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ユキユキ 120


 ユキユキが何故?

 確かにバスケ部でバイトをしていた面々のほとんどは、魂の大部分を変質させられ入院中だ。

 中でもユキユキは、俺からの忠告によって、早めにバイトから抜けたので、魂の変質も最小限で入院の必要すらなかった。

 別にユキユキだけじゃない。

 ユキユキより多少、魂の変質が進んでいても入院せずに済んだ部員もいたのだ。


 ベルゼブブが取り憑く因子が高かったのならば、もっと早くに取り憑いているはずなのだ。


 だからこそ、この場面でユキユキにベルゼブブが取り憑く理由が分からない。


「随分と不思議そうな顔をするな。

 想像が及ばなかったか、日生満月」


「どういうことだ?」


「私の蝿たちは、全て私だ。

 お前の中の欺瞞と偽善に満ちた忌々しい匂いを嗅ぎ、お前のことも見ていた。

 たっぷりと殺してくれたな……この私を。

 だから、選んだのだ。

 お前と親しく、お前を憎む、この肉体をな」


「憎む?」


「ああ、そうとも。

 結城裕貴(ゆうきひろたか)は日生満月に憧れた。

 そして、亜厂ほのかへと恋慕の情を抱いた。

 それが、愛。

 愛とは憎しみに転じるモノだ。

 想像力を掻き立てられ、いつ転がるとも知れぬ愛を転じさせるのは、簡単だ。

 お前たちの事実は、私が見ていたからな……」


「ユキユキが亜厂を……?」


 たしかに、ユキユキは亜厂に心を開いていた。

 それはもしかして、ユキユキの初恋ということなのだろうか。


 中学時代。ユキユキはモテたが、「恋とか愛とか言ってんの、分かんねえ……バスケと満月と遊んでるだけじゃダメなのか……」と悩みを口にしたことがある。

 その時、俺は「焦らなくていいんじゃねえの? ユキユキはモテモテだから、興味が出るまでは、分からないからごめん、でいいじゃん」と大人ぶった慰めを口にしたものだ。

 羨ましさで奥歯を噛み締めながらだが……俺は告白なんてモノをされたことがなかったので、他人に愛される実感がなかった故の言葉だ。


 だから、俺がユキユキを羨ましがることはあった。

 もちろん、変なプライドで俺はソレを表に出すことはしなかった。


 ユキユキが、そんな俺に憧れたと言われると、何ともむず痒い気持ちになる。

 ただ、強がっていただけの俺なのだ。


 なんなら、俺の方こそユキユキに対する憧れがあったくらいだ。


 それはとにかく、ユキユキは俺に憧れて、亜厂に初恋したらしい。

 それで、愛情が憎しみに?

 俺たちの事実……。

 ベルゼブブの蝿が見たモノがベルゼブブ本体と共有されているのだとしたら、俺と亜厂の『生太刀・生弓矢』、もしくはエウリノーム戦での大人のキスを観ていた可能性がある。

 それをユキユキに伝えた?


 初恋した相手が、自分の友人とキスをしていた。

 なるほど、愛が憎しみにか……。


 ユキユキは、ユキユキなら、俺の成長を喜んでくれるものかと思っていた。

 いや、ベルゼブブは、エルパンデモンの住人は悪魔だ。


「ベルゼブブ……ユキユキに何を吹き込んだ……」


 俺は怒りに任せて、ユキユキに取り憑いたベルゼブブを睨んだ。


「吹き込む?

 いや、事実を伝えただけだ。

 日生満月は亜厂ほのかと付き合っていて、結城裕貴よりも亜厂ほのかを選んだ。

 それは結城裕貴と遊ぶ約束よりも優先されるもので、日生満月は結城裕貴から離れた。

 それが事実だ」


「それは……」


 事実だ。だが、亜厂ほのかを選んだというより、DDとしての仕事が優先されたからというのが内情だが、DDが秘密な以上、事実と認めるしかない。


「それから私だ。

 私がお前を憎んでいるのだ、ベリアル」


───くくくっ、愛しているのならばそう言えばいいものを、ベルゼブブめ───


 いや、憎んでると言われているのに、何をどう聞いてるんだろうか、このベリアルは……。


「戦えよ、満月!

 俺とお前、どっちが上か、決めようぜ!」


 それはユキユキの声だ。


 俺は咄嗟に身構えるのだった。



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