第83話 2人目の魔人
いつも読んで下さり有難うございます。
追記の通り暫く更新頻度が落ちてしまいますが、何卒宜しくお願いいたします!
混乱から抜け出せない脳を無理矢理に回し、最優先で伝えるべき忠告を発する。
「金剛!攻撃禁止だ!“ペナルティ”が発生した!」
「……了解!防御に回るわ!取り敢えず時間稼ぎに徹すればいいのよね!?」
「そ、そうだ!頼む!」
……驚いた。てっきり混乱してフリーズするかテンパると思って声をかけたのに、彼女は自分が何をすべきか、誰に言われるまでもなく最適解を導き出した。
今までの付き合いで初めて見る姿だ、明らかに成長している。……あの詐欺女神のお陰、なのか?
「おい、コバヤシ、ぺなるてぃとは何だ。簡潔に説明しろ」
此方に駆け寄ってきていた住民を丁寧に投げ飛ばしつつ尋ねてくるセリンさん。あと数秒は起き上がれないと悟ってさり気なくフォローしてくれたのだろう。
しかも、ハーフエルフが教皇国の人間にケガを負わせれば100%面倒事になると見越しての身のこなし。どこまでカッコイイんだ。
「有難うございます。ペナルティというのは、召喚時にファリス様より与えられた制約です。僕と金剛は、明確な敵意や殺意を抱いていない者に反撃しようとすると“こう”なります」
そっか、セリンさんがいる時に罰則が発生する場面は無かったもんな。
「……どうみても殺意に満ち溢れているが、ツッコミ待ちか?」
「いえ、残念ながら。僕自身まだ事態を飲み込めていません」
彼女の口からツッコミという単語が出てくるとは思わなんだ。こんな軽口が叩ける時点で、頗る冷静なのだと分かる。
「もう大丈夫なので、一旦あっちをどうにかしてもらえますか?こっちは適当に逃げ回りつつ現状把握に努めます」
「……だな。頼んだぞ」
魔力を瞬間的に解放し、最短距離でセリンさんが向かった先にいるのは、“察しの良い全筋”ことヘラ・ウェリスだ。
襲い掛かる教皇国民を躊躇無しに殴り飛ばさんとしている。間に合って良かった。
「ナニすんだテメェ!」じゃないんだよ。地下牢にぶち込まれた理由を忘れたのか?……バッチリ覚えていそうな辺り余計にタチが悪いな。
「よっこいしょと」
未だ残留する鈍痛を頭の隅に追いやり、のらりくらりと“キレの良い”攻撃を躱す。
そう、これこそが第一の手掛かりだ。魔力量といい、動きといい、一般市民のソレじゃない。
王国基準で言えば、俺達を取り囲む数十人の住民1人1人が二等級兵相当の力を持っている。
端的に言って有り得ない。老若男女入り混じっているにも関わらず、多少のバラつきはあれど全員が同程度の力を揮っているなんて。
言うまでもなく、召喚組の2人が攻撃不可なのも重要なヒントだ。どんなトリックを使えば殺意マシマシでも反撃の許可が下りない状況になり得るか。
「オイ!コバヤシとか言ったか!?テメェのせいで朝からイライラしっ放しなんだよ!あと2分でどうにか出来ねェならコイツら全員ブチのめす!」
……思考を遮る粗野な声。本来なら味方サイドであってほしい存在から、悪役の類が吐きそうなセリフが飛んで来た。
アレか?カップ麺もバリカタで食べちゃうタイプか?
いや、お湯すら入れずにバリバリと面を齧っている姿が容易に想像できる。
「せめて5分下さい!また地下牢に戻りたいんですか!?」
「クソが。延長は1秒たりとも許さねェからな!感謝しろ!」
……ここまでくるといっそ清々しさを覚えるな。突き抜けていらっしゃる。
さて、いい加減本筋に戻ろう。金剛が完璧に立ち回ってくれているお陰で思案に没頭できるのがこれ以上なく有難い。
本当に昨日の今日でガラリと変わってくれたよな。まるで魔法みたいに……。
「あぁ、それならイケるじゃないか」
存外アッサリと分かってしまった。2分でもよかったな。
それにしても、とんだ抜け道もあったものだ。嫌らしいにも限度がある。まさか、大洞窟を抜けたあの日に脳裏を掠めたアレが答えだったとは。
「3人とも聞いて下さい!タネが判明しました!」
「随分と早いじゃねェか!後で抱きしめてやるよ!」
やめてくれ。確実に背骨が砕ける。……にしても、敢えて大声で宣言してみたが効果は無いか。
上手くいけば下手人の魔力がブレると踏んでいたが、そこまでとんとん拍子にはいかないようだ。まぁいいさ、先ずは答え合わせからだ。
「“洗脳”です!彼らは全員、何らかの手段によって操られています!」
「えぇとつまり、みんな無意識にアタシ達を攻撃しているって認識で合っているかしら!?」
「バッチリだ!」
意識が無ければ、当然敵意も殺意も無い。言動のおかしさだけで気付くべきだった。いくら人間至上主義が根付いているとは言え、流石に物騒が過ぎる。
「……反吐が出るな」
「あァ、言われてみれば、1人だけ“匂い”が違うヤツが紛れてンな」
「誰ですか!?」
ここからが厄介だと頭を悩ませていたのに……。相手にしている間は最悪だと思っていたが、最高だ。
「そこのガキ!テメェだろ?」
彼女の視線の先には、フードを被った子供が立っていた。
最初に声をかけてきたヤツじゃないか!完全に虚仮にされていたらしい。とことんムカつかせてくれるな……!
ヘラが元凶を突き止めた途端、住民一同の動きがピタリと静止した。そして、4人の視線を浴びたソイツは、ケタケタと不快な声で笑いだした。
「あらら、バレちゃった。じゃあ、しょうがないよね。“お遊び”はお終いにして、自己紹介してあげるよ。せめて誰に殺されるかぐらいは知っておきたいもんね?……ボクはコルニパ。あの方から産み出された高貴な高貴な存在。せめて名前だけでも憶えて死んでね?」
不愉快極まりないご挨拶を皮切りに、時が止まっていた住人達の魔力が跳ね上がる。
……詐欺女神さん、これ、本当に勝てるんですか?
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