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|御倉《みくら》|琴子《ことこ》 41


 深夜十二時。俺たち高校生組には帰宅が命じられた。


 封印した『再構築者(リビルダー)』は三体。

 山県さんの中の仮称『アドラメレク』。

 進藤隊員の中の仮称『ブエル』。

 此川さんが山中で倒した広中隊員の中の仮称『なし』。

 仮称はベリアルがそう呼んだからで、おそらくは間違いないだろう。

 広中という隊員に取り憑いた『再構築者(リビルダー)』は、俺が見ていないため分からない。

 どうやら、炎を使うヤツで、危うく山火事になるところだったらしいが、ベリアル曰く、火を扱うエルパンデモンの住人は多すぎて絞れないらしい。


 これで残るは、俺の中の『ベリアル』と一条先輩の中の『魔術を使う再構築者(リビルダー)』、更に発見されていないもう一人の三体になった訳だ。


 帰りは普通のパトカーで家まで送られた。

 帰りがけの駅前でケンカを見つけて、通報し、今まで事情聴取のために協力していたという筋書きで、遅くなった言い訳をするためだ。


 最近は、普通に帰りが遅いが、家の両親は共働きで、放任主義なのもあって、あまり心配されたりしないのだが、この言い訳は逆に心配されてしまった。

 家の両親は事勿れ主義でもあると知れた。

 危険には近づくな。見て見ぬふりをしてもいいじゃないか、ということだ。

 自分の身を第一に考えるようにという教えだ。

 それなりに親は俺の心配をしてくれているらしいが、少々の反発心も生まれる。


 今度からはユキユキの家で遊んでいたことにしようと思った。

 安心安全のユキユキなら、親も納得だろう。


 晩ご飯は辞退した。

 なにしろ、ベリアルが魔力を回復するためと称して、パトカーの中で物凄い量の食物を要求したからだ。

 俺の身体の中に、あの量の食い物が入っているとか、正直、見ていなければ信じられない。

 途中で寄ってもらったドライブスルーのバーガー屋でパーティーでもするのかって量を食っている。


 今日は疲れた。


 明日は朝から、残った一条先輩と、行方が分からない『再構築者(リビルダー)』の捜索が待っている。

 もしかすると、適合する身体がなくて、行方が分からない方は、まだ魂のまま、さ迷っている可能性もあるとベリアルは言っていた。

 そういうこともあるらしい。


 そして、予定通り。深夜三時。

 俺たちの携帯には、街中に潜伏していた『再構築者(リビルダー)』の一体が封印されたことと、それを成した他地域からの応援で来たDD『御倉(みくら)琴子(ことこ)』の存在が伝えられるのだった。

 これで一体。つまり『ベリアル』を探す必要がなくなったということだ。


 翌日、昼休みの屋上。

 俺がそこに行った時には、既に亜厂と此川さんが待っている。

 どうやら今日の二人は、屋上で弁当を広げることにしたらしい。

 俺は買って来た惣菜パンで既に昼食は済ませた。

 軽く挨拶を済ませて、応援の到着を待つ。

 真名森先生は保健室なので、放課後に顔合わせ予定で、まずは高校生同士でということになったのだ。


 二人の食べている姿を眺める訳にも行かないので、なんとなく外を眺める。

 一条先輩ともう一人の『再構築者(リビルダー)』が簡単に姿を現す訳がないと分かっているが、つい視線はあちらこちらと探してしまう。


「ええ、それ自分で作ったの!

 うわぁ、美味しそう!」


「亜厂は料理とかしいひんの?」


「やるけど、こんな綺麗にはできないよ〜。

 あ、この卵焼きだけは私が作ったよ。

 これは自信作!」


「ほぉ、どれどれ、あんむっ……あ、おいひいやん!」


「でしょ、でしょ!」


「なあなあ、ひなせくん、亜厂の卵焼き、美味しいんよ、食べてみーひん?」


 俺は視線を二人に移して、腹具合を確かめる。


「えーと、もう食べたから……」


「まあまあ、そう言わんと!」


「いや、亜厂の分がなくなっちまうのは申し訳ないから……」


「満月くんさえ良ければ、食べて感想欲しいな!

