視る日生満月 62
新ライダーはデザイアドライバーってので変身するみたいですね。
デモンズが色んなゲノムを取り込んで蠍尻尾生やした時もちょっと思いましたが、たぶん、同じようなアイデア光線〈天啓?〉浴びてる?w
翌日、土曜日。
学校がない。しかし、『再構築者』はいる。
学校内に潜伏していたとしたなら、この土日で『再構築者』の融合が大きく進む結果になりかねない。
しかし、いかに『再構築者』が成長してしまうとしても、『妄想☆想士』は人間だ。
三百六十五日、二十四時間、勤務など不可能だ。
基本的には俺たちにも休みが認められている。
あくまでも基本的にはだ。
今回の『エルパンデモンの大祭』のような特別な時は、交代で休みを取ることになっている。
今日は此川さん、俺、御倉は休み。
亜厂、真名森先生ペアが出勤ということになっている。
だが、俺にはやらなければならないことがあった。
バスケ部の練習終わりに、ユキユキからバイトを紹介してもらうのだ。
練習は夕方六時まで。
俺はそれまでの時間を『TS研究所』で潰すことにした。
春日部隊長の元、延々と柔道の組手をやる。
───訓練だと言うならば、こちらにも訓練が必要だろうよ───
「次!」
春日部隊長の号令が響き渡る。
俺は慌てて立ち上がり、戦闘態勢を取る。
呼吸、呼吸を整えないと……。
大きく息を吸う。一瞬の攻防の時、無呼吸で動くことが多い。だが、動くには酸素が必要だ。
土の匂い。雨に湿った土のような空気が俺の鼻腔を刺激する。
「ふっ、ふっ、スーッ……げほっ、げほっ……」
「お前の息が整うのを待ってくれる敵はいないぞ!」
稽古をつけてくれる機動隊員がアドバイスと同時に俺を崩しに掛かる。
呆気なく俺の体幹は揺さぶられ、機動隊員が懐に入って来る。
俺は腰を落として踏ん張ろうとするが、まるで俺の気を散らそうとでもいうかのように、耳鳴りがする。
ぼわあああああん、と脳を揺らすような音と、空気が凍る、ピシピシとした音。
投げられる。受け身っ……。
「ぐはっ……」
残っていた肺の中の空気がまとめて外に飛び出した。
「次っ!」
なんとか受け身くらいは様になってきたような気がする。たぶん……。
くそ、なんだ、この音。
「立て! いくぞ!」
新しい隊員が俺を立たせる。
引き摺られるように、俺は胸倉と袖を掴む。
「組む前から戦いは始まっているぞ!」
ぐにゃり、視界が歪む。
隊員が二重写しに視える。
なんだこれは……。
───それが魂というやつの片鱗だ───
ベリアルの声。
ずだんっ!
俺は畳の上に這いつくばった。
「気を抜くな! やる気がないなら帰れ!」
「す、すいませんっ!」
謝るものの、二重写しは消えないし、耳鳴りも変な匂いもそのままだ。
俺を投げた隊員さんが汗を拭くべく横に移動する。
俺を投げた隊員さんが汗を拭くべく横に移動する。
「え……」
「次っ!」
隊員たちは、個々で練習しながら、片手間に俺の相手をしてくれている。
当然、俺では相手にならないから、小休憩前の一戦という感じで、俺を倒したら、小休憩を取るというのがルーティンになっている。
いや、それはいい。問題じゃない。
問題は二重写しが、二人の隊員になったことだ。
今は一人、微妙に二重写しだが重なって視える。
どうやら、ベリアルが俺の身体の中のスイッチを弄っている?
そういえば、「感覚の切り替えはこちらでしてやる……」とかなんとか……。
「次ぃっ!」
春日部隊長の声が荒ぶってきた。
不甲斐ない俺に苛立っているのだろう。
この前の合宿で覚えたことだが、春日部隊長が荒ぶると、ヤバい。
気の抜けたことをするな、と春日部隊長が相手になってしまう。
そうなると、春日部隊長は俺を投げて、投げて、投げまくるという暴挙に出るのだ。
まあ、おかげで受け身を覚えたというのもあるが、それをやられると俺のHPがゼロになって、胃の中の物が逆流してしまう。
避けなければ。
───ベリアル、頼むから、感覚を戻せ!───
───テラの戦士は修練によって慣れを作るのだろう。ならば、これも修練だ。くくく……───
───ふざけんなっ! 同時になんかやれる訳ないだろ!───
───いいや、同時に使えなければ、意味はない。はははっ、意味を日生満月に求めることになろうとは……これもまた面白し……───
お前の変態的喜びなんかどうでもいいと思いながらも、隊員は代わる代わる俺を投げていく。
慣れない視界と耳鳴りと匂いで、俺はいいように投げられる。
「日生想士! 何をたるんどるかーっ!」
ヤバい。春日部隊長が荒ぶった。
ずだんっ! まだまだー! ずばんっ! 終わらんぞ! ずだんっ! 気合いを入れんか! どすんっ! 考えろ! 考えなければ、永遠に変わらんぞ! ずだんっ!
ヤバい……。春日部隊長が二重写しどころか、四重写しくらいに視える。
───ははは、随分と移り気のようだ───
ベリアルが笑う。笑っているが、少し感心しているようにも聞こえる。
何度も何度も投げられている内、揺れる視界の中で四重写しの春日部隊長が次に取ろうとしている行動が視えていることに気付く。
本体を除けば、春日部隊長は常に三つの選択肢を用意しているということなのだろうか。
本体ではない視えている春日部隊長は色味が薄い気がする。
その幽霊みたいな春日部隊長の動きに本体が追い付くと、俺は投げられている。
だんだんと理解が進む。
尤もこれは、何度も春日部隊長に相手してもらっているからこそ視えるものだ。
四重写しの幽霊部分は、たぶん、魂の顕在意識のようなもので、瞬間的に漏れ出た魂の欠片なのだろう。
身体が追いついていないために、投げられっぱなしだが、極めれば先読みができる気がする。
春日部隊長の身体が少し沈む。
俺は三人の春日部隊長の差が分からないので、ヤマカンで一人の春日部隊長を押した。
瞬間、春日部隊長が体勢を崩す。
春日部隊長は「おっ……」とびっくりしたような顔をする。
結果的には投げられたが、一瞬だけ隙を作ることに成功した。
「良い反応だ。続けるぞ……」
春日部隊長がそこで鎮まった。
その後、別の隊員たちが代わったが、俺は少しだけ相手のタイミングを外せるようになったのだった。




