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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第4章 ネルー湖・ネルー大湿地
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第93話 グッドコミュニケーション

いつも読んで下さり有難うございます!

「急に奇声をあげるこの男は安全なのだろうか、いや、安全なはずがない」


……このやたらめったら反語を使う喋り方にもイライラしてきた。


……ダメだ、もう何をされてもムカつく。大体なんなんだその喋り方。他の魚人族は誰一人としてあんな回りくどい話し方はしていない。


「今度は黙りこくってしまったか。不気味な男だ」


「普通に喋れるのかよ!」


「自分の価値観を“普通”と呼ぶのは余りに驕りが過ぎないだろうか、いや、驕りが過ぎる」


「ダアァァうるせぇ!もう喋るな!!」


「あんな小林ちゃん、初めて見るわ……」


「あぁ、最初に出会った時ですらあそこまで荒ぶってはいなかったな」


「アレが素なんじゃねェのか?オレは嫌いじゃないぜ?」


頭では暴れるとマズいのは理解できている。だが、1週間の努力が事態をややこしくしているという事実と、ペースを乱される話し方のせいで感情が制御できない。


「フム……、私1人でこの男とその仲間を制圧できるだろうか、いや、できまい。」


ヤバい、増援を呼びに行く雰囲気だ。なんとしてもここで誤解を解かねば……!


足に魔力を集中させ逃げの姿勢を見せた監視役に対し、こちらも“ストレングス”を瞬間的に“強火”にする。


予想以上の魔力に相手が硬直した隙に接近して……。


「コバヤシ!上だ!」


「!?しまっ!」


「ほぅ!我が輩に触れられる前に気付くとは、お主中々やるではないか!尤も、ちと遅いがな!なっはっは!」


「いってぇ……」


「ピピ様!これ程有難いご助力があるでしょうか、いえ、ありません!注意してください!この男、見た目以上に」


「大丈夫じゃ。こやつの実力は魔力制御の練度を見れば分かる。ヘレでは厳しかろう。……じゃが、そもそも1つ勘違いをしておるぞ。お主の悪い癖じゃ」


「と、言いますと……?」


「こやつには敵意など無い。仮に害意があれば、お主は今頃死んでおるぞ」


「そんな筈は……!いえ、仰る通りでございます」


「うむ。素直なのは良いことじゃ」


組み伏せられてからピクリとも体を動かせないが、事態は好転しつつある。


……恐ろしいのは、俺を片手間で押さえつけているこの魚人族がどう見ても子供にしか見えないという点だ。


身長は140cmちょいってところか?髪色はピンクでショートボブ、一瞬見えた瞳は綺麗なグリーンだった。端的に言えば、髪と瞳の色が派手な座敷わらしだ。


そんな幼子に対して、身動きの1つも取れない。力が強いとかじゃない。多分力の扱い方を誰よりも心得ているのだ。


「仲間が制圧されても誰一人動く様子が無いのを見るに、少しは警戒を解いてもよさそうじゃな」


理解のある人で助かった……。やっと話し合いの場に着けそうだ。


「何を言っているのか分からねェが、もう終わりか?なら最後に一暴れさせてくれよ。オマエと戦うのは楽しそうだ」


言葉が通じなくて良かった。もう本当に喋らないでくれ……!?


「いいねェ、初動が見えたのに反応出来なかったのは初めてだぜ」


「よせよせ。お主が何を言っておるのかさっぱり分からぬが、敵意からは無邪気さしか感じられん。我が輩は無益な争いは好まんのじゃ、拳を収めよ」


体が軽くなったと思った直後、ヘラさんの拳はあの幼子の手の平に包まれていた。魔力量に関しては“十指”より少し多い程度にしか見えないが、体術は間違いなく“覇者”級だ。


「コバヤシ、この娘は何と言っている?」


「えぇと、結論だけ言うと、誤解は解けたみたいです。ヘラさんの敵意も歯牙にかけていません」


「そうか、ケガはないか?」


「ありません。化物みたいな体術ですね。地面に倒されたのに殆ど痛くありませんでした」


「分かってるつもりだったけど、世界って本当に広いのねぇ」


「あぁ、そうだな。私もまだまだだ」


こちらの会話が済んだのを見て、彼女は軽く頭を下げつつ提案をしてきた。


「色々すまんかったの。じゃが、我が輩もお主が何故魚人族の言語を話せるのか気になっているところじゃ、ここは1つ、話をしようではないか。よいかの?」


「是非、お願いします」


「ピピ様の意向に誰が反対しましょうか、いえ、誰も反対などしません」


「良きかな良きかな。ところで、ヘレは相変わらず難儀な喋り方をしておるなぁ。じゃから同世代の友人が少ないのではないのか?」


「わ、私は“巡回者”の任に就いています故、その、今は友人など不要なのです!」


「そうかそうか、これは余計なお世話じゃったの」


……完全に毒気を抜かれてしまった。どうやら見た目以上に経験を積んでいると見える。


「さて、重ね重ね迷惑をかけてすまんかったな。長の住処に案内しよう。我が輩はピピ・ピニャータ。あそこの未熟者がヘレ・ヘレスじゃ」


「小林と申します。後ろの3人は右から順にセリンさん、金剛さん、ヘラさんです。補足しておくと、魚人族の言葉をまともに解せるのは僕だけです」


「そうかそうか、ではゆっくり話すとしよう。情報は皆で共有すべきじゃからな」


「お気遣い、痛み入ります」


「なっはっは、本当に流暢に喋りよるわ。ついて来んしゃい。我が輩の後ろにおればもう突っかかられることはなかろうて」


「分かりました。皆さん!この方が長の家まで案内してくれるそうです!着いて来て下さい!」


「了解だ」


「はいはーい」


「おい、ソイツに後でもう一回遊ぼうぜって伝えとけよ」


「お待たせいたしました。行きましょう」


「おい、シカトか?」


「……あの女子はどうにかならんのか?悪意は無いとはいえ、流石に落ち着かんのじゃが」


「本当にすみません、無視して下さい。次飛んで来たら全然ボコボコにしてくれて構いませんので」


「なっはっは!お主も苦労しておるようじゃな」


「分かりますか?」


「分かるとも。顔に出ておる。若いのに随分と修羅場をくぐって来ておるな」


「まぁ、色々ありまして……」


「適度に力を抜かんと長生きできんぞ」


「有難うございます」


「おいって!」


やっと意思疎通が取れた……。ピピさんが良識のある人で助かった。やっと状況が進みそうだ。


いや、“長”とかいう人がどう出るか分からないな、気を抜き過ぎないようにしよう。


「……いい度胸だコバヤシ。オマエからぶっ飛ばしてやる」


あぁ、ピピさんに勝手に突っ込んでくれないかなぁ……。

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