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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第三章 レインティシア・イリア教皇国
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第90話 独白

第三章最終話です!いつも読んで下さって有難うございます!

最終章も見えてきました。最後までお付き合い宜しくお願い致します。

──時は遡り、魔人コルニパが討伐された時点。その様子を天上から見守る者がいた。


「あー良かった。絶対に勝つって知っててもハラハラするんだよな。今回に限っては先に動かしていた“聖者”がアベリガレストに遭遇するとかいうクソイベントが挟まったからな。あれはマジ焦った」


小林達の知らない出来事。“聖者”が聖者であるが故に、遅れた言い訳になると判断し告げなかった重大な出来事。勿論、例外はあれど隅々まで世界を見渡せる女神ファリスは知っている。


「アベリガレストが目的遂行のためにコルニパを即座に逃がしたのもデカかったけど、想像以上にパルメナが成長していたのも運が良かったな~。ボーナス100倍の天才が自己犠牲精神まで持つとあそこまで強くなるんだ。とは言っても、結局逃げられちまったからアベリガレストの討滅はまだ先か~。怠いなー」


キャスター付きの椅子に座り、くるくると回る彼女は口を尖らせる。


「一応順調に事は運んでいるけど、こうなってくると今度はどのタイミングで話すかが問題になってくるな~。……この世界の真実を」


女神ファリスが現在進行形で行っている、最大の詐欺。真実の隠蔽。


「金剛は確実にショックで疑心暗鬼になるからまず伏せておくとして……、いや、祖なる者がいつ現れるか分からない以上、向こうからバラされる前に私から話す方がまだマシか。あー!“隠密”が邪魔過ぎる!元となるスキルを与えたのは私だから自業自得なんだけどさ。まさかスキルが進化するとは思わないじゃん?」


7,000年もの間、1人で世界のバランサーを担い続けてきた彼女には、独り言がすっかり板についてしまった。かれこれ数千年は続いている独白である。


「ん~、どうしよ。小林は最近肝が据わってきたから、ワンチャン先に話すのはアリか?アイツは結構合理主義的な面があるから、多分理解してくれると思うんだよなー。……でも何だかんだ人情味も持ち合わせているし、タイミングを間違えたらクソ拗れるのは間違いない。ガチで要注意って感じ」


神にのみ見える方向─明後日の方向─を視ながら、彼女は最適なタイミングを探る。


「だー!結局“隠密”のせいで結論が出せねー!!実力と胆力はある程度比例する関係にあるから、可能ならもうちょい待ちたいんだよなー。小林も気付いているっぽいし。……自分の“天井”に」


2人以外、誰一人気付いていない事実。一言で表すのであれば、“成長限界”である。


「敢えて伏せていたからもっと動揺するかと思っていたけど、存外冷静で安心、ってか感心だわ。個々人で馬鹿みたいに差があるし、ひょんなことで突破しちゃうヤツもいるから下手に説明しない方が良いんだよな、私の経験上」


かれこれ7,000年もの間世界の崩壊を防いできた女神の経験は、最早真理と言って差し支えない。


「どうしようかな~。場合によっては“再調整”もアリだよなー。となると、小林の場合は間違いなく“アレ”が最適解だとして、金剛はどれにするべきか……、ムズイわー」


カウンターに肘を突き、ぶつぶつと思案する女神ファリス。その瞳には、人の子には到底処理しきれない量の情報が映っている。


「……ま、今考えても仕方ないか!するにしても“再調整”はもう少し先だし、となると有り得る未来が多過ぎる。“再調整”によって更に複雑に未来が分岐することを考慮するとか、上位の女神様にしか出来ないって!」


ドカッと背もたれに寄り掛かった彼女は、一際大きな独り言を吐き、思考を止めた。


「何にせよ、次の災厄だって十中八九乗り切れる。バフを追加するにしても、内容はその後考えても大丈夫だろ」


半ば投げやりな発言をした後に、ニヤリと口角を上げる。


「さぁ小林、次の災厄をお前は“どっち”で乗り切る?結果は決まっていても、過程は時々刻々と細分化されていく。……人間は面白い。同じ過ちを何回も繰り返すし、欲に塗れているし、目の前のことに精一杯で常に藻搔いている。だけど、その度に学び直し、他者の為に己が欲を塗り潰し、恥を晒しながらも少しずつ前進していく。だから、何千年経とうがそんな面白い存在が滅びないように動こうと思える。たとえ、“詐欺女神”の汚名を背負ったとしても」


賽はとうの昔に投げられた。しかし、最終的にどの目が出るのかは、実のところ神ですら知り得ない。


小林と金剛、そしてセリンとヘラ。4人と世界の行く末は、正しく無限に存在する。その中からどの結末が選ばれるのかは、彼、彼女ら自身にかかっている。


騙されることを受け入れた小林の、この世界における終着点は、そう遠くない。

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