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転生保険とかいう悪徳詐欺を許すな  作者: 入道雲
第1章 オーガス王国
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第7話 城内案内?

徐々に面白くなっていく予定です。もうしばらくお付き合い下さい。

「コバヤシ殿、私だ」


「今出ます!」


扉の前には、昨日と変わらぬ恰好をしたベリューズさんが待っていた。それにしても、相変わらず凄い髭だな。このサンタクロースを思わせる立派な髭を少しだけ触ってみたい。


「メイドから聞いたぞ、この城の構造をもう覚えたとかなんとか。まったく、コバヤシ殿は面白いことを言う」


テラさん、本当に伝えてくれたんだ。そして案の定ベリューズさんも信じていない。仕方がないな。


「本当ですって!じゃあ、今からベリューズさんが指定した場所に私が先導して行きましょう。それで証明できますよね?」


「…そこまで言うのであれば、そうだな、地下の貯蔵室まで行ってもらおうか」


「いいですよ、任せて下さい」


なるほど、地味に大変な場所を指定してくるあたりちゃっかりしている。地下への階段がある場所だけは1階から3階へと続く階段とは異なる場所にあるから、初見ではまず貯蔵室には辿り着けない。


まぁ、城の内部構造を完全に覚えた俺にとっては食後の散歩に過ぎないがな。


歩き出して数秒後、足音が1人分しか聞こえないことを不思議に思いふと後ろを振り返ると、ベリューズさんはこちらを見て突っ立ったままだった。


「何をしてるんですか?ベリューズさんも着いてこないと証明にならないじゃないですか!」


「…おぉ、すまない。今行くとも」


1階へと続く階段を下りながら、適当に間を埋めるための質問を投げかける。そこまで仲良くない人との間に生まれる沈黙って、どうにも耐えられないんだよね。


「この城はいつ頃建てられたんですか?」


「そうだな、確か500年程前だったはずだ」


「その割にはお城の中は結構綺麗ですよね」


「当たり前だ。毎日掃除をさせているからな」


「えっ、天井とかどうしてるんですか?あんなに高いのに」


「魔法を使うにきまっているだろう」


「あ、そうか」


「コバヤシ殿のいた世界には、魔法が存在しなかったようだな」


「えぇ、その代わりに科学、というものが発達していましたよ」


「ほぉ、興味深い」


「科学と言うのはですね…」


──────────── 


そんなこんなで間を埋め続けている内に、貯蔵室に辿り着いた。地図で見たときの印象ではすぐに着くと思っていいたが、思っていた以上に広かった。


それに、この貯蔵室も相当な広さだ。地下だからだろうか、ひんやりとした空気が漂っている。


「どうです?これで信じて頂けますか?」


「…凄まじい記憶力だな。これは魔術の教え甲斐がありそうだ」


「期待していて下さい」


完全にボーナス倍率のおかげだけどね。生前も記憶力は悪くはなかったが、5分10分でここまで広い城内の構造を完璧に把握するなんて芸当はとてもじゃないけど不可能だ。


「となると、城内を案内する必要はあるまい。であれば、今からトールの元で剣術を学んでくるといい。外の訓練場まで案内しよう」


「分かりました。お願いします」


なるほど、そうなるか。ま、今は女神様的には1日でも惜しいだろうし、予定の前倒しは有難く受け入れるとしよう。


──────────── 


城を出て西に歩くこと5分、大勢の騎士達の気合の入った声が耳に届いて来た。その騎士達に指示を出しているのは、どう見ても俺と歳の変わらない青年。薄水色の髪が耳が隠れる程に伸びており、体系もゴリマッチョというよりは中々にスマートだ。あまり戦闘要員といった雰囲気は感じられない。


そんな青年にベリューズさんはずかずかと近付き、声をかける。取り敢えず俺も後ろについていこう。


「トールよ、少し時間をもらえるかね」


「おぉ!ベリューズと英傑コバヤシ殿ではないですか!!今日は城内案内のはずでは?!」


げ、元気が良いな。見た目とテンションのギャップがとんでもないタイプだったのか。物理的に耳が痛い。


「彼は既に城内の構造を完璧に把握していたのでな、城内の案内は中止して剣術指南を前倒ししてもらおうと思ったのだ」


「…なるほど!!それは凄い!英傑コバヤシ殿は記憶力が優れていらっしゃるようだ!!」


「おおそうだ、トールよ、コバヤシ殿たってのお願いだ。英傑とつけるのはやめてやってくれ。彼曰く『自分はまだ何も成し遂げておらず、英傑と呼ばれる所以が無い』だそうだ」


「一理ある!素晴らしい高潔さだ!!気に入ったぞコバヤシ殿!!私は宮廷騎士団長のトール・スリーヴだ!!王国の危機を退けるため、何が何でも力を貸していただこう!!」


「は、はい!」


どうしよう、こういうグイグイ系はちょっと苦手なタイプかもしれない…


「訓練を始める前に確認しておこう!ベリューズからコバヤシ殿には戦闘経験が皆無であると聞いている!間違いないか?」


「えぇ、間違いありません」


ここで見栄を張っても何の意味もない。正直に答えるべきだろう。


「であれば、今日のところは基礎体力訓練と剣術の基礎を教えることにしよう!異論はないかな!?」


「ありません。よろしくお願いします!」


「いい返事だ!よし、では基礎訓練にうってつけの新兵を呼び出そう。全員!打ち合い止めーい!!」


鼓膜が割れんばかりの大声により、木剣による打ち合いを行っていた騎士達は一斉に訓練を中断し、直立不動でこちらに注目する。別に軍隊とかに詳しいわけじゃないけど、かなり練度が高そうだな。


「殆どの者が知っていると思うが、今私の横にいるのが先日召喚されたコバヤシ殿だ!本日から剣術訓練と魔術訓練に1日おきで参加する予定となっている!!皆、新たな同士に歓迎の敬礼!」


トールさんの合図で一糸乱れぬ敬礼を見せてくれる騎士達。……心なしか、何名かの騎士はあまり歓迎していないように見える。何かのトラブルに繋がらないといいんだけど。


「本日は彼に基礎体力訓練と基礎剣術を教える予定だ!パロッツ!!前に出てこい!!」


「はい!」


あれが詐欺女神の言っていたパロッツか!刈り上げた茶色い短髪に引き締まった体、革製の防具越しでもそれなりに鍛えられているのが分かる。


「パロッツ!今いる騎士達の中で最も実力の低いお前が今日1日コバヤシ殿と共に訓練をするのだ!」


「承知いたしました!」


公衆の面前で最も弱いと言い切られても嫌な顔1つせず即答するとは…これが軍隊というものなのか?


「コバヤシ殿っスね!トール騎士団長の命を受け、本日共に訓練をさせて頂くパロッツと申します!よろしくお願いするっス!」


「こちらこそ、本当にド素人なのでご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」


テンプレみたいな後輩キャラだな。それにしても…


ここの騎士達は声量の調整が出来ないのか?耳がどうにかなってしまいそうだ。ただ、彼の笑顔には噓臭さが無い。あの詐欺女神の言う通り、今のところ悪い人ではなさそうだ。もしこれが演技なのだとしたら、逆に大したもんだ。その時は大人しく白旗を上げよう。


「では、これから行う訓練内容についてお話しするっス!」


「お願いします」


頼むから程々に力を抜けるようなメニューにしてくれよ~。あの女神様からの直々のアドバイスだ。無視すれば大変な目に遭うに違いない。

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