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部室に至るDDたち 92


 放課後になる。

 ホームルームの終わりと共に、一斉に来るはずの部活をやっている生徒たちが来ない。


組木︰真名森さんに頼んで、『部室棟』近辺で異臭がするため、辺りを封鎖するという通達を出してもらったわ。

 これならば、いざと言う時、こちらからの人員も送れます。

 その人員は日生くんになりますから、そのつもりでね。


 組木さんからはそう言われるが、正直、亜厂たちが苦戦する未来は考えにくい。


 すでに何十体という『再構築者(リビルダー)』に対処してきているのだ。

 少し毛色は違うとはいえ、負けるとは思えない。

 俺は久しぶりに見るその勇姿を楽しみに、ドローンの絵を引いた。


 ひょっこり、という感じで『部室棟』の前に顔を出したのは此川さんだ。

 すかさず携帯で何かをやっている。

 たぶん、『人払いアプリ』を起動したのだろう。


 次に亜厂がこそこそとやって来る。

 周囲をキョロキョロと見て、抜き足差し足忍び足という感じで、はたから見ると、怪しさ満点だ。

 それを見て、此川さんが笑っていた。

 亜厂はバツが悪そうに顔を赤らめ、照れ隠しなのかバタバタしている。


 それから、御倉が被写体を探しながら歩いてくる。

 気になったものにカメラを向けて、シャッターを切りながらだ。

 随分と余裕そうだ。

 そんな御倉は、二人に気づいてカメラを向ける。


 亜厂が大仰なリアクションで「きんちゃん、何でそんな余裕なの!?」みたいなことを言っているのだろう。

 相変わらず分かりやすい。


 それに対する御倉は「この時間の閑散とした部室棟前って珍しいから、雰囲気を留めておきたくてさ……」とでも言っているのだろうか。


 此川さんが二人に対して、「はいはい、じゃれるのはそのくらいにして、問題の部室、行こうよ」と二人を諌める。


 なんだか、声を聞かなくても、何を言っているか分かるのは、それだけ彼女たちと過ごした時間が、俺の中で濃いものだったからだろう。


 自分の中の未練が分かる。

 ただ、あの輪の中で守られながら生きる自分はどうしようもなく許せなかった。

 三人の関係性は、同等の立場だからこその関係性だ。

 必死に訓練したとはいえ、『ヒルコ』の俺は循環する世界の一部を自分のものとして扱えない。

 この三か月の戦績を見ても、俺がいない時の方が危なげなく『再構築者(リビルダー)』を封印まで持っていけている気がする。

 それはそうだろう。

 俺が居れば、彼女たちは俺を守るために力を割かなくてはならなかったのだ。


 自分の不甲斐なさに下唇を噛んで耐える。


 そうしている内に、彼女たちは『部室棟』の中へと入っていった。

 いつのまにか、彼女たち背後には真名森先生の『目玉の邪妖精(イビルアイ)』が三体、ついてきている。


 真名森先生もまた、大事な戦力だ。

 斥候を務め、彼女たちをフォローして回る。

 俺より後にDDになったが、すでに独り立ちしている。


 たしか、真名森先生もDDになったばかりの時は『TS研究所』に通って、訓練を受けていたはずだ。

 ただし、短期間。


 どうにも卑屈になりがちな気持ちをなんとか立て直す。


 俺はドローンの画面に、もう一度、集中する。


 『部室棟』はマンションの作りと似ていて、各部屋は外廊下で繋がっている。

 彼女たちが立ち止まったのは、『将棋部』と書かれていた。


 『将棋部』の部室に人形……違和感が凄い。


 俺が卑屈になっている間に、既に作戦は決まっていたらしく、それぞれが配置についた。


 此川さんと亜厂が『彫刻刀槍(グングニール)』と『木刀ボールペン(トツカノツルギ)』を構え、御倉が写真を見つめている。

 『目玉の邪妖精(イビルアイ)』が部室の鍵穴に身体の一部を変形させて突っ込み、準備が整う。


 俺は緊張から生唾を飲み込んだのだった。



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