 素直な感想でいいから! 忌憚のない意見をよろしくお願いします!」


 まあ、食べたくない訳じゃなく、興味津々だが、遠慮していただけなので、そういうことならと、ひょこひょこ歩いていく。


「良かったら、わたしの卵焼きも食べて、感想欲しいなっ!」


 此川さんも自作だという弁当を前に出す。


 凄い! 今、俺はリア充している!

 ……とと、いかん、にやけそうになる顔をどうにか保つ。

 まあ、視線は二人の弁当に釘付けだ。


「どれどれ、はむっ……むぐむぐ……こっちもね……あむ……うんうん……」


 俺の目の前を一陣の黒い風が通り過ぎた。

 その風はスカートを翻して、俺たちの方を向くと親指をぺろり、それから目元で横ピースを決める。


「この度、本部配属になった、1ーBに転校してきた御倉琴子です!

 ってか、よろしく!」


 亜厂より少し長めのストレートヘア、印象としては線が細く、亜厂をたぬき顔とするなら、御倉はキツネ顔系の美人さんだ。ちなみに此川さんはリス顔とでも言おうか。

 華奢な身体つきをしている御倉だが、動きも伴って活発な雰囲気がある。


「きんちゃん!」


 亜厂が嬉しそうに声を上げた。


「ほのちゃん、久しぶり!

 卵焼き、上達したね!

 ええと、はじめましてのお二人もよろしくどーぞ!

 お料理、上手ですね、羨ましい!」


 俺が貰えるはずの卵焼きは綺麗に消えていた。




 御倉琴子は亜厂と同じ訓練所を出た同期だったらしい。

 なぜ、亜厂が御倉琴子を『きんちゃん』と呼ぶかと言えば、『木琴のきんちゃん』だからなんだそうな。

 なるほど、ちょっとズレてる亜厂らしいあだ名付けだなと思う。

 だが、そんなことより卵焼き……と言いたいところだが、グチグチ言うのも男らしくないかと、どうにか俺は堪えた。


「御倉さんが夜中に街中で『再構築者(リビルダー)』を封印したんやろ。凄いやん!」


「えへへ、まあね。組木さんから連絡もらって、皆が連戦だからってことで代わりにやらせてもらいました!

 潜伏先が街中だったのもあって、変異もほとんど進んでなかったから、肩慣らしってことで!」


「そっかぁ、夜中やのにありがとうな」


「転校初日にドキドキして寝つけなかったから、ちょうど良かったかも?」


「ええっ! きんちゃんが緊張なんてするの?」


「そりゃするよ! 本部のお膝元だし、何より新しい学校に馴染めるかは死活問題なんだから!」


「まあ、まずは友達が三人増えたんやから、ええやないの」


「まあね!

 男の子のお友達、第一号だから、よろしくね日生くん!」


 御倉が握手を求めてくる。

 俺は「お、おう……よろしく……」と人見知り全開で握手を返すと、御倉は意味ありげにウインクして見せた。


「組木さんから、事情は聞いてるから、全部、ねっ!」


 全部。つまり、ベリアルのことも、という意味だろう。

 まあ、事情を理解している相手というのは、ありがたい。


「あ、そうだ! せっかくだから、皆の写真撮らせてよ!」


 御倉は首にゴツイ一眼レフのカメラを掛けている。

 それを持ち上げて言うのだった。


「ええね、撮ろ、撮ろ!

 それにしても、カメラ、趣味なん?」


「うん! 写真部か、なければ新聞部にでも入ろうかなって……DDの仕事も大切だけど、高校生活も充実させたいしね!」


「あ……きんちゃん、ウチの学校、どっちもないよ」


「えっ! うーん……なら、作ろっかな?」


 アクティブ! ヤバい、亜厂や此川さん以上の陽キャな人だ。

 俺は御倉と仲良くなれるだろうか……ちょっと不安になるのだった。



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