仕事をする妄想☆想士 44
給料が入った。
DDは公務員なので、これが初任給というやつだ。
専用の口座に振り込まれていて、凄い金額だった。
ただ逆に考えると、凄い金額を貰わないとやってられない仕事なんだと思わされる。
また、金の使い方に関しても諸注意があった。
根本的に、家族にさえも秘密の仕事だ。
成人するまでは生活レベルを変えないようにとか、アルバイト程度の金しか使うなと言われている。
大金を使う時は組木さんに相談することも諸注意に含まれていた。
ベリアルは大食漢だ。
魔力の補充は食うことだ。
金があるのはいいことだった。
昨日のトイレ内での喧嘩は誰にも言っていない。
細井と小山の足がどうなったかは分からないが、今日辺りは家で休んでいるんじゃないだろうか。
あの普通っぽいやべぇやつと、いじめられていた眼鏡くんは分からない。
隣のクラスだから調べれば名前はすぐ分かると思う。
眼鏡くんはかなり追い込まれていたようだから、少し調べてみたいと思った。
俺の中で、昨日のベリアルの『くだらん理性で持っている力を使わず、殺されかけるくらいなら、抗って死ね』という言葉が引っかかっていた。
全面的に賛成というつもりはないが、たしかに消極的過ぎた気はする。
まさか自分が死にかけていたとは思わなかった。
痛くなくても死ぬ時があるというのは初耳だったが、ベリアル曰く、内出血でも死ぬ時は死ぬらしい。
夜、寝る前に、殴られて内出血しまくった人間がどうなるのかなんて昔話は聞くもんじゃないと思った。
「満月、おはよう!」
「おう、ユキユキ、おはよう……なんだよ、ニヤニヤして……」
朝の挨拶をしてきたユキユキが、俺を見てにやけていた。
「ふっふっふっ……なんだと思う?」
本人的にはさりげなく、俺的にはあからさまに腕まくりして腕を組んだユキユキの手首にはスマートウォッチ、胸元からは新しい携帯が覗いていた。
「ああ……新しい携帯とスマートウォッチ……」
「おう。しかも、最新機種だ。満月のスマートウォッチはなんかゴツイな……」
「ああ、まあ、多機能なんだよ……」
槍と盾が出るから、とは言わない。
ユキユキも最新機種か。
「それにしても、よくユキユキのお母さんが許したな。
最近、バスケットシューズ新しくしたばかりだからお預けとか言ってなかったっけ?」
「まあ、いいバイトが見つかったんだよ!」
「バイト?」
「気になるなら紹介してやろうか?」
「危ないやつ?」
「いやいや、顧問公認だから!」
「ふーん……まあ、今のところはいいかな……」
バイトはさすがに時間がない。
それに、俺は高給取りだしな。
ほぼ使えないが……。
予鈴が鳴る。
ユキユキがまた後でと自分の席に戻る。
隣の席の亜厂が少しだけ身を寄せて言う。
「お給料、入ったんですね」
「ああ、ちょっとびっくりした……」
「じゃあ、今度、初任給祝いにみんなでファガナイン行きましょう!
奢らせてください……」
「いや、初任給祝いなら、俺が出すよ」
「わぁ、じゃあ、楽しみにしておきますね!」
前は奢ってもらっているしな、次は俺が出すのが妥当だろう。
それに、これだけ良い笑顔で楽しみにしてもらえるなら、いつでも奢らせてくださいという気持ちになる。
なるほど、昨日は死ななくて正解だったかもしれない。
少しだけ、ベリアルに感謝した。
そうして朝のホームルームが始まったと同時に、俺と亜厂は同時に携帯へと視線を落とした。
警告メッセージだ。
ベリアルを除いて、三体の『再構築者』が野放しになっている。
俺の初任給祝いなんて、している暇があるんだろうか。
エルパンデモンの大祭が私的に憎く思えた瞬間だった。
真名森︰二年A組のよっしーが保健室に来なくなっちゃった。これも怪しいってこと?
日生︰それまでは結構な頻度で来てたってことですか? あと、名前は分かります?
真名森︰柔道部の吉岡くん。詳しい内容は誰にも教えないって約束だから避けるけど、最近は毎日、保健室に相談に来てたのね。
問題は解決してないし、登校はしているみたいだから、心配だなあって……。
基本的に真名森先生は保健室を長時間空ける訳にもいかないので、捜査に参加できないことが多い。
こればっかりは、表の顔があるので仕方がないことだ。
二年の吉岡という人は、真名森先生に相談していることを周囲に知られたくない場合もあるだろうし、真名森先生が出向く訳にもいかないのだろう。
亜厂︰2ーAなら知り合いの先輩がいるので、それとなく探ってみますね!
真名森︰ありがとう!
此川︰私は柔道部から情報集めてみるわ
真名森︰まつりちゃんもありがとう!
御倉︰次の授業でドローン飛ばしますね。学校内にまだ詳しくないので、不測の事態に備えて日生さん、サポートお願いしてもいいですか?
日生︰分かった。本校舎の屋上で。
ドローンは前にもやったことがある。
御倉の提案は願ったり叶ったりだ。
正直、知り合いが少ない俺は、こういう時、何をしたらいいのか分からない。
多少の授業の遅れは後で挽回するとして、仕事があるのは素直に嬉しいことだった。




