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猟犬になる日生満月 98

火曜日は急遽、お休みしてしまい、申し訳ございませんでした。再開です!


「一週間ほど前、県警の捜査一課から打診があったのよ。

 連続爆破殺人の案件が、ウチの管轄の可能性があるから、人を出して欲しいって。

 結果から言えば、ウチの案件だったわ。

 犯人は現場に天使としての書き置きを残しているため、エルヘイブン関係者の線が濃く。

 その手口は身体から爆発物の反応は一切出ないのに、内部から爆発した死体なんて、『再構築者(リビルダー)』の仕業としか考えられないわ。

 それからもうひとつ、学校関係者が三名、走査線上にあがってるの。

 ただし、亜厂たちに確認してもらったところ、この三名から『転生者診断アプリ』の反応は全員五十パーセント以内。

 私は、これには何らかのカラクリがあると思うわ。

 それが『再構築者(リビルダー)』特有の力によるものなのか、それ以外の要因によるものなのかは分からないけれど……」


 組木さんの執務室。事務机も椅子もスチール製で高級感はなく、まるで職員室の教師みたいに組木さんが俺を見ている。

 部屋の中には組木さんと春日部隊長が居る。

 呼び出された俺は、直立不動で待っていた。

 組木さんの説明に、俺は聞く。


「もしかして、未だ発見されていないハルポナ?」


「断定は危険よ。ただ、ハルポナの可能性も考えておくべきね。

 混乱と絶滅の天使……そんなモノに暴れられたら大変なことになるわ」


 こちらの世界ではハルポナはそのように伝わっている。

 ベルゼブブと同じく、長く潜伏しているため、かなり危険視されている『再構築者(リビルダー)』だ。


 ベルゼブブはベルゼブブの蝿の一匹に取り憑いていることが確認されているので、ベルゼブブの蝿を潰していけば、いつかは行き当たると言われている。

 しかし、ハルポナはおそらく学校関係者の中に紛れている。

 生徒なのか、先生なのか、それとも業者なのかは分からないが、この三か月間、一度も影を確認することすらできていない。

 それは、亜厂たちの情報網にかからない、つまり、元の人格からの変化がほとんどないということであり、御倉の思いのままの写真撮影にも写らず、真名森先生の教師同士や業者関係の知り合いの情報網にもかからないということだ。

 ついでに言えば、最近、始めた俺のドローン監視にも引っかからない。


 まるで、俺たちの存在を知っているかのように感じることもある。


 たしかに、前に封印したゼタルやアバクタと同じグループらしいと言うのは、その二人から名前が出たことから出てきた憶測に過ぎないが、俺は直接、その言動を聞いた者としてハルポナの実在を確信している。


「ごほんっ、事件の概要は俺から伝えよう。

 いいか……」


 春日部隊長が書面を捲って、少し考える。


「最初の事件は、今から十三日前、○○南駅前の午後イチカレーの店長が閉店後の店内で、爆死。

 この時点では、不審死として、事故、殺人の両面で捜査されていた。

 それから、十日前、塾講師が○○駅のトイレで、同じく爆死。

 店長と塾講師の死亡に類似点が多かったため、殺人事件、引いてはウチの管轄ではないかということで、県警からの応援依頼が来た。

 そして、三日前、これはまだ公にされていないが、学校の三年生が爆死した。

 場所は○△駅から自宅の途中にある公園だ」


 午後イチカレーの店長と塾講師とウチの学校の三年生。

 繋がりがあるような、無いような、ふわっとした話だ。


「捜査線上にあがったのは三名。学校教師の半田裕二、二年生のつごもり冬馬とうま、一年生の瀬尾咲希だ。


 半田は午後イチカレーの常連客で、一度、クレームを入れて店長と大げんかした所を目撃されている。塾講師とは大学の同級生、公園で爆死した三年生のクラス担任だ。


 つごもりの母親は午後イチカレーでパートをしていて、つごもり自身は塾に通い、これは早瀬も同じく塾生の一人だ。

 三年生とはテニス部の先輩、後輩ということだ。


 瀬尾は午後イチカレーのバイトで、塾生、三年生との接点は無いかと思われたが、此川想士の情報によると、街中でのナンパをきっかけに三年生に言い寄られて困っていたらしい。


 アリバイは三人とも、一件ずつナシ。

 半田は午後イチカレー店長の爆死、つごもりは塾講師の爆死、瀬尾は三年生の爆死の時のアリバイがない。

 ただ、それ以外の二件に関してはそれぞれにアリバイがあるということで、リビルダー案件なのは濃厚だが、決め手がないという状況だ」


「えっと……俺が呼ばれたのは……」


「日生想士を呼んだのは、他でもない。

 例の魂を見る目を使って欲しいからだ」


「ああ、組木さんの言うリビルダー特有の力で隠れていても、ベリアルの目なら何か分かるかもってことですか」


「ええ、そうよ」


 なるほど。学校を休学している俺が何を、と思ったが、学校の外の事案であれば休学している俺に持ってこいだ。


砂藤さとうたちは、変わらず日生想士のフォローに回す。

 アイツらも警察学校は出ている。

 分からないことはアイツらに聞け」




 ということがあって、俺は第二中隊、第一班の車に乗っている。


「出てきたぞ。あの茶色の肩掛けが半田だ」


 砂藤班長の声に、俺はラーメン屋から出てきた教師を視る。

 二重写しの片側は魂だ。

 しかし、半田先生の魂にも異常はない。

 つごもり先輩にも、瀬尾さんにも異常はなかった。


「問題ないです……誰も……」


「誰も……なあ、日生想士の中のリビルダーの知識に、何かあったりしないのか?

 その、魂に変化がなくて、それでも取り憑いていられるような奇跡なり魔法なりで……」


 砂藤班長は悔しそうに何かないかと言ってくる。


「ないとは言いきれないけれど、ベリアルが知るものはない、だそうです」


「くそっ、じゃあ、訳の分からん爆殺犯は野放しのままか……」


 砂藤班長の憤る気持ちは本物で、視て確認できませんでしたと報告して終わりというのは、なんだか違うような気がしてくる。


「ええと……素人考えなんですが……」


 俺も砂藤班長に引きずられるように、頭をフル回転させてみる。

 ふと、思ったことを、つらつらと垂れ流してみる。


「よし、せっかくだ。その線でも調べてみるか」


 砂藤班長の指示で、車はゆっくりと移動するのだった。



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