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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第三章 レインティシア・イリア教皇国
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第87話 開き直り

いつも読んで下さり有難うございます!

「お帰り、小林ちゃん。大丈夫だった?」


「ただいま。問題無かったよ。セリンさんが付いてきていたのがバレちゃったけど、特にお咎めは無かったし」


「私もまだまだ修行が足りん」


「いやいや、相手が悪かっただけですって」


「やっぱり“覇者”って凄いのね~」


他愛のない会話をしているが、彼女の表情は一刻も早く召喚者に何があったのか聞き出したいと言っている。


「詳細な情報を共有したいところだが、内容が内容なだけにファリスに確認を取りたい。一旦明日まで待ってもらえるか?」


「……分かったわ。真偽不明の情報で一喜一憂したくないものね」


一頻り会話を終えた俺達は宿屋の1階で夕飯を済ませ、明朝の出発に備えて眠りに就いた。


────────────────── 


「対応が早くて助かるよ」


「当保険はサービスの質の高さが売りですから」


よく言うよ。悪名の間違いじゃないのか?


「良かった。アタシも同席させてもらえるか少し心配だったのよね」


「金剛様も大事な召喚者ですからね。今回の件に関しては、可能な限り真実をお伝えするつもりです」


“大事な召喚者”、ね……。


「早速本題に入らせてもらうけど、そのかけがえのない召喚者の1人が殺されたってのは本当か?あと、“聖者”の話していた内容はどこまでが真実だ?」


「はい、進藤猛様は既にこの世界を去っており、パルメナ・ネイダルの語った内容に噓偽りはありません。言い訳にしか聞こえないと思いますが、彼の愚直なまでの正義感とイリア教皇国の相性の悪さは絶望的で、気付いた頃には“詰み”が確定しておりました」


「そんな……」


瞳を揺らす金剛。俺自身も一歩間違っていれば同じ道を辿っていたと考えると、とても他人事には思えない。自然と心拍数が上がる。


「契約内容にある『素晴らしい死後の世界を保証する』という文言を実行できなかったお詫びとして、神界規則に抵触しない範囲での優遇措置を与えた上で、新たな世界へと転生させて頂きました」


「それは……、せめてもの救いね」


この際優遇措置云々の真偽はどちらでもいい。重要なのは、彼の死を何故黙っていたのかってことだ。


「小林様の疑問も尤もですが、進藤様の死を秘匿していたのには理由があります」


「というと?」


「彼の命がイリア教皇国の手にかけられた時期、金剛様はビズの奴隷であり、小林様に至っては帝国にて常軌を逸した修行により精神状態が非常に不安定になっていました。畢竟、タイミングが悪かったのです。また、以降も訃報により事態が好転する要素が一切無かったため、不義理であると認識しつつ情報を隠匿させて頂きました」


パッと聞いた感じ筋は通っている。しかし、前科が多過ぎて信用に欠ける。世界のバランスを保つとかいうコイツの目的自体は真実なのだろうが、他にも重大な事実を隠されている気がしてならない。


「そ、そうだったのですね……。確かに、仰る通りかもしれません。ですが……」


困惑を隠せない金剛を見て、ファリスは深く息を吸い、観念した表情で息を吐いた。


「はぁ……。私はどんな手を使ってでも世界を災厄から救うつもりなんだよ。そんで、そのためなら幾つでも隠し事をするし、何度でも嘘を吐く。要するに、お前らには今後も死ぬほど苦労してもらうってわけ」


「え……?」


金剛の前で素を出すのは初めてじゃないか?ものの見事に動揺している。


「けど安心しろ。あんなヘマは二度としない。こんな私でも神の端くれだ。これ以上後手に回るような失態は犯さないと誓う。大船に乗ったつもりで騙されろ」


……全く、とんでもない神様もいたもんだ。


チラリと横を見ると、丁度目が合った。事態に脳が追い付いていないわけではなく、その目は俺に判断を託したと言っている。


「……いいね、本性丸出しのアンタの方が猫被っている時よりもよっぽど良い。安心して騙されてやろうじゃないの」


返答を聞いた詐欺女神は目を丸くし、それから破顔した。


「漸く器が仕上がってきたみたいですね」


「大器晩成型なんだよ」


「小林ちゃんが女神様に対してぞんざいな態度だった理由がやっと分かったわ。……想像以上にヤバい方に命を預けちゃったのね、アタシ」


「申し訳ありませんが、最後までお付き合い下さいね。と言うより、他に選択肢は無いのですが」


「ふぅ……。覚悟を決めるわ。ちょっとショックが大きいけど、でももう後戻りは出来ないんだものね」


「流石は金剛様です。こちらとしても、精一杯“サポート”させて頂くつもりです」


「さて、こっちの用は済んだ。今度はそっちの番だ。まさか堂々と開き直るためだけに三者面談を開いたわけじゃないだろ?」


「察しが良くて助かります。明日、再び“賢者の村”に向かわれると思いますが、そこでヘラが仲間になります。これは確定事項です」


「……マジ?」


「マジです」


「あら、いいじゃないの!卓越した魔法使いのセリンちゃんに、状況に合わせてスイッチ可能な小林ちゃん。治癒で援護するアタシに、近接戦専門のヘラちゃん。とってもバランスが良いパーティーだと思うわ!」


それはそうなんだけど、あんな珍獣を御し切れる自信が無いんだよな……。はぁ、胃に何個穴が空くのだろうか。


「本題はここからです。……2度目の災厄がネルー湖・ネルー大湿地にて起こると確定しました。ヘラ・ウェリスを仲間に引き入れ次第、至急現地に向かって下さい」


「やっと魔人を1人倒したと思ったのに、休む暇も無いのかよ……」


「だからこそなのでしょう。矢継ぎ早に対応を迫り、人族側の疲弊と選択ミスを目論んでいるのです」


「本当に嫌らしい性格してるわね。でも、負けないわ」


「その意気です、金剛様。私からの用件は以上になりますが、何か質問はありますか?」


まともな返答は期待できないけど、訊くだけ訊いておくか。


「二度目の災厄の内容は?」


「ご想像の通り、具体的な内容は分かっておりません。しかし、魔人の襲来は無く、ネルー湖、及びネルー大湿地の複数個所において強敵が出現する未来が視えています。ただ、それが何処なのかまでは確定していません」


「複数箇所、か……」


パーティーを分断する作戦か?対策を講じる必要があるな。


「他にはありませんか?」


「……いや、もうないな」


本音を言えばあるが、“それ”は絶対に教えてもらえそうにない。


「アタシも大丈夫よ」


「では、これからもお2人のご活躍を見守っております」


「はいはい」


「任せて頂戴!」


身体が光に包まれ、意識が薄れゆく。


今回の話でハッキリしたのは、どうやら明日以降も騙され続ける日々が続きそうだということ。


そして、そんな日々も案外悪くないかもしれないと思い始めている、ということ。


まぁ、全てが思い通りに行くとは思わないでほしい。俺なりに抗って最善を目指してみせるさ。

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