もこんなものかな」
夜勤アルバイトを終え、裏手で着替えを終えた僕はため息混じりにそう呟いた。
丸の内にあるコンビニの夜勤それが僕の仕事だ。
なれなかった頃は、慣れない環境に疲れを感じていたがこの頃は業務にも慣れ今ではその疲れすら懐かしく感じていた。
屈伸から始まる軽めの運動を終えたあと、すっと伸びをして背骨についていた疲労感を逃す。リラックスした脳に時計の秒針の音がゆっくりと時間を刻む音が響く。
朝の勤務の方々に業務伝言を残し、毎夜勤の自分のご褒美としてコーヒーを買って店を後にする。
冬場の夜は長いもので、空はまだ早朝という区分に値する時間のはずなのに暗かった。
「寒いな」
寒空にコーヒーの湯気と無意識に吐く息が溶けていく帰り道は僕の足音だけがなかなか溶けずに不気味に残る。
コーヒを一口そっと飲む。
始めはのどを焼くようなコクを含んだその異物は次第に体にじんわりと心地のいい暖かさを与え、自然と歩調も滑らかに変わっていく。
熱を帯びた口内から発せられる白い息が先程より長く寒空に留まる。
マンションに着き、空が赤く怪しく色づき始め遅めの朝日の気配を背負って玄関をそっと開ける。くらい室内に明かりを灯し、手洗いなどの処理を済ませ、椅子に腰掛ける。
仕事が終わった後とは違う安堵感が、全身の緊張を放出し、僕はまたコーヒーを一口飲んだ。
二度目のその温もりは今度は抜け切った疲れに堕落する体に喝をいれる。
「あと2日でまた会えるよコウセイ」
スマホの画面の日付をみて、明日にくる25日とその次の日に彼氏との約束期待を膨らませながら、僕は朝日を背にお風呂場へと向かった。
次に会う時は一緒にピザを作って食べるのなんてのはどうだろうとデートプランを考える朝は心の芯にまで温もりを与えてくれた。
いかがだったでしょうか!今後シリーズ化予定のお話ですのでぜひよろしくお願いいたします。