秘密のバイトをする日生満月 63
昨日、間違えて出してしまったので、こちら本日分になります。
遅くなりましたm(_ _)m
訓練を終わりにしてもらい、俺は学校へと急いだ。
私服のユキユキと顧問の尾野田先生が、校門のところで待っていた。
「満月! こっちだ!」
呼ばれるままに近づいていく。
「君が日生か。山に登ったりするが大丈夫か?」
山? たしかにユキユキは体力作りにもなるような話をしていた気はする。
「大丈夫っすよ。コイツ、根性だけはあるんで!」
ユキユキが一所懸命に俺を売り込んでくれる。
「ええ、まあ……はい」
「……まあ、いい。それじゃあ、これを持て」
尾野田先生からリュックサックを渡される。
二キログラムくらいだろうか。
「今日は電車で他県まで移動、それからバスで山に向かう」
「うす!」
ユキユキが頷く。
「これ、中身って……」
「到着までは開けるな!」
俺がリュックサックの中身を見ようとすると、怒られてしまう。
到着して開けるのなら、別に問題ないような気がするが、ダメなんだろうか?
「デリバリー要員が途中で中身、開けてたら嫌がられるだろ。
そういうもんだと思っておけって……」
ユキユキに諭される。
山までデリバリー? たしか、ユキユキの話ではボールのようなモノだとか言っていた気がする。
電車とバスで二時間。
俺は知らない土地に来ていた。
「途中までは山道を使う。遅れるな」
どこかの神社だろうか。
山道兼参道の道を登っていく。
なんとなく雰囲気的には学校の裏山にある神社へと続く道に似ている。
少し歩くだけで、汗が噴き出す。
山の中腹、掠れて読めない『←〇〇神〇』という看板のある辺りで、山の中に入った。
もう辺りは真っ暗だ。
リュックサックの肩に付いたライトを点灯して歩く。
方向感覚が狂いそうだ。
「なあ、いつもこんななのか?」
「ああ。いつもはもうちょっと駆け足気味に行くかな……」
「こんなところにデリバリー頼むやつがいるとは思えないんだけど……」
「そりゃ、そうだろうな」
ユキユキは笑った。
「よし、日生。リュックの中の物をココに置け」
暫くして、尾野田先生が言う。
俺はリュックサックを降ろして、中身を取り出す。
ぞわっ、と背中がむず痒い。
乳白色の小さな粒の集合体。白いイクラのような。しかし、粒はしっかりしていてゴムのような弾力がある。それが集まってサッカーボールほどの大きさになっている。
ぶつぶつとした触り心地が、妙に背中を痒くさせる。
見ていると、何故か嫌悪感が浮かぶ。
「これは……」
「考えるな。他言無用だ。あと二箇所ある。
バイト代が欲しいなら、言われた通りに動け」
淡々とした尾野田先生の言葉は、ちょっと言わされているようにも感じる。
めちゃくちゃ怪しい。しかし、何がダメなのかと明確に指摘できない。
これが拳銃を埋めに来ましたとかなら、それはダメだろうと分かるが、持って来たのは乳白色のつぶつぶ集合体。
なんか気持ち悪い、ナニカ。
胸の奥がモヤモヤするが、どうしようもない。
置く場所に明確な目印がある訳でもなく、そのままユキユキの分、尾野田先生の分を山の中に配置して、俺たちは戻る。
「今日のバイト代だ」
駅に着いて、尾野田先生が封筒を渡して来た。
「お、やったー!」
ユキユキが嬉しそうに受け取っている。
俺も受け取って、中身を確認する。
お、おお……二十枚のお札。
今が夜の十時。ほんの四時間で二十万になった。
「な、いいだろ、このバイト!」
「す、すげぇ……」
「次は三日後だ。もう少し遠くまで行く。やりたければ今日のように校門前で待っていろ」
尾野田先生はそう言ってさっさと駅の中に入っていく。
「なあ、満月、飯食って帰ろうぜ!」
「あ、ああ、悪いな、ユキユキ。
時間も時間だし、とりあえず、今日は帰るよ……」
「なんだよ、帰りはタクシー使えば電車の時間なんか気にする必要ないぜ!」
「いや、今日のところは帰るよ……」
「ちぇ〜っ。んじゃ、また今度な。
俺は飯食って帰るわ!」
「お、おう……」
「次は三日後だかんな〜!」
そう言ってユキユキは駅前の繁華街に消えて行く。
残された俺。
どう考えても、何かヤバい事態になっている。
俺は携帯を取り出して、春日部隊長をコールした。




