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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第三章 レインティシア・イリア教皇国
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第88話 お使いの完了

お久しぶりです。

色々とリアルのごたつきが終わったので、また連載を再開したいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

「準備は十全に整っておりますか?」


「はい。有難う御座います。まさか見送りに来て下さるなんて」


丁寧に腰を折るパルメナさん。その立ち居振る舞いは“聖者”に相応しく、後ろにピッタリと控えるパールの気持ちが分からなくもない。


……2人の関係については、永遠に深堀しない方がイメージを壊さずに済みそうだ。


「当り前だろ?お前らは国を魔人から守ってくれたメンツだぜ?これくらいはやるっての。めんどくせぇけどな」


「ファズさん……」


彼は命の恩人も同然だ。“音響石”が無ければメディーラ洞窟の突破は厳しかった。


「おいおい、湿っぽいのはナシにしようや。めんどくせぇからよ」


「ですね。またひょんなことから再会するかもしれませんしね」


「そういうこった。それから、ヘラとコンゴウと……セリンだったか、アンタらも達者でな」


「ありがと!ファズちゃんもね!」

「あぁ、貴様らもな」

「ケッ、オレを牢にぶち込んでおいてよく言うぜ」


「そりゃお前も悪ぃだろ。何を言われたか知らねぇが、あれだけ暴れりゃ冷たい飯食わされて当然だっての」


「チッ。オマエみたいなのが一番やりづれェ」


……なるほど。恐らくヘラさんは門番から露骨に差別的な対応をされたのだろう。そして売られた喧嘩を釣りはいらねェとばかりに盛大に買ったわけだ。


ただの戦闘狂ではない彼女が無謀なマネをした原因が思わぬタイミングで判明した。


おっと、収集がつかなくなる前に出発するか。


「では、そろそろ出ようと思います」


「はい、コバヤシ様御一行の旅路に、幸多からんことを」


恭しく首を垂れるパルメナさんに黙礼をし、レンツ車はセリンさんの合図で走り出した。


────────────────── 


「オイ、もうちょい進路を南西に修正しろ。その方が早く着く」


「……分かった」


「寝転がっているのによく現在地が把握できますね」


「村に引きこもってる腰抜け共とは違うからな。大森林はオレの庭も同然だ」


「頼もしいわね!」


まったくだ。ただ……。


「最短距離なのは嬉しいですけど、敵の有無も多少は考慮してほしいですね」


数こそ少ないものの、ラウネーシュやネミュラが地味に鬱陶しい。


「ナニ眠てェこと言ってんだ?全部蹴散らせばいいだろ」


出たよ“全筋理論”……、勘弁してくれよな。


「露払いは任せたぞ。今の貴様らなら大抵の魔物はどうにかなる」


「任せて下さい、セリンさん」

「了解よ!」


頼まれてしまったからには仕方がない。責任を持って降りかかる火の粉を払おう。


──実際、メディーラ大洞窟と魔人との戦闘を経て俺と金剛は明らかに強くなった。


このボーナスに慣れてしまっているが故に取り立てて騒いだりしないが、今なら2人だけでも大森林の頂点に君臨するディオ夫婦を十全に相手取れるだろう。


特に金剛はまだまだ伸びしろがある。これからどんどん彼女に頼る場面も増えてくるに違いない。


「……分かり易い野郎だな」


結局、“賢者の村”に着くまで大した魔物との接敵は無かった。多分ヘラさんの駄々洩れ魔力にビビッたのだろう。


虫除けスプレーみたいだと思ったのは絶対に口にはしまい。


────────────────── 


「「お!待ってたよ!想像よりも大分早かったね!!」」


村が視界に入った頃には既に入り口に立っていた双子。流石の感知範囲だな。


「約束通り、イリア教皇国から連れ戻して来ました」


お使いの完了を告げつつ、なんだかなぁという気持ちになる。


元々は災厄に備えて実力のあるエルフを仲間にするためにレインティシアを訪れた。


しかし、詐欺女神から確定で彼女が仲間になると言われている今、わざわざ彼女をここまで連れ戻す意味が無い気がしてしまう。地理的にネルー湖にはイリア教皇国の方が近いからだ。


とは言っても「ファリスという神のお告げにより、あなたには仲間になってもらいます」だなんて言っても素直に事が運ぶ気はしないから、きっと必要な手順なんだろう。


「ありがとう!」

「約束通り話を聞くよ!付いて来て!」


──村の中に足を踏み入れて数分、かなり居心地が悪い。


視線が集中しているのだ。勿論俺ではなく、忌み嫌われている混血児に。


刺々しい視線に加え、「何でまたアイツが」「賢者様は一体この大事な時期に何をお考えに」等様々な声が耳に届く。


当の本人はどこ吹く風といった調子だが、正直気分が悪い。いっそ村の外で話を聞いてもらえば良かった、と思い直した時だった。


村の中央付近に差し掛かった辺りで双子は足を止め、近くに立っていた年老いたエルフに声を掛ける。


「やぁ、待たせたねフェリウス」

「“サンクチュアリ”を頼むよ」


「……仰せのままに」


男が手を地に着け魔力を流し込むと、薄緑色をした円筒状の光が立ち昇った。……結界の類か?半径30メートル近くはある。


ただでさえ衆目を集めていた上に大仰な魔法を使ったせいか、村中のエルフがぞろぞろとやって来た。


そんな中、ミラさんとリラさんはその場の全員に聞こえるように叫ぶ。


「イリア教皇国では随分と暴れてくれたみたいだね!」

「まったく、本当にキミは村の厄介者だ!」


責めるというよりは、寧ろ楽しそうに詰る2人。どういうつもりだ?


「だからどうしたってンだよ」


悪びれない様子に、村人達の視線は更に険しくなる。


「我ら誇り高きエルフ。その顔に泥を塗ったキミには“制裁の儀”を受けてもらう!」

「“サンクチュアリ”の中に入るんだ。今からキミは、ワタシ達“賢者”によって罪に相応しい罰を受けた後、村から追放される!」


「……いいねぇ。有難い」


一族の恥晒しが処されると聞いて歓喜に湧くエルフ達。あぁ、そういう“落としどころ”が必要だったのか。


ヘラさんが好きな“賢者”の2人。だが、村に置いておけば必ず不和や軋轢を生んでしまう。


ならせめて盛大に“プロレス”を行い、村人達の溜飲を下げつつ“全筋流”のお見送りをしようとしているわけだ。その後の面倒は俺らに見てもらうつもりで。


“お使い”を頼んだあの瞬間から、この結末は決まっていたんだ。


ヘラさんも即座に真意を汲み取り、ずかずかと円筒状に伸びる光の中に入って行く。


「「じゃ、始めようか。覚悟はいい?」」


「訊かなくても分かってンだろ?」


「「だね……。フェリウス!」」


一歩前に出た老エルフは3人が“サンクチュアリ”の中に入っているのを確認すると、再度魔力を流し込み、厳かに儀式の開始を告げる。


「これより、“制裁の儀”を執り行う」


瞬間、弾ける様に魔力が解放された。


……アイツ、あの時の実力で本気じゃなかったのかよ。

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